
イタリアのレッジョ・エミリアに本部を置くパルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会が主催するイベント「PARMIGIANO REGGIANO DAY TOKYO 2026」〜CLUB REDの女性シェフたちが拓く、新しい道〜が、10月26日に東京・銀座のL’atelier de otoで開催された。10月27日が「パルミジャーノ・レッジャーノ・デー」に合わせ、世界各地で毎年行われている本イベント。今年の東京会場では、若手スターシェフの発掘を目的としたコンペティション「RED U-35」との共催により、同大会で受賞歴のある4人の女性シェフがチームを組み、パルメジャーノ・レッジャーノの新たな可能性を引き出す料理を披露した。脚本家の小山薫堂氏、食プロデューサーの孤野扶実子氏らも参加し、大いに盛り上がった会場の様子をレポートする。
重さ約40キロのチーズカットセレモニーで華やかに幕開け!
陸・山・海と多様な自然環境に恵まれ、日本と同じく郷土色豊かな食文化が育まれてきた国、イタリア。紀元前からチーズ文化が根付く同国では、全土で500種類以上のチーズが作られているといわれる。その中でも「イタリアチーズの王様」と呼ばれるのが、DOP(原産地呼称保護)の厳格な基準のもと、北イタリアの限られた地域だけで生産されるパルミジャーノ・レッジャーノだ。約2年の長期熟成によって生まれる深い旨味と独特の食感は、その冠にふさわしい魅力を放っている。

90年以上の歴史を持つ生産者団体、パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会では、2012年に同国・エミリア=ロマーニャ州を襲った大地震の復興支援を目的に設立された10月27日のパルミジャーノ・レッジャーノ・デーに合わせ、1000年以上にわたって受け継がれてきたチーズ作り伝統を伝えるイベントを世界各地で開催している。
この日は冒頭に、チーズ・プロフェッショナルとして活動する星野真人氏によるチーズカットセレモニーを実施。イベント名が刻印された重さ約40キロのパルミジャーノ・レッジャーノがホールのまま運ばれてくると、参加者たちからは大きな歓声が巻き起こった。

カットする際の感触は個体ごとに異なるといい、4本のナイフを駆使しながら「今日は非常に素直な子です。しっとり感もあるので期待してください」と笑顔を見せる星野氏。やがて外皮が割れ、中身が露わになると、24ヶ月熟成のチーズからフレッシュな香りが一気に広がり、年に一度の記念日の到来を華やかに告げた。
クラフトマンシップで共鳴し合うパルミジャーノ・レッジャーノと日本の伝統文化
次に、今年の共催者である「RED U-35」で総合プロデューサーを務める小山薫堂氏が「サルーテ!(乾杯)」の音頭を取り、イベントが本格的に開幕。

まずは12ヶ月、24ヶ月、36ヶ月と熟成期間の異なる3種類のパルミジャーノ・レッジャーノが各席に提供され、その味わいの違いを楽しんだ。

続いて、主催者であるパルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会を代表し、ジャパンPRコンセプターのティツィアナ・アランプレセ氏が登壇。日本とイタリアの絆をさらに深めることを目的に、去年から進めている公式プロジェクト「パルミジャーノ・レッジャーノ道」の活動について語った。

東京在住20年以上の同氏は「世代を越えて受け継がれてきたパルミジャーノ・レッジャーノの生産プロセスは、書道、茶道など、日本の『道』の精神や伝統文化と深く共鳴しています」と本プロジェクトを立ち上げるきっかけとなった考えを語り、その上で「伝統」「本物」「自然」など、コンセプトを表す10のキーワードを紹介。さらに、日本文化との特に大きな共通点に「クラフトマンシップ」を挙げ、その取り組みの一環として福岡県の工房とコラボレーションして製作した、パルミジャーノ・レッジャーノの提灯を披露した。

また、同氏はRED U-35の女性シェフとの今回のコラボレーションについても思いを語り、「日本もイタリアも、もっともっと女性のエンパワーメントが必要だと思います。今日は4名の料理人の方がすごく素敵な料理を作ってくださるので、皆さん最後までぜひお楽しみください」と述べ、この後に提供される料理への期待を高めた。
RED U-35の受賞経験者がパルミジャーノ・レッジャーノで特別な一皿を披露
この日の料理を担当したのは、RED U-35の受賞者で結成される「CLUB RED」のメンバーで、岸朝子賞などの受賞歴がある山本結以氏(ESqUISSE/東京・銀座)、ドグエン・チラン氏(CHILAN/広島)、村田美月氏(L’atelier de oto/東京・銀座)、山田千夏氏(Millé/福岡)の4人。食プロデューサーの孤野扶実子氏が監修を務め、各シェフが考案した一皿に、4人の共創によるデザートを加えた計5品が、ペアリングドリンクとともに提供された。
最初に登場にしたのは、山本氏による『誘い|北寄貝、バターナッツ、鬼灯』という一皿だ。

