大企業で相次ぐ「黒字リストラ」その先にある“理想と現実”…「100社応募も不採用」57歳の現実 早期退職はチャンスかリスクか【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-06-12 13:32

「リストラ」といえば、赤字の時に行われるイメージですが、実は今、黒字、つまり儲かっているのにリストラに踏み切る企業が増えているんです。実際に希望退職をした人、その理想と現実を取材しました。

【画像でみる】黒字リストラの理由

大企業で相次ぐ「黒字リストラ」

この春、一つの“決断”をした人がいます。

岡田勝男さん(57・仮名)。勝負服に身を包みこの日、静岡県から上京しました。その目的は…

岡田勝男さん
「再就職先を探しているので、エージェントの方と打ち合わせがある」

岡田さんは大手企業で34年間勤務。営業一筋のキャリアでした。

しかし2026年3月、定年を待たず会社を早期退職。ただ、会社は業績不振ではありませんでした。

岡田勝男さん
「実質黒字リストラだと私はとらえています」

黒字リストラとは、業績が黒字なのにリストラをすること。

2025年度はパナソニックグループが1万人の早期退職を募集。三菱電機は4700人が応募しました。

2025年度、早期退職を募集した企業の約7割が、直近の決算で黒字だったといいます。

100社近く応募も不採用

なぜ、赤字ではないのにリストラをするのでしょうか?

東京商工リサーチ 本間浩介さん
「中高年の方が比較的、構成比が高いので、人員の年齢の適正化を図っていく動きが増えてきている」

企業ではバブル期やその後に大量採用した50代から60代の幹部が多い一方で、中堅や若手は少ない傾向にあります。

体力があるうちにリストラをすることで、企業の若返りを図る狙いです。

岡田勝男さん(57・仮名)
「60歳になった時に、自分の立ち位置・居場所があるかなと考えたときに、想像がつかなかった」

黒字リストラに応募した岡田さん。不安はありましたが、2年分の給料が上乗せされることが後押しとなりました。

ただ、現実は甘くはありません。

企業からのメール
「ご期待に添えない結果になりました」

岡田勝男さん
「100社近くは応募したけど、まだ採用にはいたっていない。面接までもほとんどいっていない。書類というか最初のエントリーで不採用という状況」

シニア再就職の現実「すぐに結果を出せないなら厳しい」

すがる思いで訪ねたのが、シニア専門に転職支援をする会社でした。

転職エージェント
「今の状況を伺ってもいいですか?」

大手企業を早期退職 岡田勝男さん(57・仮名)
「2社ほど中小企業向けの求人サイトから社長まで面談にいったが、費用対効果や年齢的なことや業界の知見ということで不採用になった」

これまでの実績をアピールしますが、突きつけられたのは厳しい現実でした。

転職エージェント
「転職は甘くはなくて。中小企業は1か月目で契約が取れるかとか、3か月以内に結果が出せているのかどうかを見ている。そこで結果が出せなかったら無理だよねという感じ。そこの緊張感は持っていただいた方がいい」

転職エージェント
「逆の立場で社長になった気持ちで、自分を想像してもらうと、とるかな?」

岡田勝男さん
「取るかなと思ったら…」

転職エージェント
「同じ値段で20代後半のちょっと仕事ができる子がいた時に、どっちをとりますか?」

岡田勝男さん 
「必然的に20代をとるでしょうね…」

岡田勝男さん
「シニアの再就職の現実は、『想像以上に厳しいんだな』と理解することができた」
「ある程度会社の看板というところに、働き方や仕事、生活、給与含めて、守られていたというのを改めて実感した」

「何が出来るのか一言で答えられないのなら要注意」

これまで3000人以上のシニア人材と面談してきたという「BEYOND AGE」市原大和代表取締役。最近、“ある変化”が起きているといいます。

BEYOND AGE 市原大和 代表取締役
「50代とか40代後半が結構増えてきていて」

NTTドコモやソフトバンクなど、大手企業に勤める人からの転職相談が増えているといいます。

そして苦戦している人には、ある“共通点”が…

BEYOND AGE 市原大和 代表取締役
「大手企業出身の方は、実力以上に高い給料をもらっているケースが多く、それ(高い給料)が自分の実力だと思ってしまうケースが多い」

再就職先は中小企業になりがちですが…

BEYOND AGE 市原大和 代表取締役
「『部下に任せてたから俺あんまり手を動かせないんだよね』という方は、中小企業で働くのはけっこう難しそう」
「『何ができるの』と言われた時に、一言で答えられない方は要注意」

退職金上乗せでセカンドキャリアにチャレンジも

藤森祥平キャスター:
なかなか厳しいですね。

小川彩佳キャスター:
ちょっとお腹がキリキリしてくるようなVTRでしたね。

藤森キャスター:
皆さんが、このようなケースではないと思いますけど、でもこういう現実があるんだなと。

小川キャスター:
VTRの中で転職活動をされていた岡田勝男さんは、その後どうなったのでしょうか?

