円安止まらず“円弱”に…積極財政?規律財政?衆議院選挙で問われる日本財政の行方【Nスタ解説】
いま、日本から人やカネが流出し始めています。“脱ニッポン”に政治はどう向き合う必要があるのでしょうか。
なぜ円安は続く?
高柳光希キャスター:
円安水準が続いています。そもそも、なぜここまで円安状態が続いているのでしょうか。
TBS報道局経済部 日銀/金融担当 出野陽佳 記者:
理由は大きく2つあります。
まず1つは、ドルに比べて「低金利」ということです。海外が利上げをしている間も、日本は低金利を維持してきた結果、より高い金利を求めてドルが買われて円安が定着してしまっています。
2つ目は、GoogleやNetflixといった非常に身近な海外の巨大IT企業のサービスを日々利用することによって、円が外に流れていってしまう要因にもなっています。
高柳キャスター:
各国通貨の価値を2020年の1月を100とした場合、2025年12月時点で、7割ほどにまで落ち込んでいます。
国際情報誌「フォーサイト」元編集長 堤伸輔さん:
日本はそもそも、昭和の頃から円を強くしようとする政策をほぼ一度も行ってきませんでした。もちろん輸出産業が中心で、例えば自動車やエレクトロニクスで稼ぐ時代は良かったのですが、やはり今は産業も多様化していて、それらの産業だけで日本が持つわけではありません。
一方でエネルギー自給率は15%、食料自給率は38%のように、海外からたくさんのエネルギーや食料を買わなければいけない。当然、円を売ってドルを買って払うわけですから、結局円が安くなります。
こういった状況の中で、政策の大幅な転換をどこかでしなければならなかったけれども、してきませんでした。
どうしても日本人はドルとだけ比べてしまいますが、インドネシアやベトナムの他の通貨に対しても、日本は10〜20%、あるいはもっと円が安くなり、弱くなっているということをもう1度考えた方がいいなと思います。
「積極財政」「財政規律」2つのスタンス
高柳キャスター:
とどまることを知らない“円弱状態”ですが、更なる要素として挙げられるのが財政悪化の懸念です。
国の財政が借金頼み、つまり国債頼みになると円の価値がさらに下がる恐れがあります。これをめぐり、「積極財政」「財政規律」という2つのスタンスがあります。
TBS報道局経済部 出野 記者:
「積極財政」は、借金をしてでも景気を良くしたり国民生活を支えるために、国が積極的にお金を使おうという考え方です。
対照的に「財政規律」は、家計で例えるならば、「月の収入でその月の出費を賄おう」という考え方。できるだけ借金に頼らず、健全な財政運営をやっていこうとするのが「財政規律」です。
積極?規律? 選挙に向けて各党の立場は
高柳キャスター:
各党の考え方を見ていきます。
【積極財政or財政規律】TBSアンケートより
自民:「責任ある積極財政」を進める
維新:「積極財政」のための財源を改革で生み出す
中道:プライマリーバランス 黒字化目標は堅持
国民:財政健全化目標を見直し 積極財政など
共産:税制は応能負担の原則を貫く
れいわ:必要であれば国債発行を活用する「積極財政」
参政:大規模な積極財政が必要
ゆうこく:積極財政で経済成長を優先
保守:インフラ整備などに関しては積極的な投資
社民:赤字国債発行は否定しないが財政規律は重要
みらい:成長投資などのため一定程度国債発行やむを得ず
全体的に、「積極財政」という言葉が目立ちます。
TBS報道局経済部 出野 記者:
もし「積極財政」が、選挙後も続くことになった場合は、財源を積極的に確保するという責任が伴うはずです。
各党が掲げている「積極財政」という言葉の裏に、そのような姿勢が欠けているのであれば、この先も財政悪化の懸念はついて回ることになり、更なる円安を誘うことも懸念されます。
「日本経済は株も高いし大丈夫ではないか」という見方もあるかもしれませんが、野村総研エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は、「現在の『円安・債券安・株高』は長くは続かない。『円安・債券安・株安』になると、危機モードが強まりトラスショックに近づく」と、厳しく指摘しています。
重視すべきは「責任」ある積極財政か
井上貴博キャスター:
経済は非常に複雑で一筋縄ではいかないと思いますが、バランスが非常に重要だと感じています。
高市総理がよく話す「責任ある積極財政」。しかし、責任を果たせていないとマーケットが見ているため円安が加速しているわけです。
野党は、「積極財政」ばかりになっています。選挙に勝つためには、ポピュリズムが必要だということは分かります。また、消費税減税を掲げないと、今は勝ち目がないのだろうということも何となく分かります。
円安を是正することこそが、物価高対策に繋がるという部分の議論がストンと抜け落ちてしまっていて、株高もいいですが、議論がそういう部分にいきすぎているのではないかという危うさを感じます。
国際情報誌「フォーサイト」元編集長 堤伸輔さん:
日本が輸入で食品やエネルギーを買っている限り、ますます物価は上がるに決まっています。
さらに円安が進むと、「オーストラリアに働きに行かざるを得なかった」という若い方のように、どんどん日本から出て外で稼ぐようになるか。
留学して、外国で高度な知見を身につけて帰ってこようとしても、とある大学の学長によると、アメリカに留学しようとしても1年間で500〜1000万のお金がかかるので、専門課程の学生は留学に行けない。
日本が将来維持していけるのか。目先の選挙に勝つためだけに、積極財政と言っていますが、本当は「責任」ある積極財政ということに重点が置かれるべきです。
外国のメディアや投資家は、実は「責任」という方に目を向けていて、「積極財政」の方にはあまり関心を示していないと思います。
井上キャスター:
「日本の失われた30年と違うことをしなければいけないから積極財政」という理論も分かります。やはり「積極財政」に付随する「責任ある財源」を、どのように説得力を持って各党が主張しているのかということを、しっかりと見ていく必要があると改めて感じています。
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<プロフィール>
出野陽佳
TBS報道局経済部 日銀/金融担当
海外旅行を計画も円安に戦々恐々
堤伸輔さん
国際情報誌「フォーサイト」元編集長
BS-TBS「報道1930」ニュース解説