松屋フーズがTemuで異例の急成長、半年目標を3カ月で突破した理由とは

手軽に松屋の牛めしを冷凍庫にストックできる、しかもお手頃価格で。日常の食卓を支えるそんな頼もしい存在が、いま新たな場所で広がりを見せている。急成長中のECモール「Temu(テム)」だ。
牛丼チェーン大手の松屋フーズが2026年3月に出店すると、想定を大きく上回るペースで売上を伸ばしている。当初は半年ほどかけて到達する見込みだった目標売上を、わずか3カ月以内で突破したという。近くに店舗がなくても、あの味を自宅で楽しめる。そんな松屋フーズの冷凍食品戦略が、なぜ新興プラットフォームで結果を出したのか。その舞台裏を追った。
全国約1,300店舗の”外”にいる客へ、20年間届けてきた店舗の味
松屋フーズは全国に約1,300店舗を構えるが、店舗の商圏に入らない地域の顧客に向けて、約20年にわたり35以上のECモールやオンライン販売チャネルで冷凍食品を販売してきた。近くに松屋がなくても、自宅で店舗と同じメニューを楽しめるようにすることが目的だ。
冷凍食品は個食パックをまとめたセット商品として展開されており、定番の牛めしに加え、期間限定の「バターチキンカレー」なども並ぶ。商品によっては1食あたり約200円という、店舗で食べるよりリーズナブルな価格設定になっている点も特徴だ。
松屋フーズ 戦略事業部でEC事業を担当する山田浩雅氏は、「冷凍食品なら、いつでもご家庭で店舗の味を再現できます。それが事業を始めた当初からの目的でした」と語る。
伸び悩むEC事業、次の一手はTemuだった

コロナ禍でEC売上は大きく伸びたが、その後は成長の勢いが落ち着きつつあった。新たな販路を模索していた松屋フーズが目をつけたのが、2026年に参加したTemuの「国内販売事業者の募集プログラム」だ。
このプログラムは2025年1月に招待制でスタートし、同年6月には日本国内のすべての適格な事業者へ全面開放された。国内事業者が直接消費者へ販売できる仕組みで、配送時間の短縮や地域ニーズに合わせた商品展開がしやすい点が特徴とされる。出店登録料や商品掲載料もかからないため、価格設定の自由度が高いこともメリットの一つだ。
「Temuは非常に勢いのあるマーケットプレイスだと感じています。当社としても、このプラットフォーム上で松屋ブランドの存在感を確立したいと考えました」と山田氏は振り返る。
4.8点の高評価を生んだ、Temu向け再設計の中身
松屋フーズがTemu出店にあたって行ったのは、既存商品をそのまま横展開することではなく、Temuユーザーに合わせた商品構成の再設計だった。レシピや品質はそのままに、一部商品の内容量やセット構成を見直すことで製造コストを抑え、その分を販売価格に反映させた。
この戦略は見事に結果として表れた。Temuで最も売れている商品の一つ「牛めし・カレー10食セット」は、レビュー評価4.8点という高スコアを獲得。「店舗と同じ味を楽しめる」という声が数多く寄せられているという。こうした評価の積み重ねにより、松屋フーズはTemu内で優良な出品者に与えられる「スターセラー」にも認定された。認定商品にはプラットフォーム上での追加露出の機会も得られる。
「店舗の味を忠実に再現しているため、お客様の満足度は非常に高いと感じています」と山田氏は話す。
目指すは“検索結果を松屋で埋め尽くす”存在感

松屋フーズは今後、Temu上での取り扱い商品数をさらに拡大する方針だ。食品カテゴリーの成長が続く中、早期に参入したメリットは今後より大きくなると見ている。
山田氏は「冷凍食品と検索した際に、画面いっぱいに松屋の商品が並ぶくらいまで商品数を増やしたい」と語り、Temuの食品カテゴリーを代表するブランドになることを目標に掲げる。
「利益以上に、お客様にお得だと感じていただくことを重視しています。その約束をこれからも守り続けたいと思います」。山田氏はそう締めくくった。
手軽な価格帯でありながら、お店のクオリティをそのまま自宅で味わえる満足感。物価高が続く今だからこそ、時代に合わせて形を変えながら食の選択肢を広げていく松屋フーズの試みは、私たちの暮らしの強い味方となってくれるだろう。