「子どもを投げてつぶしたい」保護者が暴いた“保育虐待”の実態 記録された保育士たちの異常な暴言行政の限界も…なぜ防げない?【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-10-23 14:25

新たな視点と独自取材でお伝えする「eyes23」。全国で相次ぐ保育施設での虐待についてです。大阪の認定こども園で、複数の保育士による子どもへの虐待が行われていたことがわかりました。虐待を明らかにしたのは、異変を感じた保護者が録音していた音声でした。

【画像でみる】「パンツ捨てたろ」「めっちゃ貧乏くさい」2歳児に異常な暴言

「あの2人最悪や」2歳児に異常な暴言…音声が暴いた“心理的虐待”の実態

保育士A
「早く、どうすんの!開けて!(机たたく)ドン!(机たたく)塗って!」

これは2024年6月、大阪・八尾市にある認定こども園で録音された保育士と子どものやり取りです。

保護者
「(子どもが)行きたくない、行きたくないって。家に帰るたびに泣き叫ぶとか」
「気づいてあげられなかった悔しさと申し訳なさで、その夜も全然寝られなくて」

全国で相次ぐ、保育施設での虐待。幼い子どもが健やかに育つための場所で、いったい何が起きているのでしょうか。

音声が録られたのは広さ20畳ほどの部屋。2歳児クラスの子ども10数人が在籍していました。担当の保育士は、A(40代)、B(40代)、C(20代)のあわせて3人。

関係者から入手した音声データは2日分で、約14時間にわたるものです。異変を感じた保護者が子どもの鞄にボイスレコーダーを隠し、録音しました。

登園後まもない時間から、泣いている子どもを保育士たちが責め立てる場面がありました。

保育士A「行けってトイレに。連行するかほんまに。あの2人最悪や」
保育士B「ほんま最悪や」

保育士A「ねえ鼻水出てるって。朝から何回も言ってるよ!何でふけへんの?何で出てるのに気づけへんの? 」

パンツやズボンが履けない子を馬鹿にするようなやり取りもありました。

保育士B「いーや、トレーニングパンツはけなかったら捨てたろ、パンツ。パンツ捨てたろ、ごみ箱に。いらんな?いらんな?アンパンマンのパンツ」

保育士B「ええ、めっちゃ貧乏くさい。このズボン、穴空いているの。ワッペンつけられています」

そして「塗り絵」の時間には、クレヨンで早く塗るよう強く迫る様子が…

保育士B「(箱)開けて!(机叩く)」
保育士A「ドン!(机叩く)開けて!」
保育士B「なんでやねん。ドン!(机叩く)こっちに置いてって」
保育士A「ドン!(机叩く)塗って!ドンドン!塗って。早く、もう時間ないねん!塗って、塗って!」

さらには保育士3人が「ストレスの発散」として、こんな話をする場面も…

保育士C「何でも壊せる施設あるの知ってます?ストレス発散にガラクタ」
保育士A「投げたりする」
保育士B「私〇〇(幼児の名前)をジャイアントスイングして投げたい」
保育士A、C「ハハハハハ」

皿や瓶を投げてモノを壊す娯楽施設で、「子どもを投げたい」と話していたのです。録音された時間などから、そばには昼寝をしている子どもたちがいたとみられています。

保育士A「投げるなら誰投げたい?」
保育士B「わたし3人おるな」
保育士A「投げ方としては人間やろ。ヒューバーン!みたいな。ヒューヒューと投げる。どちらにしようかな…〇〇ちゃん(幼児の名前)やな」

録音した保護者はすぐに八尾市と園に通報。音声を聴いた市の担当者は…

八尾市 保育・こども園課 和島あかね 課長
「園児を侮辱する言葉であったり感情にまかせて叱責したりとか、威圧的なものであるのでこれはもう心理的虐待に該当するということで判断した。(園に対し)事実確認を行い、翌日からの保育体制の見直しを指示しました」

園は緊急の保護者会(当該クラスのみ)を開き、「不適切保育があった」と謝罪。保育士3人をクラスから外すとしたうえで、再発防止に努めると説明しました。

園が市に報告した内容によると、保育士たちの動機はこう書かれています。

園が市に提出した「経緯報告書」
「保育がうまくいかないことに感情的になった」

保育士3人は発覚から数日後、諭旨退職処分となりました。

園は取材に対し、「多忙さが保育士の余裕をなくし今回の件を招いたと推察する」と回答。「業務の合理化や人権の研修などに取り組む」としています。

私たちは今回の音声を乳幼児教育の専門家にも聴いてもらいました。

玉川大学教育学部 大豆生田啓友 教授
「これすごく不思議なのは、大人の声と子どもの泣き声しかほぼ聞かなかった。異常ですよね、子どもの声が聞こえない。異常。2歳児しゃべりますよ、もっと。子どもがしゃべらない、それが深刻。聞いていないような顔して、子どもたちはすごくわかっているので、ものすごく傷つきます。音とかふるまいで威圧すること、ものすごいプレッシャーなはず。自分が叩かれるのではないかという恐怖さえ感じるわけですから、まさにそれも脅しですよね。(子どもが)自分で主体的に動いたり、自分って結構できるかもと思えたり、そういう風なことが育つ大事な時期。管理統制・強圧的にされるとそれが育っていかない」

