鳴門市で子どもたちの夢が動き出す。それぞれが描いた未来への第一歩
子どもの頃に思い描いた「こんな人になりたい」「こんなことをやってみたい」という夢。その気持ちを言葉にするだけでなく、実現に向けた一歩まで応援してくれる取り組みが、徳島県鳴門市で行われています。
鳴門市が実施する「うずっ子夢のたねプロジェクト2026 ~BOAT RACE鳴門 presents~」では、子どもたちから将来の夢や目標を募集。2026年9月6日には鳴門市役所で、一次審査を通過した5組によるプレゼンコンテストが開催されました。それぞれが自分の言葉で夢を伝えた結果、今年度は2人の「夢」が市の支援対象に選ばれています。
粘土作家、レジン作家、動物の飼育員、そして四国遍路を世界へ広めることや、人の役に立つものづくりまで。子どもたちが描いた夢は実にさまざまです。どんな思いからその夢が生まれ、これまでどんな行動を重ねてきたのでしょうか。5組それぞれの挑戦と、夢を次の一歩へつなげる鳴門市の取り組みを追っていきます。
子どもの「やってみたい」を一歩先へ。鳴門市が夢の実現を応援

「うずっ子夢のたねプロジェクト2026 ~BOAT RACE鳴門 presents~」は、子どもたちが思い描く夢や目標の実現に向けて、鳴門市がその一歩を後押しする取り組みです。昨年度から始まった県内初の取り組みとして、今年度も実施されています。
プロジェクトでは、子どもたちから「将来こんな人になりたい」「こんなことに挑戦してみたい」といった夢や目標、それを実現するためのアイデアやアクションプランを募集します。特徴的なのは、子どもたちの夢を聞いて終わるのではなく、選ばれた個人やチームに対して、実現に近づくための体験や専門家とのマッチングなど、市が具体的な支援を行うことです。
大きな夢であっても、最初から実現までの道筋が見えているとは限りません。それでも、自分が好きなことを続けたり、知りたいことを調べたり、誰かに思いを伝えたりすることは、夢へ近づく一歩になります。子ども自身が「やってみたい」を考え、行動に移し、その先を鳴門市が具体的な支援につなげていくところに、このプロジェクトならではの魅力を感じます。
そして今年も、思い思いの夢を抱いた子どもたちがプロジェクトに参加しました。「夢の提案書」と「3分間のPR動画」による一次審査を通過したのは5組。次の舞台となったのが、自分の夢を自らの言葉で届けるプレゼンコンテストです。
3分では伝えきれない夢を胸に。5組がプレゼンの舞台へ
2026年9月6日、鳴門市役所でプレゼンコンテストが開催されました。一次審査を通過した5組が、自分の夢やこれまで取り組んできたことを発表。会場には審査員だけでなく多くの観客も集まり、1チームと4人の発表者がそれぞれの思いを届けました。
審査を務めたのは、「鳴門市子どものまちづくり推進協議会」会長の小野瀬裕子さん、鳴門市教育長の阿部孝弘さん、鳴門市こども未来創造部長の黒濵政章さんの3人です。子どもたちが描いてきた夢は一つとして同じものではなく、それぞれが好きなことや身近な経験をきっかけに、自分なりの目標へと育ててきたものでした。
どの夢を支援するのか、審査は最後まで難航したといいます。当初は1人または1組を選ぶ予定でしたが、厳正な選考の結果、今年度は同率で2人を選出。「粘土作家になって個展を開きたい」と夢を語った矢野陽向さんと、「レジン作家になりたい」と発表した鳥羽梨絢さんが、市の支援につながる「夢チケット」を手にしました。
夢チケットを手にした2人は、どちらもものづくりへの「好き」という気持ちを、長い時間をかけて育ててきました。では、2人はどのようにして今の夢と出会い、これまでどんな一歩を重ねてきたのでしょうか。ここからは、それぞれの夢の原点と、鳴門市の支援によってこれから始まる新たな挑戦を見ていきます。
「好き」を夢への一歩に。夢チケットを手にした矢野陽向さんと鳥羽梨絢さんのこれから

