一言声をかけてもらったことに感謝することを「一言芳恩(いちごんほうおん)」と表現します。
これはちょっとしたことでも声をかけてくれたことに恩義を感じる際に使用されます。
しかし、この言葉はどのようにして生まれたのでしょうか?
今回はそれら「一言芳恩」という四字熟語について解説します。
特にここではその意味と合わせて成り立ちや類義語についても説明します。
「一言芳恩」とは
まずは「一言芳恩」がどのような言葉なのかを見ていきましょう。
「一言芳恩」の意味
「一言芳恩」とは一言声をかけてもらったことに対して感謝することを言います。
実際に些細な言葉でも声をかけてもらえることはありがたいです。
中にはそれによって救われるということもあるかもしれません。
転じて「一言芳恩」はそれら声をかけてくれた人を主人として仰ぐことも意味します。
「一言」「芳恩」の読み方は?
「一言」は普通に読むと「ひとこと」と読むのが普通です。
しかし、これら「一言芳恩」の「一言」は「いちごん」と読みます。
そこは「いちげん」でもないので注意が必要と言えるでしょう。
ちなみに「芳恩」は「ほうおん」とそのまま読むことができるので、読み方については併せて覚えておきましょう。
「一言芳恩」の成り立ち
では「一言芳恩」はどこから来た言葉なのでしょうか?
ここではそれら「一言芳恩」の成り立ちをまとめます。
「一言」があらわすもの
「一言」は些細な言葉を意味する言葉です。
ただ、これは一文に限定するものではありません。
あくまでもここではちょっとした言葉という意味を持ちます。
そこは解釈に誤解がないよう注意したいところです。
「芳恩」が指すもの
「芳恩」は他人から受けた恩に感謝することを意味します。
単に感謝するというよりは敬意を払うという感覚に近いです。
事実、相手に従い仕えるような意味も含まれています。
「一言芳恩」の類義語
最後に「一言芳恩」の類義語についても見ておきましょう。
「一言芳恩」の類義語には「一宿一飯」や「一飯千金」「報恩謝徳」などがあります。
一宿一飯
「一宿一飯」とは泊まるところや食べるものなどのお世話になることを言います。
これらは「一宿一飯の恩義」のようにちょっとしたことでも恩を忘れてはならないという教え・戒めの意味が込められています。
例えば、旅先では見知らぬ人のお世話になることもあるでしょう。
その際、親切にしてもらったことに対して「一宿一飯の恩義を忘れない」というように使用されます。
ただ、これらはもともと博徒と呼ばれる博打打ちの間で使用されていた言葉だったそうです。
昔は博徒の間で旅の途中で助けてもらうことを生涯の恩義とするような風習があったのだとか。
そこから庶民の間でも広まったのが「一宿一飯」と言えます。
それら仁義を貫くという点が「一言芳恩」と重なります。
一飯千金
「一飯千金」とは僅かな恵みに対しても厚い恩返しをすることを言います。
これは一膳の食事が千金に値するところから来ています。
実際に僅かな食事であっても、それを恵んでくれるというのはありがたいものです。
なお、この言葉は「史記-淮陰侯伝」に見える話から来ています。
その昔、古代中国の時代に韓信という貧しい人物がいました。
ある日、彼は川で布をさらしていた老婆から数十日分の食事を恵まれたそうです。
それは彼にとって命を救われたも同義でした。
その後、韓信は楚王と呼ばれるまでに出世し、かつての恩人である老婆に千金を与えて感謝したと言われています。
その故事から来ているのが「一飯千金」とされています。
その逸話も含めて「一言芳恩」に通ずるものがあるのではないでしょうか。
報恩謝徳
「報恩謝徳」とは自分が受けた恩に報いることを言います。
要は相手に対してきちんと恩返しすることの例えです。
この四字熟語は単に恩義に感謝するというよりもそれに報いるという意味が強いです。
その点で「一言芳恩」にも似ている部分があると言えるでしょう。
まとめ
「一言芳恩」は一言かけてくれた声に感謝することを言います。
これは些細な言葉でも一言かけてくれるだけで恩義に値することを意味する四字熟語です。
実際に誰かに声をかけてもらえるというのはありがたいものです。
これは現代にも言えることなので、ぜひ心に留めておきましょう。