米国投資家はなぜ日本に価値を見出すのか、NANOホールディングス特別対談で語られた日本発サイエンスの可能性

2026-08-06 08:00
米国投資家はなぜ日本に価値を見出すのか、NANOホールディングス特別対談で語られた日本発サイエンスの可能性

日本には、世界に誇れる科学技術や研究成果が数多く存在する。創薬やバイオテクノロジーの分野でも、大学や研究機関、企業から有望なシーズが生まれてきた。しかし、優れた技術があることと、それが世界市場で大きな価値を生み出すことは必ずしも同じではない。研究成果を事業へ育て、必要な資本と結び付け、グローバルな開発や提携へつなげるには、また別の仕組みが求められる。

そうしたテーマを背景に、NANOホールディングス株式会社は2026年6月30日、日比谷三井カンファレンスで特別対談「なぜUS Investorsは日本に価値を見出しているのか」を開催した。登壇したのは、Nano Holdings US, LLC ChairmanのNeil W. Gibson博士と、NANOホールディングス株式会社Chief Business Development Officerの山口泰範博士である。対談では、米国投資家の視点から見た日本市場の魅力や、日本発サイエンスを世界的な価値へとつなげるための課題と可能性について議論が交わされた。

米国投資家が注目する、日本発サイエンスの可能性

特別対談の冒頭では、日本発の優れたサイエンスが持つ価値と、それを成長機会へつなげるための視点が語られた。

山口泰範博士は、日本の科学技術や研究成果が世界に大きな貢献をしてきたことに触れながら、投資市場における課題にも言及した。日本には世界トップクラスの研究力がある一方で、2021年以降、コスト優位性や迅速な追随戦略によって成長する中国と比較すると、日本のディール数は減少しているという。

これに対し、Neil W. Gibson博士は、その差を科学や技術に対する投資額の格差として捉え、日本のイノベーションをさらに発展させるには、米国資本へのアクセスが重要になるとの考えを示した。

研究成果を世界市場へ届けるには、技術そのものの価値に加え、開発資金や事業化の仕組みが欠かせない。今回の対談では、そうした流れを支えるものとして、米国資本やグローバルネットワークの重要性が語られた。

「なぜ今、日本なのか」世界が評価する4つの強み

対談の中で山口博士は、日本が世界から投資を呼び込むための強みとして、「世界トップクラスの科学力」「真のイノベーション」「強固な知的財産(IP)」「グローバルパートナーシップの可能性」を挙げた。

創薬分野では、独自性のある技術や、未解決の医療課題に向き合うアセットが重視される。日本が持つ研究基盤や知的財産は、海外投資家や製薬企業にとっても評価対象となる要素である。

Neil博士は、米国の大手製薬企業やバイオ投資家が、世界中で有望な創薬アセットを積極的に探している背景を説明した。特許切れ、いわゆるパテントクリフや、自社研究開発の課題を背景に、新たな成長機会を外部に求める動きが強まっているという。また、日本政府によるAMEDなどのバイオ・製薬分野への支援策や、海外投資を後押しする環境整備も進みつつある。こうした要素が重なり、日本への関心が高まっていることが紹介された。

日本と世界をつなぐ「ゲートウェイ」を目指すNANOホールディングス

日本には有望な創薬アセットや科学技術が存在する一方で、それらを世界市場へつなげる仕組みが必要である。対談では、その役割を担う存在として、NANOホールディングスが目指す価値創造のプラットフォームについても語られた。

山口博士は、同社の取り組みについて、「優れた技術の発掘」「資本との接続」「開発・価値設計(Edit)」「Exitの創出」という4つの柱を挙げた。Exitには、事業提携、ライセンス、M&Aなどが含まれる。

研究成果を見つけるだけでなく、それをどのように磨き、どの市場へ展開し、どのようなパートナーや資本と結び付けるのか。その設計が、科学技術を事業価値へ変えていくうえで重要になる。

NANOホールディングスは、複数の有力な米国投資家との協議を進めるとともに、グローバル製薬企業との提携や大型ディールの創出を目指している。日本発のイノベーションを世界へ届けるための「ゲートウェイ」として機能することが、同社の目指す方向性である。

Q&Aで語られた、投資家が重視するアセットの条件

特別対談の後には、Neil W. Gibson博士、NANOホールディングス株式会社 代表取締役会長兼社長CEOの松村淳氏、取締役CIOの飯野智氏によるプレス向けQ&Aセッションも行われた。

会場からは、日本のアセットをどのように再構築するのか、投資家にとって魅力的なアセットとは何か、今後の投資規模や案件の展望などについて質問が寄せられた。

投資対象として魅力的なアセットについて、Neil博士は特に「有望なヒト臨床データ」を持つことが重要だと説明した。米国投資家は投資判断において臨床データを重視するため、一定の有効性や可能性を示すデータがあることが、資本を呼び込むうえで大きな要素となる。

注目領域としては、自己免疫疾患、神経疾患・神経変性疾患、認知症、アルツハイマー病、統合失調症などが挙げられた。いずれも、いまだ十分な治療法が確立されていないアンメット・メディカル・ニーズの高い領域である。

また、飯野氏は今後の投資規模について、案件によって異なるとしながら、創薬関連では10億円から15億円規模になる可能性があると説明した。今後は、ヘルスケアデータ、製造関連、創薬パイプラインなど複数の分野で案件を検討しており、年内にも具体的な投資案件が生まれる可能性があると示された。

グローバル市場を見据えた日本発イノベーションの展望

Q&Aでは、日本市場そのものの魅力についても議論が及んだ。薬価制度や保険制度の変化により、日本国内市場だけを見た場合には制約もある。しかしNeil博士は、日本企業がより大きな価値を生み出すには、日本国内市場にとどまらず、グローバル市場を活用することが重要だと述べた。

日本のアセットを新たな事業構造に組み替え、米国資本へアクセスし、グローバルに開発を進めることで、市場機会を広げることができるという考えである。

松村氏も、日本の製薬会社が自社の優先順位や資本力の制約から、すべてのアセットを自社で開発することが難しい現状に触れた。そのうえで、NANOホールディングスは、このジレンマのギャップを埋める役割を担おうとしていると説明した。

日本の科学技術が持つ本来の価値を、資本や事業開発とどのように結び付けるか。今回の議論からは、その問いが今後の大きなテーマとして浮かび上がった。

<開催概要>
日時:2026年6月30日(火)11:30〜12:30 (特別対談)
2026年6月30日(火)12:40〜13:10 (プレス向けQ&Aセッション)
会場:日比谷三井カンファレンス 8階(東京都千代田区有)
内容:特別対談「なぜUS Investorsは日本に価値を見出しているのか」
プレス向けQ&Aセッション

今回の特別対談では、日本の科学技術が持つ可能性と、それを世界市場へ届けるために必要な仕組みが多角的に語られた。研究成果そのものの価値に加え、資本へのアクセス、開発戦略、知的財産、グローバルパートナーシップといった要素が、今後の成長を左右することが示された形である。

日本には、まだ世界に届ききっていない有望なサイエンスがある。その価値を見出し、磨き、適切な市場やパートナーへつなげることができれば、日本発のイノベーションはさらに大きな可能性を持つ。NANOホールディングスが掲げる「日本と世界をつなぐゲートウェイ」という役割は、こうした課題に向き合うものだ。日本の科学技術がどのようにグローバルな価値へ変わっていくのか、今後の展開に注目が集まる。

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