夢チケットを手にした矢野陽向さんと鳥羽梨絢さん。2人に共通しているのは、子どもの頃に出会った「好き」を一度きりの体験で終わらせず、作品づくりを続けながら少しずつ夢へと育ててきたことです。
「粘土作家になって個展を開きたい」という矢野さんが粘土細工に興味を持ったのは、小学2年生のとき。YouTubeで粘土細工の動画を見たことをきっかけに制作を始め、これまでに500個以上もの作品を作り上げてきました。次に挑戦したいのは、優れた技術を持つ人から直接指導を受けること。積み重ねてきた経験を土台に、さらに技術を磨きながら「個展を開く」という夢を目指します。
一方、「レジン作家になりたい」という鳥羽さんの原点は、小学1年生のときに友達へのプレゼントとして作ったレジン作品でした。それ以来、自宅のお気に入りの作業デスクでたくさんの作品を制作しています。これから学びたいのは、大人が好むデザインやアクセサリー作りの細かな技術。矢野さんと同じく、プロから直接学ぶことを希望しています。
鳴門市では、今後2人と話し合いを重ねながら具体的な支援内容を決め、2026年10月以降に支援を始める予定です。「好き」から始まり、自分の手で育ててきた2人の夢。夢チケットはそのゴールではなく、これまでとは違う経験や人との出会いにつながる、新たなスタートになりそうです。
夢チケットだけじゃない。それぞれの挑戦に贈られた3つの賞
夢チケットを手にした2人だけが、この日の主役だったわけではありません。プレゼンに臨んだ子どもたちは、それぞれが夢に向かって考え、調べ、行動してきました。そんな一人ひとりの挑戦と発表を称え、3組にもそれぞれの個性にちなんだ賞が贈られています。
大好きな動物への思いをクイズに|二宮さん

「動物の飼育員になりたい」という夢を発表した小学4年生の二宮さんには、「みんなの心に響いたで賞」が贈られました。大好きな動物について学んだことをクイズ形式で紹介し、会場を和やかな雰囲気にしながら、夢の実現に向けて頑張っていることを堂々と発表。好きなものについて知るだけでなく、その魅力を自分なりの方法で人に伝える姿も印象的です。
14組へのインタビューを夢への一歩に|山本さん

小学3年生の山本さんが掲げたのは、「四国遍路を鳴門から世界へ広めたい」という夢です。その思いを形にするため、四国八十八箇所霊場の1番札所・霊山寺で働く人や、県内外から訪れた14組のお遍路さんにインタビューを実施しました。夢の実現に向けて自ら動いた行動力と熱意が光り、「記憶に残ったで賞」を受賞しています。
2人の思いと得意をひとつに|中岸さんと岡さん

「困っている人の役に立つものづくりをしたい」と発表したのは、小学5年生の中岸さんと小学6年生の岡さんによる「You’re shining!RK!」です。車いすを利用する人を見たことから、困っている人を助けたいと思うようになった中岸さん。そして、絵を描くことが大好きでデザインを学んでいる岡さん。異なるきっかけや得意なことを持つ2人が力を合わせ、人を元気づけるものづくりへの思いを伝えました。そんな2人には「チームの絆に感動したで賞」が贈られています。
夢の大きさや内容に正解はありません。好きなことをもっと知りたい、地域の魅力を誰かに伝えたい、困っている人の力になりたい――。それぞれの思いを自分なりの行動へ変えてきたことも、今回のプレゼンコンテストで見えた大切な「夢のたね」なのかもしれません。
子どもたちの「夢のたね」が、鳴門で育っていく
粘土やレジンでものづくりを続けること、大好きな動物について学ぶこと、地域の魅力を伝えるために自ら話を聞くこと、誰かの役に立つものを仲間と考えること。今回プレゼンに挑んだ5組の姿からは、夢への一歩が日々の「好き」や「やってみたい」から始まっていることが伝わってきます。
「うずっ子夢のたねプロジェクト」で印象的なのは、夢の内容だけでなく、そこへ向かう子どもたちの行動にも光が当てられていることです。作品を作り続けることも、誰かに話を聞くことも、仲間とアイデアを形にすることも、それぞれが夢へ近づくための大切な経験になっていくのでしょう。
夢チケットを手にした矢野陽向さんと鳥羽梨絢さんの挑戦も、これから新たなステージへ進みます。そして、今回プレゼンの舞台に立った5組それぞれの「夢のたね」は、すでに小さな一歩を重ねながら育ち始めています。いつか振り返ったとき、この日の挑戦がどんな未来につながっているのでしょうか。鳴門で生まれた夢がこれからどのように花開いていくのか、楽しみに見守りたいですね。
鳴門市 概要
鳴門市は、徳島県の北東部、東四国の玄関口に位置するまちです。鳴門海峡に逆巻く渦潮や瀬戸内海国立公園の風光明媚な景観をはじめ、なると金時、レンコン、鳴門わかめ、鳴門鯛など豊かな特産品にも恵まれています。美しい自然や食、歴史・文化など、多彩な地域資源を有しています。