保護者は、なぜもっと早く気付けなかったのかと話します。

保護者
「子どもにもすごい罪悪感。申し訳ないなっていう気持ちでいっぱいで」
「他のスタッフも知っていたのではないか、という疑問は今もありますし」

「まずは園長と職員で確認」行政の限界…保育施設の虐待なぜ防げないのか

保育士A「うるさい、やめてそれもう。やめて。やかましい、やかましい」

音声が明らかにした深刻な虐待の実態。園や市がもっと早く事態を把握し、動くことは出来なかったのでしょうか。

関係者や園の報告書によると、録音をする数週間前に、保護者は園に「子どもが先生を怖がっている」などと相談をしていました。しかし園は「まだ慣れていないだけ」などと回答したということです。

2歳児クラスの部屋には「防犯カメラ」が設置されていましたが、映像を確認したのかどうか、園は明らかにしていません。

保護者は八尾市にも相談をしていましたが、市からは「話だけでは難しい」などと言われ、自ら録音せざるを得なかったということです。八尾市は取材に対し、「市としても確認をしようとしていた」とした上で、まずは園が調べるのが原則で、行政の権限は限られていると話します。

八尾市 福祉指導監査課 萩原伸 課長
「立ち入り検査法上で認められているなかでも条文にもありますけど、『犯罪捜査のための権限ではない』という規定がある。(行政が)何もかもひっくり返して調べ上げるぞみたいなことがどこまでできるのかっていうのが、そんなに明確なものはなくて」

八尾市 保育・こども園課 和島あかね 課長
「まずは園長先生と職員でしっかり確認していただいて、その状況をしっかり報告してもらうのが、そこが一番になります」

今回、八尾市は園に対し特別監査に入ったものの、「改善がみられる」などとして処分は行わず、公表もしていません。

2023年、国の調査で明らかになった全国の保育施設での虐待の件数は「122件」。専門家は「まだ明らかになっていないケースは多い」と指摘します。

保育園を考える親の会 顧問 普光院亜紀さん
「(子どもに)何があったの?と聞くと、実際は大人のように時系列に話せなかったり、2~3歳だと自他の区別もつかない。保護者自身で証拠を集めなければいけないこと自体が、とてもおかしいこと。防犯カメラの映像も行政がチェックするくらいのことがあっていいのではないか。なぜ防げなかったのか、大人たちがちゃんと見つけておかないと、また起こります」

待機児童対策の「押し込めばいい」保育から質の保育へ

小川彩佳キャスター:
保育施設はブラックボックスのようなもので、親がずっと様子を確認することはできませんし、子どもたちもうまく声を上げることができません。

ほとんどの保育施設は子どもたちに真摯に、懸命に向き合っていると思いますが、こうしたことが起きた際に適切な対処がされないと保育全体の不信にも繋がりかねません。非常に深刻な問題だと思います。

調査報道部 樫田小夜 記者:
今回の事案を見ても、保護者自ら証拠を集めなければならないこと自体が大きな課題だと感じています。

今回は認定こども園での虐待ということですが、認定こども園法では「立入検査の権限は犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない」と定められています。虐待の調査は問題を起こした園主体で、行政が踏み込みにくい状況があるように思います。

小川キャスター:
保護者が証拠集めをして訴えたことでようやく行政が動き出すという形になりましたが、どう見ていますか。

小説家 真山仁さん:
長い間、待機児童解消が国のミッションでしたが、本来、地方自治体が地域に応じてやるべきことなので、私はずっと「国がやることなのかな」と思っていました。国から言われると、地域としては何が何でも(待機児童を)減らさないといけない、良い保育よりも、とにかく子どもを押し込まなくてはというプレッシャーを感じていると思います。

一番大切な“質の保育”から、“量の保育”に、「とにかく全部押し込めばいい」という状況になってしまっているように感じます。見た人は「ひどい保育士だ」と思うかもしれませんが、それはすごく短絡的な発想で、ものすごくいろいろな原因があってこういう状況が生じています。一体、保育とは何なのかというところをもう1回見つめ直さないといけません。

本来こういうことこそ選挙でちゃんとやってほしいです。「待機児童がなくなったから日本人は幸せになります、以上終わり。我々はこれを成果と言います」というのは血の通った政治とは思えません。

調査報道部 樫田記者:
今回の問題の実態を調べることよりも、あすの保育、今の保育環境をいかに維持していくかということを園も市もすごく重視していると感じました。ただ、今回の14時間の音声を調べれば調べるほど深刻さをすごく実感します。クラスの保護者は、今も今回の問題が虐待と判断されたことさえも知らされていない状況です。

保育園で幼い子どもが自分の意思で被害を訴えるというのは、本当に難しいと思います。大人が実態に向き合って原因を徹底的に究明しないと、市や園が重視している「目の前の保育」はできるわけがないと感じています

小川キャスター:
保育の受け皿を守ることで子どもたちが守れなくなるということはあってはなりません。

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<プロフィール>
真山仁さん
小説家 「ハゲタカ」「ロッキード」など
最新著書に「疑う力」

樫田小夜 記者
news23記者・編集長 ジャニーズ性加害問題などを取材

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