「子犬はいらない」たった8文字の無責任なひと言が幸せへの片道切符に。宮古島の保護犬、東京へ
東京から約2,000km。沖縄県宮古島で生まれたパピーは、生後50日ほど経ったある日、「子犬はいらない」と、飼い主に見放されて現地の保護団体に保護されたミックス犬。外に繋がれたまま散歩にも行ったことがない母犬から産まれた […]
東京から約2,000km。沖縄県宮古島で生まれたパピーは、生後50日ほど経ったある日、「子犬はいらない」と、飼い主に見放されて現地の保護団体に保護されたミックス犬。外に繋がれたまま散歩にも行ったことがない母犬から産まれた5頭のうちの1頭として、他の兄妹犬とともに保護されました。
宮古島の保護団体のSNS投稿を偶然見かけた現飼い主の姉妹は、先代犬「もみじ」の生まれ変わりだと感じ、すぐに保護されたパピーのうちの1頭を迎えたい旨の連絡を入れまし た。すると、そのパピーは、すでに東京の保護団体が兄妹犬とともに受け入れることになっていたといいます。その保護団体というのが、偶然にもたまたま姉妹がボランティア登録していた団体だったのです。偶然が重なった。
そして、遥か遠く南島で保護されたパピーと姉妹が1本の細い糸で結ばれたのです。
花言葉は「美しい変化」と「大切な思い出」

幸いなことに、保護されたときのパピーの健康状態に問題はなく元気だったといいます。 そのため、長旅にも耐えることができ、無事に東京の地に降り立つことができました。 そして、姉妹がパピーと初めて対面したとき、3つ目の偶然が起きました。
保護されたパピーたちとの初対面のとき、5頭の兄妹犬は一緒に遊んでいたのですが、その中の1頭がその後飼い主となる姉妹の元へトコトコと歩み寄って行きました。1本のリードを咥えて。まるで「一緒に帰ろうよ」とでもいうように。
そして、その子は、妹さんの膝の上に乗ってウトウトとし、次にお姉さんの膝の上にも乗ったのです。
驚いたことに、その行動は、先代犬のもみじに初めて会いに行ったときに彼女がとった行動とまったく同じだったのです。
このときの驚きと感動は、今でもくっきりと姉妹の脳裏に焼き付いているといいます。
パピーの名前は「彩葉(いろは)」。「イロハモミジ」が名前の由来。先代犬のもみじに ちなんだ名前です。イロハモミジの花言葉は「美しい変化」と「大切な思い出」。「子犬 はいらない」という無責任なひと言で簡単に飼い主から見捨てられた瞬間から、彩葉と名付けられて大切に育てられる未来が開かれた瞬間へと「美しい変化」を遂げたのです。 「大切な思い出」は、これからいくらでも作っていくことができるはず。新たな飼い主となった姉妹と一緒に。
急がず慌てず、ゆっくり慣れようね、彩葉

幸運なことに、こうして彩葉は保護犬としては比較的早い段階で新しい家族に恵まれました。
ただ、離乳こそしているものの、生後8週齢(56日)に満たない幼かった彩葉は、まだまだ 母犬の温もりが必要だったのかもしれません。
彩葉は、大きな環境の変化もあって常に不安顔だったといいます。尻尾を振ってはいるけれど、感情を表に出すことはなく顔はずっと無表情のまま。母犬や兄妹犬と離れて寂しくて不安で仕方がなかったのでしょう。人の姿が見えなくなるとか細い声でクークーと鳴き、夜は、眠ったかと思えばすぐに起き出して鳴くので、そのたびに声をかけて落ち着かせるという日々。眠れぬ夜がしばらく続きました。
しかし、姉妹にとってそんなことは苦労でもなんでもなく、先代犬もみじの命を小さな体の内奥に秘めているかのような彩葉との暮らしが楽しくて仕方がなかったそうです。



