地方で増える輸入車の「整備難民」 専門人材と設備投資をどう維持するか

2026-09-15 21:30

輸入車の選択肢が広がる一方で、購入後の整備や修理に不安を抱えるユーザーも少なくない。とくに地方では、対応できる整備工場や技術者、専用機器が限られ、「車は買えても、近くで直せる場所が見つからない」という、いわば“輸入車の整備難民”ともいえる状況が生まれつつある。

背景には、自動車の電子制御化や電動化の進展がある。EVやハイブリッド車の普及により、整備の現場では従来以上に専門知識や診断機器が求められるようになった。地方でこうした体制を維持するには、設備投資と人材育成の両立が欠かせない。

岐阜県各務原市を拠点に、輸入中古車の販売や整備を手掛ける株式会社ケアンは、こうした課題にどう向き合っているのか。地方で“整備難民”を生まないための条件を探った。

なぜ地方で「輸入車の整備難民」が生まれるのか

自動車整備を取り巻く環境はここ数年で大きく変わっている。

従来の整備は機械的な部品交換や修理が中心だったが、現在の車両には多くの電子制御システムが搭載されている。輸入車ではメーカーやモデルごとの差も大きく、診断や修理に必要な機器や情報も幅広い。

そのため、ユーザー側から見ると「購入した店では対応できない」「近隣で診てもらえる工場が少ない」「輸入車を扱える整備士が限られている」といった問題が起こりやすい。これが、地方で“整備難民”という言葉が現実味を帯びる理由の一つだ。

さらにEVやハイブリッド車が増えれば、高電圧システムへの対応や安全管理など、整備工場に求められる要件はさらに高くなる。

一方で、地方では対象となる輸入車の台数が都市部ほど多くないため、高額な設備投資を行っても十分な稼働率を確保しにくい。専門人材の採用や育成にも時間と費用がかかる。

つまり、地方で“整備難民”を減らすには、整備技術だけでなく、それを支える経営基盤も必要になる。

販売と整備を一体化するのはなぜか

株式会社ケアンでは、輸入中古車の販売と整備を同じ拠点で手掛けている。

同社によれば、ドイツのボッシュが展開する「BOSCH Car Service」に加盟し、診断機器や技術情報を活用しながら整備に対応しているという。こうした体制づくりは、地方でも輸入車の“整備難民”を生まないための一つの方法といえる。

ポイントになるのは、販売と整備を切り離さないことだ。

販売した車両をその後の点検や修理でも受け入れれば、整備工場の稼働を一定程度確保しやすくなる。整備体制を持つことは、販売時の車両チェックや納車後のアフターサービスにもつながる。

設備投資は一度行えば終わりではない。診断機器の更新や情報サービスの利用、技術者の教育など、継続的な負担が生じる。販売と整備を組み合わせることで、その負担を事業全体で支える構造をつくろうとしているわけだ。

もっとも、このモデルも万能ではない。販売台数や整備需要が減れば、投資回収は難しくなる。幅広いメーカーに対応するほど、必要な設備や知識の範囲も広がる。

地方で輸入車の“整備難民”を防ぐには、何でも対応するのではなく、どの領域まで対応するのかを見極める判断も求められる。

中古輸入車ユーザーが気にする「買った後」の不安

輸入中古車の購入では、車両価格だけでなく、購入後のメンテナンスや故障時の対応も重要になる。

特に輸入車は、国産車に比べて部品代や工賃が高くなる場合があり、購入後のコストに不安を感じる人も少なくない。こうした不安が、結果として「整備難民になったらどうしよう」という懸念にもつながる。

ケアンでは、車両に応じた保証制度や料金の説明などに取り組んでいるという。販売店が自社で整備機能を持っていれば、購入後の相談先が明確になる点は利用者にとって一つの安心材料になり得る。

一方で、保証を充実させれば、その分だけ事業者側の負担も増える。どこまで保証するのか、どの故障を対象にするのか、サービスの手厚さと収益性のバランスが必要になる。

消費者にとっても、保証年数だけを見るのではなく、対象範囲や条件を確認することが重要だ。輸入車の“整備難民”を避けるには、購入時点で「どこで、どう整備していくのか」を見ておく必要がある。

地方で整備機能を維持することは「移動手段」を守ることでもある

自動車は購入して終わりではない。車検、点検、故障対応、消耗品交換など、保有し続ける限り整備が必要になる。

とくに公共交通が限られる地域では、自家用車を使えなくなることが生活に直結する。そう考えると、地域で車を整備できる体制を残すことは、単なる事業の問題ではなく、移動手段を支える基盤の問題でもある。

ただし、すべての整備工場があらゆる輸入車や次世代車に対応するのは現実的ではない。専門分野を持つのか、外部ネットワークを活用するのか、あるいは販売と整備を一体化して需要を確保するのか。事業者側には複数の選択肢がある。

今後、電動化やソフトウェア化が進めば、地方で“整備難民”がさらに広がる可能性もある一方、それに対応できる整備工場の価値は高まる可能性もある。

株式会社ケアンの取り組みは、地方で輸入車の“整備難民”を生まないために、販売と整備をどう組み合わせ、設備と人材へどう投資するかを考える一例といえる。

「車は買えるが、直せない」。そんな状況を地域でどう防ぐのか。地方の整備工場には今後、これまで以上に大きな役割が求められることになりそうだ。



【取材協力】
株式会社ケアン
https://cairn.jp/

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