トランプ氏 が“地上攻撃”を示唆…「ベネズエラが麻薬密輸」 背景に“中国の影”も、米国の“攻撃”現実性は?【news23】
トランプ大統領が「地上攻撃」をちらつかせています。その対象は、南米・ベネズエラ。麻薬の密輸対策を理由としてあげていますが、“麻薬運搬船”とみなした船の乗員を殺害した行為をめぐって、アメリカ国内でも批判の声があがっています。
「ベネズエラが麻薬密輸」トランプ氏が“地上攻撃”示唆
トランプ大統領が、関税だけでなく軍事的に圧力をかけている国があります。
アメリカ トランプ大統領
「ベネズエラが麻薬を流している。近く地上攻撃を始める。麻薬ルートも倉庫も製造場所も分かっている」
3日に地上攻撃の可能性をちらつかせた相手が、南米・ベネズエラです。
アメリカとカリブ海を隔てて位置するベネズエラ。この付近の海域でアメリカ軍は9月以降、ベネズエラの犯罪組織の「麻薬運搬船」とみなした船を相次いで攻撃しています。
トランプ大統領
「船を爆破するたびに、2万5000人のアメリカ国民の命が救われる。奴らは、フェンタニルやコカイン、その他の薬物を送り込んできた。フェンタニルは、我々の国家を滅ぼしかねない」
ウォール・ストリート・ジャーナル紙によりますと、ベネズエラが合成麻薬フェンタニルの密輸に関わっている証拠はないものの、隣国・コロンビア産のコカインの輸送ルートとなっているといいます。
麻薬密輸を阻止するため、アメリカ軍はこれまで21回船を攻撃し、82人の乗員を殺害したとしています。
しかし、ある攻撃が問題視されています。
“生存”の乗員殺害 米国でも批判
ワシントン・ポスト紙によりますと、アメリカ軍は9月2日の攻撃の際、生き残って船の残骸にしがみつく乗員2人に、追加の攻撃を行って殺害したといいます。
この再攻撃はヘグセス国防長官が、乗員全員を殺害するよう命じたためだと報じられています。
戦闘能力のない乗員の殺害は「国際法違反」にあたる恐れがあり、アメリカ国内でも批判の声が上がる中、ヘグセス氏は関与を否定しています。
アメリカ ヘグセス国防長官
「司令官が船を沈め脅威を排除するという正しい決断を下した。私は生存者を見ていない。船は燃えていたんだ。爆破の炎と煙で画面では何も見えない」
3日、クリスマスツリーの点灯式に出席したヘグセス氏は。
ヘグセス国防長官
「私たちを守るため平和を…希望をもたらすため戦う人たちを忘れないで下さい。麻薬テロリストは除いて」
この「麻薬テロリスト」とみなした船への攻撃、野党・民主党は合法性を疑問視しています。6人の議員が現役軍人らに「違法な命令に従わないように」と呼びかける動画を公開しました。
野党・民主党の議員
「違法な命令は拒否していいんです」
「違法な命令は拒否してください」
これに対し、トランプ氏は「死刑に処すべき反逆行為」と反発しています。
米国の“地上攻撃” 現実性は?
この強硬姿勢の背景にあるとされるのが、反米左派のベネズエラ・マドゥロ政権です。
上智大学 前嶋和弘教授
「ベネズエラは中国に近い。そして反米政権。ならばベネズエラに対して、圧力をかけてやれというのがトランプ政権。ベネズエラのエネルギー・原油は、アメリカにとってライバルになる。中国にエネルギーを供給するのは、敵に塩を送るようなものだとみている」
豊富な資源を持つ中南米を重要視するアメリカ。自国の安全保障のためにも、中国に近いベネズエラ政権の交代を狙っていると前嶋教授はみています。
アメリカ軍はここ数日、ベネズエラ近くの海や島で訓練を行う動画を公開しています。「地上攻撃」は差し迫っているのでしょうか。
上智大学 前嶋和弘教授
「アメリカ人の血は流したくないので、プレッシャーをかけて、音をあげるのを待っている段階。ベネズエラはいま民兵を集めている。何かアメリカに刺激されて、ベネズエラ側も一線を越えてしまったら、アメリカ側としてやりかえすことになる」
仮に“地上攻撃”に踏み切ると
小川彩佳キャスター:
「麻薬の流入を断つ」という理由だそうですが、仮に地上攻撃に踏み切ってしまった場合、「力の強い国は、国際法を無視して何をしてもいい」という状態が、さらに強固なものになりかねないと思います。斎藤さんはいかがですか。
東京大学准教授 斎藤幸平さん:
トランプ大統領がやると目立ちますが、アメリカが南米に介入するのは、70年代のチリのときも含めてずっとやってきたことです。今回も石油などがありますし、そうやって資源を略奪するのは、アメリカの常套手段なわけですよね。
こういうことをやりながら、どうやってロシアを非難するのか。
イスラエルのときもそうですが、ダブルスタンダードが、世界の分断をますます加速させています。これを繰り返していけば、ベネズエラだけではなく、コロンビアのペトロ大統領やブラジルのルーラ大統領であったり、再び南米は社会主義化しているわけです。
そのため、中国とも近づいていくことは当然で、何らかの形でアメリカの帝国主義が報いを受ける日が来るのではないかと考えています。
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<プロフィール>
斎藤幸平さん
東京大学准教授 専門は経済・社会思想
著書『人新世の「資本論」』