「未来に向かってつなぐ」熊本地震から10年…被災した熊本城の復旧完了は「2052年度」技術の伝承どうする?【news23】
最大震度7の揺れを2度観測した熊本地震の本震から10年。甚大な被害を受けた熊本城では、崩れた石垣の復旧はわずか7%と、いまも道半ばです。未来へつなぐ復興の最前線を取材しました。
【写真を見る】母親「伝えていかないと」娘「生んでくれてありがとう」
熊本地震から10年 追悼式「娘に会いたくてしょうがない」
4月16日。熊本を2度目の震度7の揺れが襲った「本震」から10年。熊本県と全ての市町村が初めて合同で追悼式を行いました。
親族を亡くした男性
「前震でだいぶ(建物が)傷んでいたので、避難してくれれば良かったけど、思い出がいっぱいある」
父親を亡くした女性
「元気で頑張っているよと伝えたいけど。私はもっと父と話したかった。すごく後悔している」
熊本地震では、4万3000戸以上の建物が全壊または半壊(熊本県内)。関連死を含めて278人が亡くなりました(熊本県・大分県)。
追悼式には、当時4歳だった娘を亡くした女性も参列しました。
娘・花梨ちゃんを亡くす 宮﨑さくらさん
「きょうも一緒に来ました。幼稚園の格好で連れてきた。とにかく今は会いたい、花梨に会いたい。会いたくてしょうがない」
16日、街のシンボルである熊本城は、多くの観光客で賑っていました。 家族で訪れていた女の子。本震の直前に生まれ、今日が10歳の誕生日だといいます。
祖母
「部屋に入って抱っこしようと思ったら本震がきた」
母親
「命って大切だなってことを(娘が)地震を体験していないからこそ、今後伝えていかないといけないと思っている」
娘
「生んでくれてありがとう」
熊本城の石垣 積みなおし終了わずか7% 復旧を阻むものは?
熊本城も強い揺れに見舞われました。国の重要文化財の櫓が倒壊するなど被害は甚大でした。なかでも、深刻だったのは石垣で、城全体の3分の1が崩れました。
復旧現場は今どうなっているのか。
中村石材工業・石工世話役 北園和憲さん
「ここが手前の石垣を解体した石を仮置きしている状態になる」
地震から10年。被災した石垣のうち積み直しが終わったのは、わずか7%です。
復旧を阻んでいるのが…
中村石材工業・石工世話役 北園和憲さん
「これ墨汁で番号書いている。562面の100番という石がこれ」
Q.全部1つ1つ番号を?
中村石材工業・石工世話役 北園和憲さん
「番号をうって管理するような形。今後は業者が入って石一つずつ記録をとっていく」
それぞれの石に番号を付け、特徴を整理。崩落前の石垣の写真と照合し、元の位置に戻す地道な作業を続けています。
復旧の最前線にいるのは、地元・熊本市出身の男性。2024年、施工業者に入り、作業に携わっています。
中村石材工業・石工 東龍弦さん(25)
「(地震)当時はまったくそんなことも考えていなかった。携われてすごくうれしい」
共に復旧にあたる先輩は…
中村石材工業・石工世話役 北園和憲さん
「彼らが一人前になって熊本城復旧に携わってくれたら、僕も嬉しいし会社としても嬉しい。復興しながら、そういう子らの成長を見届けるのがいまの僕のやりがい」
地震直後、当時の映像を見ると、一列の石垣だけが残り、倒壊寸前の櫓を支えています。この姿から「奇跡の一本石垣」と呼ばれるようになりました。
10年が経ち、石垣の積み直しは完了。2028年度の完全復旧に向けて今後、建造物の再建に入ります。
石垣をよく見ると、間に“丸い石”が。
熊本城総合事務所・田崎昌平さん
「あそこについているのが、この受圧板。築石(表面の石)が落ちないようにするのが受圧板の効果」
震度7の揺れにも耐えられる石垣を目指しています。熊本城全体の復旧完了予定は、2052年度。あと25年以上あります。
熊本城総合事務所・田崎昌平さん
「我々職員だけでなく、働いている石工さんも一代では終わらない長さになってくる。この時間は未来に向かってつなぐ大事な貴重な時間。いま一生懸命頑張っている」
熊本城の復旧完了「2052年度」
小川彩佳キャスター:
一つ一つ、一歩一歩復旧復興は進んでいる中で、城の完全復旧は2052年度だということです。
東京大学 斎藤幸平 准教授:
まだ7%だというのは驚きました。
加藤清正が、熊本城を約7年で建てているらしいので、これをきちんとと元の形に戻していく、文化財として守っていくのは、本当に大変な作業なのだとしみじみ感じました。
25年と考えると、これから人口も減って、石膏や左官の職人の方の数も減り、技術継承も難しくなる中で、日本もだんだん余裕がなくなるでしょう。
これを完成させて、次の100年守っていけるのかというところは、少し心配になります。
こうした伝統技術をしっかり守っていく、いい機会になるといいなと思います。
小川彩佳キャスター:
奇しくもこの厳しい現状によって技術の重みに光が当たっています。この光を何とか繋いでいってほしいです。
東京大学 斎藤幸平 准教授:
これが「豊かさ」だというふうになっていってほしいですよね。
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<プロフィール>
斎藤幸平さん
東京大学准教授専門は経済・社会思想
新著にベストセラーの続編『人新世の「黙示録」』