「闇バイト」をきっかけとした強盗事件がこの連休中にも相次ぎました。一方、一連の強盗事件をめぐり、「回収役」や「リクルーター役」など「実行役」以外の逮捕者も出てきています。
【写真を見る】連休中も相次いだ強盗「実行役」以外の逮捕者も 捜査進展で連続強盗は収束?今後の捜査は【Nスタ解説】
「実態を理解している人物が昇格している可能性」“リクルーター役”の役割は
良原安美キャスター:
関東で相次ぐ強盗事件で捜査に進展がありました。
10月1日に埼玉県所沢市で起きた強盗傷害事件で、すでに実行役は逮捕されていましたが、実行役を勧誘した「リクルーター役」として、11月2日に名倉優也容疑者(31)が逮捕されました。
埼玉県で起きた事件ですが、名倉容疑者は愛知県知多市の会社員でした。実行犯にメッセージを送って事件を起こさせた疑いが持たれています。
この「リクルーター」の役割についてです。
元埼玉県警捜査一課の佐々木成三氏によると、首謀者、指示役、リクルーター役、実行役の順にピラミッドとなっていて、「リクルーター役」は実行役などの様々な役割を集めて、指示役とつなげる役割だということです。
さらに、元埼玉県警捜査一課の佐々木成三氏は「実行役として、ある程度実績を積み、実態を理解している人がリクルーター役に昇格している可能性もある」と話しています。
実際に、今回逮捕された名倉容疑者は「ホワイト案件」「物品運び。リスクはない」などとメッセージを送り、実行役を勧誘、そして3人を指示役に紹介しました。
その後、実行役の1人が「強盗するように言われた」と勧誘の内容と違うという趣旨の内容のメッセージを送りましたが、それに対し名倉容疑者は強盗を止めることなく、後押ししていたということです。
進化する犯罪形態 未然に防ぐための「おとり捜査」は可能か
ホラン千秋キャスター:
実行役が“昇格”という形で、リクルーター役が増えているとすると、組織としては大きくなっているということなのでしょうか。
元埼玉県警捜査一課 佐々木成三さん:
リクルーター役が捕まるとすべて指示役につながるのでは、と思われがちですが、名倉容疑者も「闇バイトに応募した」と言っている以上は、指示役とのやりとりもすべて「Signal」などのメッセンジャーアプリを使っている可能性もあると思います。
ただ、このリクルーターというのは、簡単にはできない仕事だと思うんです。
実行役から「どういう仕事ですか?」というやり取りにおいて、「こういう仕事ですよ」と伝え、現場に行かせる仕事です。何もわからないとできないと思うので、何かしらの加担はしているのではと感じています。
井上貴博キャスター:
これだけ犯行の形態が進化している中で、未然に防ぐことはできないのでしょうか。
インターネットやSNSで、実行犯を募りますよね。日本では、おとり捜査に関して、犯罪を誘発する、犯罪を作り出すという意味から認められていないと思います。法律の問題はありますが、もう少し犯罪の形態に合わせて、おとり捜査を一部認めていくなどはいかがでしょうか。
元埼玉県警捜査一課 佐々木成三さん:
「これは何のためのおとり捜査なのか」が必要だと思います。厳格に決めなければいけません。
例えば、これが“指示役を捕まえるまで”のおとり捜査となると、警察官が何度か罪を重ねなければいけない。つまり、免許証など公文書を偽造しなければいけない、強盗予備もしなければいけない。
ただ、こういった時代においては、犯罪の抑止のためであれば効果的なおとり捜査ができるとは思います。例えば、“実行犯が集まった時点”で、すべて捕まえることに関しては、おとり捜査は有効だと思います。そこは厳格に決めなければいけない部分もあると思います。
「回収役」も逮捕 闇バイトは「セクション分けて募集している」
良原キャスター:
さらに、別の強盗事件でも動きがありました。
神奈川県横浜市青葉区で起きた強盗殺人事件でも、実行役ではなく「回収役」が新たに逮捕されています。2日、奪われた現金の「回収役」をしたとして、木本未穂容疑者(30)が逮捕されました。
すでに強盗殺人の疑いで逮捕されていた宝田真月容疑者が、都内の公園に奪った現金を置いた後、木本容疑者が現金を回収したとみられていて、捜査が進んでいます。
ホランキャスター:
様々な役割がありすぎて、どこまでの広がりを持っているのか、不安を増長させるような気がします。
元埼玉県警捜査一課 佐々木成三さん:
今はいろんなセクションを闇バイトで募集しているのは明らかです。「回収役」が回収した現金を「運び役」が運ぶ。すべてのセクションに分けて、闇バイトを雇っています。
やはり捜査をかく乱する目的で、いろんなセクションで闇バイトを募集しているのが明らかになっています。
ホランキャスター:
もしかしたら、「ただ運んでいるだけ」と思っている人も、中にはいるかもしれない。
元埼玉県警捜査一課 佐々木成三さん:
ここは罪の認識がなくて、「ただ、物を運ぶだけの仕事ですよ」と指示役に言われても、指示役が捕まると「運び役」も逮捕されているのが現状です。「知らなかった」では済まないような状況です。
井上キャスター:
そう考えると、トカゲの尻尾切りができる構造、すべてを切り離せることができる状態になっていると思いますが、警察は本丸のどの部分までつかめているのでしょうか。
元埼玉県警捜査一課 佐々木成三さん:
まず多くの実行犯を捕まえないと、組織の解明ができないと思います。ただ、今度はリクルーターが捕まって、この組織がどのようにリクルートをしているのかがわかる上では、重要なポイントだと思います。
ただ、どこから指示役につながる糸口があるのかはわからない。例えば、実行犯が持っているかもしれません。犯罪に加担した者を全員捕まえた上で、糸口を1個でも2個でもつかみたいのが警察の考えだと思います。
井上キャスター:
糸口は捕まえてみないとわからない、もしかすると向こうがミスをしている可能性もあり、携帯電話に何かが残されていることもあると思います。そのあたりも向こうは考えながらやっているわけですね。
元埼玉県警捜査一課 佐々木成三さん:
今回、リクルーター役の容疑者は闇バイトで応募したということもあり、今まで逮捕されたものとして、唯一、実行犯として現場に行ってないんです。
すべてがスマートフォンの中でやり取りをしていたものを、警察は犯人と特定して逮捕していますが、かなり大きく緻密な捜査を行っていたのは明らかです。
リクルーターをさらに何人も捕まえるということが、闇バイトを止める上で、とても重要な捜査になると思います。
ホランキャスター:
佐々木さんの見立てでは、リクルーター役の上に、指示役、首謀者がいるということですが、もしかしたらもっと上もいるかもしれないですよね。
元埼玉県警捜査一課 佐々木成三さん:
そういったことは十分考えられますし、リクルーター役が実行役と同様のポジションにいる可能性もあります。このピラミッドが複数あるかもしれないということです。
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<プロフィール>
佐々木成三さん
埼玉県警本部捜査第一課に10年間在籍
現役時代はサイバー捜査の導入に着手