「北寄貝の旨味、鬼灯の酸味、バターナッツの甘味、それぞれの味わいをパルミジャーノ・レッジャーノの熟成された旨味と繋ぐような一皿を構成しました」と山本氏。崩してしまうのが惜しくなる、どこか儚さを感じる一品からは、北寄貝の軽快な食感とともに、優しさがふわりと広がった。

次に提供されたのは、チラン氏による『三和|車海老、水晶文旦、牡蠣魚醤、ベトナムスパイスのデュカ、ミント』という一皿だ。

ベトナム人の両親のもと日本で生まれ育った同氏は、パルミジャーノ・レッジャーノの魅力を引き出すにあたり、ベトナム料理の「ザボンサラダ(文旦を使ったサラダ)」に着想を得て、高知県産の水晶文旦に着目したという。さらに「ベトナムらしいスパイスとハーブを使ってパルミジャーノ・レッジャーノが主役のデュカ(ミックススパイス)を作り、食材と文化の架け橋になればと思いました」と語る同氏。スパイスがバチバチと弾けるような刺激的な一品は、酸味のあるリースリングのワインともペアリングも絶妙だった。

村田氏は『郷愁|もち米、さめのたれ、フカヒレ、ラビオリ、36ヶ月パルミジャーノのエキューム』という一皿を提供。

パルミジャーノ・レッジャーノを使った一品を考えるにあたり、イタリア料理の「リゾット・カチョ・エ・ぺぺ(チーズと黒胡椒のリゾット)」にヒントを得たという同氏は、そこに自身の出身地・伊勢志摩の郷土食「さめのたれ(鮫の干物)」を組み合わせ、食文化の融合に挑んだ。その斬新な発想には、周囲の参加者からも驚きの声が上がっていた。

そして、山田氏の『12ヶ月・36ヶ月の余韻』は、熟成期間の異なるパルミジャーノ・レッジャーノを使い、また出産を経験した経産牛の肉を取り入れることで、器の中に「牛の一生」というストーリーを表現した一皿だ。

「36ヶ月熟成されたチーズの皮の部分から取った出汁をソースにし、経産牛の中にも12ヶ月熟成のソースを合わせた秋野菜やキノコを詰め込みました」と同氏。そこにはパルメジャーノ・レッジャーノの1000年以上にわたる伝統はもちろん、自然の恵みがあってこそ我々の営みが続いていくという、メッセージも込められているような気がした。

新進気鋭の若手料理人が新たな可能性に挑んだ一皿は、いずれも「どこにチーズが潜んでいるのだろう?」と味覚を刺激するものばかり。塊や粉チーズにして味わうだけではなく、出汁や隠し味としても活用できるパルミジャーノ・レッジャーノの懐の深さを感じさせた。そして、4人が共作したデザート『道 ─共創─』も、まるでこれからの「パルミジャーノ・レッジャーノ道」にエールを送るような力強さを感じさせる、締めくくりにふさわしい一品だった。

料理の提供後には、孤野氏が司会を務め、4人のシェフとのトークセッションを実施。

今回の一皿を考える中で得た発見について尋ねられた4人は、「いろいろな形に姿を変えて料理に寄り添ってくれるパルミジャーノ・レッジャーノの魅力を改めて感じました」(村田氏)、「パルミジャーノ・レッジャーノは“百面相”といいますか、熟成度合いはもちろん、切り方や熱の入れ方によってもいろんな表現の仕方があり、自分の思い描いた一皿を作ることができました」(山本氏)、「単に食材として使うのではなく、パルメジャーノ・レッジャーノがどうやって生まれ、どれだけ時間をかけて作られているのかという背景まで知りながら料理を作ることができました」(山田氏)、「削り出し方だけでも、パルミジャーノ・レッジャーノのいろんな魅力が楽しめることを知ることができた時間でした」(チラン氏)と、それぞれの気付きを振り返った。
また、チーズプロフェッショナル協会名誉会長の本間るみ子氏も登壇し、チーズへの愛情あふれるトークで、会場を一層盛り上げた。
なお、今回のRED U-35とのコラボレーションを記念し、11月中旬から下旬までの期間中、CLUB REDの女性料理人が所属する首都圏の飲食店6店舗で「PARMIGIANO REGGIANO DAY FAIR 2026」が開催。パルミジャーノ・レッジャーノを使った期間限定の特別メニューが提供される予定だ。参加店舗などの詳細は、RED U-35の公式ページで確認を。