「ホテル浦島」が昭和レトロな面影を残しつつ料理や内装を一新

2026-08-18 08:00
「ホテル浦島」が昭和レトロな面影を残しつつ料理や内装を一新

和歌山の皆様、一大事である。

勝浦を代表する巨大温泉リゾート『ホテル浦島』の日昇館が、8月1日にリニューアルを遂げた。あの昭和レトロなホテル浦島が、である。正確に言うと「本館」「山上館」「日昇館」「なぎさ館」から成る建物のうち、本館ロビー、日昇館の客室とレストランを中心に大改装したのだ。

ホテルの顔となる正面玄関をガラッとお洒落に一新し居心地のいい空間に、に様変わりした。

何より今回、注目すべきポイントは「レストランの料理をテコ入れした」こと。新たな総料理長を迎え、日昇館のビュッフェメニューをグレードアップしたという。

2026年12月に創業から70周年を迎えるホテル浦島。どう変わったのか?料理はどう進化したのか? 新生ホテル浦島の魅力を、7月27日に行われた盛大な発表会の様子とともにお伝えしよう。

創業70年を機に一大プロジェクト決行

勝浦の経済を支える一大観光リゾートと称しても過言ではないホテル浦島。1956年に「株式会社浦島温泉」としてわずか27室の温泉宿からスタート。翌年には「忘帰洞」として正式営業開始。64年に「ホテル浦島」となって、67年に「三上館」、93年に「日昇館」「なぎさ館」と増築を重ね、最大時は800室を数える規模になった。

離れ小島のような場所に位置し、宿泊客はカメの姿のフェリー「浦島丸」か、トンネルを通って渡るしか行く方法はない。まさに竜宮城のような温泉リゾートである。

温泉は、太平洋の荒波によって削られた日本最大級の天然泥岩洞窟温泉「忘帰洞」と「玄武洞」、日昇館「磯の湯」、なぎさ館「滝の湯・ハマユウの湯」、山上館宿泊者専用の「遥峰の湯」があり、それぞれ異なる景色が楽しめる。

今回のリニューアルは、建物の老朽化と新時代を見据えたDX化が狙い。だがそれだけではなく、「この地の魅力を五感で味わってもらいたい」と、特に料理に注力した改革に踏み切った。

機械化の良さとホスピタリティを両立

まず入ってみて仰天した。「これはホテル浦島じゃない!」。以前の姿を知っているからこそ、そんな声が出てしまう。日本らしい“和”を感じさせる、木を多用したロビーラウンジ。陶芸や漆器、絵画といったアート作品も配置され、まるで美術館のよう。

チェックインは自動になっており、「フロントでスタッフがテキパキお客さんをさばくあの風景が見られないのか…」と思っていると、「機械に任せる部分と、人にしかできない部分を明確化し、訪れた方とのコミュニケーションを大事にしています」とスタッフから説明があった。広大な館内のどこに部屋があるかは、ゲスト一組一組にしっかり口頭で説明する。

荷物を預けるロッカールームも新設した。「チェックイン前とアウト後にもお風呂に入られる方が多かったので、ご要望にお応えしました」とのこと。3年分のデータを集めて必要なロッカー数を割り出したというから驚く。

安心してください!“浦島らしさ”は健在です

2つ目の見どころは、「うみのトンネル」。ご存じの方も多いかもしれないが、ホテル浦島は広大すぎるため、4か所の温泉の移動や本館から他館への移動にかなり時間がかかる。チェックイン後に日昇館・なぎさ館に行く時に、90mの通路を歩く必要があった。

そこを「歩いて楽しめる・学べる空間に」と、ブルーのライトで演出し、土産物店やアトラクションを設置。「うみのトンネル」と称したこの通路で、「角打ち」「ゲーム」「まぐろについて学ぶパネル」「記念撮影」「ショッピング」を楽しみながら歩ける工夫を凝らした。

