新ブランド「COLORMONY」始動の日本ペイントが、塗料と色彩をテーマにした画期的イベント「COLOR IS LIFE」を開催
総合塗料メーカーの日本ペイントが主催するイベント「COLOR IS LIFE」が、8月26日に東京都内で開催された。同社が新たに展開する色彩ブランド『COLORMONY』の発表を兼ねて行われた本イベントは、感覚的に語られがちな「色」を、設計・提案・採用につながる実務的な手法として捉え直し、これからの建築・デザインにおける新たな視点の提示を目的としている。会場では、色彩作りの裏側を見せるライブパフォーマンスのほか、著名建築家とグラフィックデザイナーをゲストに招いたトークセッションも実施。目と耳で色と塗料の新たな可能性を感じてきた。
選ぶ体験届け「いつもを色でかえていく」
「色は、空間と素材に新たな価値を与える」というキーメッセージとともに行われた本イベント。冒頭に主催者を代表して挨拶に立った日本ペイントの榎本朋夫社長からは、今年で創業145年を迎えた同社の歩みが語られた後、先月発表された新ブランド『COLORMONY(カラモニー)』の紹介があった。

『COLORMONY』は、この日のイベントのタイトルにも使われている「COLOR IS LIFE いつもを色でかえていく」をメッセージに、創業以来、社会インフラの保護と美観を追求してきた同社の思想を、現代の空間に寄り添う形で再定義したブランドだ。新設定のなかった色を含め、1300色以上のカラーラインナップを用意し、すべての人に「選ぶ体験」を届けていくという。

榎本社長は「色は単なる装飾ではありません。空間を演出し、人の気持ちを彩り、文化を作る力があります。また、色は感覚的なものに見えて、実は非常に実務的でもあります。提案の方向性を明確にする。素材の魅力を引き出す。魅力ある色彩でお客様に嬉しさをお届けする。そして、お客様との対話をも豊かにする。COLORMONYは、そうした色の力を現場で使える形にし、皆さんのお役に立ちたいと考えております」と本ブランドにかける思いを披露。会場では、チェアを使った展示などで、その世界観を実際に体感することができた。

著名建築家とグラフィックデザイナーがトークセッション
続いて、職人による調色機の実演から塗装までの作業で色彩作りの裏側を間近に見せるライブパフォーマンスの時間を経て、建築家の中山英之、藤原徹平、グラフィックデザイナーの田部井美奈をゲストに招いたトークセッションを実施。「色を選ぶのではなく、色が生まれる条件を設定する」をテーマに約1時間の濃密なトークが展開された。

前半は、三人がそれぞれの仕事を紹介しながら、色彩に対する考え方を披露。中山は、箱根のポーラ美術館で2021年から翌年にかけて行われた「モネ―光のなかに」展の会場構成を、田部井は、インテリアブランド「HAY」のフラッグシップストアにおける空間デザインなどを、藤原は、設計を手がけた「神戸市立垂水図書館」を参考に、そこに込めた色へのこだわりを語った。
その中で、中山は、戸外で描かれたモネの作品を「箱根の森の自然光のもとで鑑賞できたら」という発想のもとで会場を構成。実際は半地下に位置し、自然光がほとんど入らない展示室に、トタン板に萌黄色で彩色した曲線的な展示壁で空間を組み、森林を連想させるダークグリーンの棚を配して戸外の雰囲気を再現した。

さらに、太陽の下で絵画を見るという印象を興すため、「複数のスポットライトで照らすのではなく、ひとつの光の中ですべての絵を見ることをしたかった」と言い、天井に張ったスクリーンに棚に並べた蛍光灯を当てた反射光でそれを演出。カーペットにも地面を印象付ける演出を行い、その結果、『睡蓮の池』や『ルーアン大聖堂』など11点のモネ作品を、曇り空の戸外で鑑賞しているかのような会場を作り上げたという。
その後、後半は、「色をどのように選んでいるか?」などを話題にしながら、三者のクロストークに移行。
始めに「白と黒と素材色。基本的に自分の建築は、それしかやれていない。なので、田部井さんの作品を見たら、ちょっと色を使ってみたいと思った」と、田部井の仕事に触発された様子を見せた中山。続けて「色を塗ると『どうして、この色なんですか?』という質問をされてしまう。そういう時に理由を決めるのは勇気がいることで、『何となくこの色が合う気がした』では理由にならないので安易に選べない。特に建築は簡単に色を変えられないので、勇気を持てずにいた」と語り、田部井の作品に独自の考察を加えた。

一方、小さな立体物と光の関係性を写真で切り取り、平面的なグラフィックに落とし込む『光と図形』という斬新な表現で知られる田部井は、自身の作品と建築との違いを見出した模様。「0.1mm単位で置きたいものの位置が決められるグラフィックとは違うものを作りたいという気持ちで、何らかの現象や作用が起こる写真を取り入れた表現に取り組んでいるが、建築というのは、そういうことを実現空間でやっているという感じなんでしょうね」と、二人の仕事に感銘を受けていた。
また、藤原は、過去に田部井が展覧会図録のデザインを担当したアンリ・マティスを引き合いに、「色彩の魔術師」と呼ばれた画家が現代建築に与えた影響を考察。「マティスは図形にも多大な影響を与えている。晩年は切り絵に移っていくが、色面を空間に配列していくというのも、バウハウスやロシア・アヴァンギャルドが展開していった、芸術の解体と再構築という大きなウインドウの中にあると思う」などと自らの考えを述べた。

終盤には三人が「これから色でやってみたいこと」について意見を交わし、藤原から「(ライブパフォーマンスで見た)調色機のように工場がポータブルになると、例えば小学校にあの機械を持っていけば、自分たちが作った色で小学校を塗るといった企画もでき、公共建築を変える可能性があると感じた」というアイデアが語られるなど、最後まで、色と塗料の新たな可能性を感じさせられる時間になった。
塗料業界のリーディングカンパニーが、色彩をテーマに開いた画期的なイベント「COLOR IS LIFE」。カラフルな展示とクリエイターの深いトークは、ごく風雨にある色への認識がちょっと変わる機会に。皆さんも色と社会の関係性を考えながら街を歩いてみると、普段見える景色が少し変わって見えるかも。