「腸バテ」って知ってる? 季節の変わり目に医師が勧める第三の善玉菌“酪酸菌”習慣

9月も半ばを迎え、季節は少しずつ秋へと向かっている。朝晩は涼しくなってきたものの、日中はまだ暑い。日々の中で寒暖差を感じる場面が増えてきた人も多いのではないだろうか。
一方で、なんだかお腹の調子だけは今ひとつ。そんな不調を感じている人もいるかもしれない。「夏バテ」はもう終わったはずなのに、胃腸だけは夏の疲れを引きずっている。実はこの状態を指す言葉として、いま注目されているのが「腸バテ」だ。夏の暑さだけでなく、朝晩と日中の気温差、屋外と冷房の効いた室内との温度差が続くこの時期こそ、胃腸への負担が蓄積しやすいタイミングでもある。
「腸バテ」とは何か
「腸バテ」は医学的な診断名ではなく、暑さや寒暖差によって起こる胃腸の不調を総合的に表す言葉だ。食欲の低下、お腹の張り、便通の乱れなど、日常的にありがちな症状が特徴で、「夏バテ」として見過ごされがちなものでもある。
しかし、「腸バテ」は夏場だけに起こる不調ではない。今年の夏は連日の猛暑に加え、地域による極端な気温差や激しい寒暖差が特徴的だった。暑さが落ち着いてきた今も、日中と朝晩の気温差、屋外と冷房の効いた室内との温度差は続いている。SNS上でも、夏バテだけでなく「腸バテ」を訴える声が見られる。
イシハラクリニック副院長の石原新菜先生は、「腸バテ」が起こる原因を主に3つ挙げる。

1つ目は、室内外の寒暖差による腸の働きの乱れ。酷暑の屋外と冷房の効いた室内を行き来する生活は身体に負担がかかりやすく、自律神経にも影響を及ぼす。自律神経は腸の働きとも関わるため、こうした環境の変化が続くと、便通の乱れやお腹の張りなどの不調につながりやすい。
2つ目は、冷たいものの摂りすぎ。冷たい飲み物やアイスを摂る機会が増え、下痢などが続くと、腸内環境のバランスが乱れ、腸のバリア機能にも影響を及ぼす。
3つ目は、偏りがちな食生活による腸内細菌のエサ不足。食欲が落ちやすい時期は、そうめんや冷たい麺類など、のどごしの良い食品だけで食事を済ませがちになる。こうした食事に偏ると、腸内細菌のエサとなる食物繊維が不足しやすくなる。
カギを握るのは「酪酸菌」
こうした「腸バテ」対策のカギとして石原先生が挙げるのが、乳酸菌やビフィズス菌に続く第三の善玉菌とも呼ばれる「酪酸菌」だ。
酪酸菌は、大腸の主要なエネルギー源となる「酪酸」を作り出す善玉菌の一つ。免疫や代謝、腸内環境との幅広い関わりから、腸内細菌研究において重要な存在とされている。「酪酸菌」が「腸バテ」対策のカギになる理由は、大きく2つある。
1つ目は、善玉菌が活動しやすい腸内環境をつくる点だ。腸内細菌は種類によって酸素を必要とする度合いが異なり、善玉菌であるビフィズス菌や酪酸菌は酸素を苦手とするタイプにあたる。酪酸には大腸内の酸素を消費させる働きがあり、ビフィズス菌や酪酸菌が活動しやすい腸内環境をつくる手助けをしている。
2つ目は、大腸バリアの維持だ。酪酸には腸内の粘液の産生を促進させ、分厚い粘液層(大腸バリア)を保つのを助ける働きがある。粘液は、細胞にくっつこうとする病原体などの異物を洗い流す働きを持つため、この大腸バリアの維持は免疫力の維持向上にも貢献している。
なお、近年「若返り菌」とも呼ばれる酪酸菌だが、これは実際の年齢や外見を若返らせるという意味ではない。加齢に伴って進行する「免疫老化」と比較し、腸と免疫の健やかな状態を維持するという意味で用いられている言葉だ。
日常で酪酸菌を取り入れるには
酪酸菌は、乳酸菌やビフィズス菌などと比べて食品から摂取できる機会が限られている腸内細菌だ。そのため、酪酸菌そのものを食品から取り入れるだけでなく、もともと腸内にいる酪酸菌にエサを与え、育てることが大事になってくる。
そのエサになるのが、「発酵性食物繊維」や「レジスタントスターチ」だ。発酵性食物繊維は腸内細菌に利用されやすく、レジスタントスターチは消化されずに大腸まで届く。大腸で腸内細菌がこれらを発酵すると、酪酸がつくられる。
発酵性食物繊維を多く含む身近な食材としては、もち麦やオクラ、枝豆、きのこ類などが挙げられる。次に紹介するレシピにも、こうした食材が積極的に使われている。
食べやすさから、ぬか漬けなどの発酵食品を思い浮かべる人もいるかもしれない。ただし、ぬか漬けにも含まれる酪酸菌を腸内で増やそうとする場合、塩分量の観点や準備の手間から、日常的に多く食べ続けるのは難しい面もある。食物繊維を意識した食事を毎日続けるのが難しい人には、酪酸菌配合の整腸剤を活用する方法もある。整腸剤はお腹の不調時だけに飲むものではなく、日ごろのケアとして毎日摂ることもできる。
石原先生監修「腸バテ対策レシピ」
手軽さ・季節感・栄養バランスにこだわり、石原先生監修のもとで考案された「腸バテ対策レシピ」から、2品を紹介する(レシピ開発:うんち栄養士・梅原しおり氏)。
枝豆とじゃこの腸活混ぜごはん

枝豆に含まれるビタミンB1で、季節の変わり目の元気をサポートする一品。舞茸には腸内細菌が利用しやすい食物繊維が含まれており、酪酸菌を意識した食生活にも取り入れたい食材だ。じゃこからは不足しがちなカルシウムも摂れる。みょうがや大葉の香りで、さっぱりと食べられる混ぜご飯に仕上がる。
モロヘイヤとえのきの柚子こしょう和え

β-カロテンや食物繊維を多く含むモロヘイヤは、酪酸菌を意識したメニューにも取り入れたい野菜。高たんぱく・低脂質なささみを合わせることで、栄養補給にも役立つ一品になる。柚子胡椒の爽やかな辛みがアクセントになり、箸が進みやすい副菜だ。
季節の変わり目は、体調を崩しやすい。「夏バテは終わったのに、胃腸だけがすっきりしない」という人は、夏の間の食事を振り返ってみてほしい。冷たいものや麺類に偏っていたなら、食物繊維が不足していないかも気にしたい。もち麦、枝豆、オクラ、きのこなどを一品加えるだけでも、酪酸菌のエサとなる食物繊維を補える。
酪酸菌は、食物繊維をエサにして酪酸をつくる。まずは今日の一食から。夏に疲れた胃腸を、日々の食事で少しずつ元気にしていきたい。