現在、彩葉は、姉妹とその両親、元野犬だった「葉音(はのん)」、猫の「ハク」ととも に東京と伊豆高原、2つの拠点を行ったり来たりしながら穏やかな暮らしを続けていま す。
春、桜の花が咲けば大室山へ花を愛でに、初夏、紫陽花が見頃になれば下田まで足をのばし、天気が良ければ白浜の波打ち際を走ります。夏は木陰の散歩道を歩き、秋は落ち葉の上でゴロスリ三昧、冬になれば白馬や裏磐梯の雪原を疾走するという、羨ましい限りの自由でのびのびした暮らしを送っています。
表に出なかった感情も、次第に表情となって表出するようになりました。ときには笑い、ときには歯を剥き出して感情の昂りを表現することもあります。走っているときの表情は 躍動感にあふれ、甘えるときには鼻を鳴らす。
表情は心の有り様を示すバロメーター。彩葉の表情を見る限り、彼はとても素直に、とてものびやかに育っているように見えます。
彩葉、そう、ゆっくりゆっくり。君を愛してくれる家族と一緒に「大切な思い出」をひとつひとつ積み重ねていけばいいんだよ。
元保護犬が抱える健康の不安

自由にスクスクのびのびと育っている彩葉だけれど、それでも健康面で気になることがあるというので、当コラムの監修を担当している獣医師の徳本一義先生に聞いてみました。
「ジビエが大好きなんですけど、鹿や猪の肉を生で食べさせても大丈夫ですか?」
<徳本獣医師の回答>
結論からいうと、鹿や猪のみならず、ペットに生肉を与えないでください。
最新の調査では、生肉ベースのペットフードの全ての検体から細菌が検出され、大腸菌や腸球菌といった病原性のある細菌も検出されています。
また、鹿の生肉にはほぼ100%の確率で「住肉胞子虫」という寄生虫が存在します。加熱不足の鹿肉による「住肉胞子虫」由来の食中毒の事例は複数報告されています。
獣医師によって管理されている家畜の肉とは違い、野生鳥獣(ジビエ)の肉は、さまざまな細菌、ウイルス、寄生虫に感染しているため、ペットにとっても人間にとっても生食は非常に危険な行為であるといえます。ジビエ肉は、十分に加熱してから与えてください。 また、冷蔵庫内で人間の食品を汚染してしまう可能性がありますので、ジビエの生肉を保存するのであれば、冷蔵庫を別に用意することが理想的です。
気になることがあったり、ペットが普段と違う様子を見せたらかかりつけの動物病院で診察してもらいましょう。「なんでもなかったら申し訳ない…」なんて思わないでくださいね。動物が病気でなかったら、獣医師は「あ~、よかった!」って安心するだけなんですから。
まとめ

彩葉は、パピーの頃から何か怖いことがあるたびに「おんぶして~!」と救いを求めてくるといいます。これも先代犬もみじとまったく同じ行動なのだそう。教えたわけでもないというのに、不思議なことがあるものですね。
宮古島で彩葉とともに保護された兄妹犬は、4頭とも新しい家族に恵まれてそれぞれ幸せ に暮らしています。5つの家族が犬を迎える際に「保護犬を迎える」という選択をしたということです。
ペットフード協会が行った「2025年 全国犬猫飼育実態調査」によると、犬の入手先として「保護犬」に該当するもの(シェルター、マッチングサイト、譲渡会)の割合は約11%に過ぎず、まだまだ広く認知されていないのが現状です。
ペットフード協会は、今後も「幸せになった保護犬たち」を紹介することで、犬を迎える際の主要な選択肢として「保護犬」が広く認知されることに貢献したいと考えています。
◎写真・文:ほりまさゆき(風の犬たち)

- 一般社団法人ペットフード協会 新資格検定制度実行委員会委員長
- 一般社団法人ペット栄養学会 理事
- 有限会社ハーモニー 代表取締役
- 日本獣医生命科学大学、帝京科学大学、ヤマザキ動物看護専門職短期大学非常勤講師
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