ここまででも正直、だいぶ変わったと感じる。以前の昭和チックな面影がなくなり、どこを見ても映えるホテルになったように思える。だが「前の雰囲気がよかったのに」と思う方、安心していただきたい。なぎさ館へ向かう通路にあるゲームコーナーは健在で、ホテル側も「昔懐かしい雰囲気は残して欲しいという声もあるので」と映えばかりを意識しているわけではないのだ。

料理を目当てに訪れる宿へ。新料理長のもとメニューを一新

肝入りは日昇館のレストランだ。紀州の恵みが共鳴しゲストと土地をつなぐ「TSUMUGI」をコンセプトに「Chef’s Live Kitchen URASHIMA」として完全刷新。香りや音や会話でおいしさを味わえるライブキッチンをメインとした。

リニューアルを機に総料理長として迎えられたのは、東京のANAホテルのグランメゾン、ウェスティンホテルの総料理長、オリックスホテルなどを歴任した実力派シェフの半田勝也さん。フランス・パリでの修業経験もあり、もともとはフレンチベースだったが、『ホテル浦島』では和洋中オールマイティな料理で腕を振るう。

「地元のマグロや和牛はもちろんですが、3つのレストランのコンセプトに応じていかに食材をおいしく調理するかが重要」とのこと。ステーキには和牛肩肉を使ったり、伊達地鶏を一羽で仕入れることで部位を余すことなく活用したりと、単に高級食材を用いるだけではない、旬の素材の持ち味を生かした料理を提案している。

レストランの内装にも海や森をイメージしたインテリアを用い、アートと融合した食体験を堪能できる。

もちろん客室もリニューアル。日昇館の5階から8階までの室内を一新し、オーシャンビューの景観を生かした快適な空間にリノベーションした。畳は琉球畳に変え、「WABI SABI」をテーマに和のぬくもりと洋の機能性を両立させた。海を眺めながら大きなソファでくつろぎ、「何もしない贅沢」を感じることができる。

1室限定のスイートルームは、2つのベッドルーム(ツイン&ダブル)に加えて、ソファのある洋室、そして足を楽に伸ばせるローチェアを置いた和室が備わる。5名定員の広々とした客室だ。

高層階モダン和室には海を眺められるマルチソファを配置。琉球畳のチェッカー模様が空間に調和している。

那智勝浦の経済を変える起爆剤になるかも

開業を前にした7月27日の「創業70周年・日昇館リニューアルオープン記念式典」には、親会社である日本共創プラットフォーム(JPiX)の代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)冨山和彦氏、浦島観光ホテル株式会社代表取締役社長の松下哲也氏、那智勝浦町長の堀順一郎氏に加え、地元の自治体・観光協会の幹部や経済界の来賓など多数が参加。

冨山氏は「地域観光は長い時間軸で仕事をしていく時代になる。70年後はさらに素晴らしい式典を挙げられるよう我々も努めます」とスピーチ。堀町長は「那智勝浦に再訪者を増やすことが重要。世界遺産と温泉、生マグロの魅力を広く発信し、水産業の活性化と町の賑わい創生につながることを期待します」と述べた。

個別インタビューで松下氏は、「今はスピード化や効率化により宿泊しなくても旅ができる時代。だが、ホテル浦島は“滞在”に価値を見出してもらい、食と居心地の良さを味わうために何度も訪れる拠点になりたい」と力説。

また従来の客層が求める懐かしさをいかに残すかとの問いに対しては「施設を新しくする一方、レトロなゲームコーナーや亀の送迎船、洞窟温泉など、ホテル浦島らしいものは残す。温泉、雄大な自然、おいしいマグロ料理、大型ホテルならではの楽しさを守り、次の時代へつないでいくことが私たちの使命だと思っています」と答えた。

正直、「昭和レトロなホテル浦島が良かったのに…」と案じながら訪れたが、ホテル側も“残すべきところと変えるべきところ”を明確化しており、従来の魅力はそのままに、より近代的に、かつ国際的なニーズを取り入れ進化したと表現したほうが良い。

何より、料理のパフォーマンスには目をみはるものがある。改めて那智勝浦は生マグロが美味しい土地であること、海という財産は景色から食まで五感で味わうことのできる唯一無二のコンテンツであることを実感させられた。

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