先生を守れ!「部活動改革」で残業50%減 “顧問減”やリモート指導で先生にも「ゆとり」【Nスタ解説】
「学校の先生の働き方」についてです。国の定める残業時間の上限「45時間」ですが、実に中学校の先生の42.5%が、その時間を超えた残業を強いられています。
そんな中、ある改革をした学校を取材しました。
教員の労働時間削減「部活動改革」
日比麻音子キャスター:
教員の仕事は授業や部活以外にも、翌日の授業準備や採点、生徒・保護者への対応などもあり、幅広いです。
TBS報道局 社会部 川上敬二郎 記者:
日比キャスターも教員免許を持っていますよね。
日比キャスター:
母校には、実習でもお世話になりました。
授業の合間の5分~10分という短い時間でもずっと授業の準備をしていました。家に帰っても授業の準備が必要なので、平日は「自分の時間」がほとんどないのだなと感じました。
TBS報道局 社会部 川上記者:
いじめや不登校なども増えていますので、生徒や保護者への対応にも時間がかかるということがあります。
そのような中で、富山・朝日町は2021年から「部活動改革」を始めました。
「部活動」を減らして「地域クラブ」を増やすことで、教員による顧問から外部指導者へシフトして、教員の負担を軽減していこうという考えです。
日比キャスター:
外部指導者の場合、活動中の生徒たちの安全管理はどのようにしているのでしょうか?
TBS報道局 社会部 川上記者:
部活動(教員顧問)の場合、学校が責任を持っているので、けが人などが発生した場合は救急への連絡なども教員が行います。
一方で地域クラブの場合は、外部指導者たちが救急への連絡などを行うことになっていて、すみ分けをしているということです。
南波雅俊キャスター:
私も中学生の頃は地域の野球チームに入っていました。
そこでのコミュニティもできますし、指導力の高い指導者もいたので、それはそれで良いことなのかなと思います。
過労死ライン超えから“残業50%減”
TBS報道局 社会部 川上記者:
取材をした朝日中学校の岩田先生の1週間を見てみます。(※日曜日は休み)
▼2019年度
【部活動がある日】
午前8時〜午後3時40分:授業
~午後6時:部活動
~午後8時:その他業務
【部活動がない日】
午前8時〜午後3時40分:授業
~午後8時:その他業務
【土曜日】
午前9時~午後0時:部活動
▼“改革”後の現在
午前8時〜午後3時40分:授業
~午後6時半:その他業務
改革前、月の残業時間は約90時間で、過労死ラインを超えていました。
現在は、部活動の時間にその他の業務が出来るようになり、少し帰宅時間が早まりました。結果、月の残業時間は約45時間になったといいます。
日比キャスター:
それでもタイトなスケジュールですが、残業は減ったということですね。
「いい生活、いい仕事に繋がっている」部活動改革で変わった教員の「ゆとり」
TBS報道局 社会部 川上記者:
「部活動改革」は、教員の残業を減らす以外にも変化がありました。
朝日中学校の川田彰校長は部活改革が進むにつれて、学校も落ち着いてきたといいます。
朝日中学校 川田彰 校長
「教員同士の関わりや、もちろん情報交換的なものとか、教員にもゆとりが増え、笑顔が増え、温かい雰囲気の校風になっていることは間違いないです」
残業時間が月50時間減った山田智徳先生は、「プライベートが充実しますし、いろんなことを吸収して、それがいい生活、いい仕事に繋がっている」としています。
改革を指導する朝日町の木村博明 教育長は「学校教育の質が上がる。皆さんがWinWinの関係になれる。地域で子どもたちを育てるという視点で取り組んでいくことが必要」だと考えているということです。
「部活動改革」今後の課題は?
日比キャスター:
今後の課題はどう見ていますか?
TBS報道局 社会部 川上記者:
一つは「国からの財政支援」です。指導者への謝金などもありますので、財政的な支援は重要となってきます。
もう一つは、「指導者の質の担保」です。
朝日町の場合は、教員のOBやスポーツ団体を活用していますが、しっかり研修やAEDの訓練なども受けているということです。
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<プロフィール>
川上敬二郎
TBS報道局社会部 文部科学省担当
著書「なぜかいじめに巻き込まれる子どもたち」など