報道局経済部 岩井宏暁 記者:
岡田さんは、その後仕事が見つかり、今は地元・静岡の会計事務所で働いています。リスキリングをしながら、独立に向けて引き続き活動を続けているということです。

藤森キャスター:
「黒字リストラ」を行っている企業が今増えているということですが、企業の狙いとしては、中高年が多い年齢構成を整えたい。

その他にも理由があり、産業構造が今変わってきています。例えば、家電からAIや、自動車もEVや自動運転などに変わっていくなかで、新しい技術を持つ人材を確保したい。

AIが普及しているため、業務全体の見直しをすることで人員整理も行いたいということです。

教育経済学者 中室牧子さん:
「黒字リストラ」の特徴は、経営が厳しいということではなく、将来の競争力を維持したいという企業の思惑があります。

日本の場合、人口が減少しているので、需要は減少していくでしょう。AIの登場により、業務の効率化も図られるので、そういったことを考えると、今のうちにやるべきことをやっておこうということなんだと思います。

これまでの技術進歩は、どちらかといえばブルーワーカーの人たちに影響が大きかったのですが、生成AIは違います。ホワイトカラーを含めて、かなり広い業種に影響があると思います。年齢層も、必ずしも中高年だけに影響があるというふうには言えないかもしれません。

藤森キャスター:
そうなると人の移動が活発になる可能性があるわけですよね。

パナソニックグループは2025年に1万人の早期希望退職者を募り、応募者は1万2000人になりました。なぜこんなに多いのでしょうか。

岩井宏暁 記者:
やはり退職者にとってもメリットが大きいということが言えると思います。

企業も黒字なので、退職金を上乗せすることができます。とある企業では退職金に加え、5~6000万円ほどもらっている社員もいたということです。

そのため、セカンドキャリアを考えているのであれば、それを元手に、例えば独立したり、次のステップに比較的安心してチャレンジできるところが一つのメリットかなと思います。

小川キャスター:
とはいえトータルで見ると、定年まで働くよりも収入は減ってしまうという方のほうが多いのではないでしょうか。

岩井宏暁 記者:
おっしゃる通り、何もしなければ損をするという考え方もあります。今人生100年時代と言われているなかで、定年後もやはり働かなきゃいけない、セカンドキャリアを考えた時に、どのタイミングで自分は次のステップに行くのかということを常に考えなければいけません。

そのような時に、会社としては支援をするというところで、結構メリットはあるというふうに思われています。

「AIができても人間に任せたい仕事」とは

小川キャスター:
支援の形というのは、様々あるのでしょうか。

岩井宏暁 記者:
例えば、「マツダ」では、退職金の上乗せ、再就職支援、引っ越し支援などがあります。

ただ、希望者全員が辞められるわけではなく、しっかり会社内で面接をして、この方は「マツダ」で培った技術を世の中にちゃんと還元できるのかということをしっかり考えた上で、この人は本当に早期退職していいのかを見極めた上で、辞めていくという例もあるそうです。

実際に取材した人のなかに、ずっと夢だったお好み焼き店を開業し、地元の広島に還元したいという夢を持っている方がいました。

少し早めに退職してチャレンジできるというのは、とても魅力的な制度という見方もあります。

小川キャスター:
企業側が背中を押してくれるパターンもあるということですね。

中室さん:
必ずしもリスクばかりではないということなのかもしれません。経済学の研究は、新しい技術が出てきたときに、仕事がどうなるのかということを、いろいろ研究しています。タスク、すなわち仕事は代替されるかもしれないけれど、オキュペーション、職業は消されない、減らないっていうことが分かっています。

例えば、1980年代に銀行のATMが現れたとき、「銀行員の仕事はなくなる」という風に言われました。結果、銀行の支店数が増えることによって、銀行全体の雇用量は減らなかったということが分かっています。

銀行員という職業は消えなかったけれど、銀行の中でのタスクは変わったということです。こういうことは、これから起きてくるのではないかと思っています。

最近聞いた面白いキーワードがあるのですが、「ノスタルジックジョブ」という言葉です。「AIができても人間に任せたい仕事」という意味です。

例えば、看護師、学校の先生、裁判官もそうじゃないでしょうか。AIに判断されて、「あなたの罪はこれです」と判断されると、ちょっと心配な気持ちになりますよね。

やはり、人間にやってほしい仕事があるわけですが、私はこういうのは結構、中高年の人に強みがあるのではないかと思います。「何か話を聞いてほしい。相談したい」みたいな時に、やはり年配の人にはちょっと安心できることがありますよね。

新しい仕事が増えていくという面も、私はあるのではないかと思います。

小川キャスター:
人生100年時代ですから、足元を見つめ直し、経験値も見つめ直すことも大事かもしれません。

==========
<プロフィール>
中室牧子さん
教育経済学者 教育をデータで分析
著書「科学的根拠で子育て」

岩井宏暁
報道局経済部 自動車・重工・電機担当
国家資格「キャリアコンサルタント」所持

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