凄まじい気配が漂い迫る様子のことを「鬼哭啾啾(きこくしゅうしゅう)」と言います。
これら「鬼哭啾啾」はおどろおどろしい感じが並びますが、そのイメージ通りの意味となっています。
しかし、そもそもこの言葉はどこから来たのでしょうか?
今回はそれら「鬼哭啾啾」という四字熟語について解説します。
ここではその意味はもちろん成り立ちや類義語を説明するので、ぜひ参考にしてみてください。
「鬼哭啾啾」とは
まずは「鬼哭啾啾」の意味について見ていきましょう。
「鬼哭啾啾」の意味
「鬼哭啾啾」とは凄まじい気配が漂い迫りくる様子のことです。
実際に恐ろしい気配が迫っていて凄まじい様相を呈していることを言った四字熟語となります。
これはもともと浮かばれない亡霊の泣き声が恨めしげに響く様子のことを言った言葉だったそうです。
特に悲惨な死に方をした者がしくしくと泣く声の形容として使用されていたのだとか。
それが次第に鬼気迫る気配が迫っていることを言うようになったとされています。
実際に「鬼哭啾啾たる戦場に立つ」などのように使用します。
つまりは形容詞として特定の状況を表現する言葉の1つです。
このように無念の死を遂げた人の怨念が伝わってくることを言う表現なので、ぜひ覚えておきましょう。
「鬼哭」があらわすもの
「鬼哭」は浮かばれない霊魂が大声で泣くことを意味します。
「鬼」はここでは幽霊などの気配のことを表しています。
「哭」は大声をあげて泣くことを指しているのだとか。
つまり成仏できない亡霊のような存在が泣いている様子を言った言葉となるわけです。
「啾啾」が指すもの
「啾啾」は細く尾を引く泣き声のことを意味します。
「啾」は小さな声ですすり泣くことを言った言葉です。
これらは同じ意味の言葉を重ねて意味を強調した熟語です。
実際に聞こえるか聞こえないかわからないような声で鳴くことを言った言葉となります。
「鬼哭啾啾」の由来
では「鬼哭啾啾」はどこから来たのでしょうか?
ここからはそれら「鬼哭啾啾」の成り立ちをまとめます。
詩聖・杜甫の詩「兵車行」が出典とされる
「鬼哭啾啾」は詩聖と称される杜甫の詩「兵車行」から来ていると考えられています。
「兵車行」は七言律詩の一種で反戦の気持ちを歌った詩です。
七言律詩は漢詩体の1つで七言八句からなる近体詩のことを言います。
その詩の中に「新たに亡くなった魂は悶え、古くに亡くなった魂は嘆き叫ぶ。天が曇り雨で湿ると亡霊の泣くような声が聞こえてくる」という内容が書かれているのです。
杜甫はこの詩によって戦争の悲惨さを詩的に訴えたのだとか。
そこから生まれたのが「鬼哭啾啾」となります。
この時代、唐国は最も栄えたが、民衆は戦争に巻き込まれ苦しんでいた
杜甫が「兵車行」を読んだ時代、唐という国は最も栄えたとされています。
しかし、実際は民衆が戦争に巻き込まれて苦しんでいたそうです。
その気持ちを代弁したのが杜甫の「兵車行」だったと言えます。
これは現代にも通ずるようなところがあるかもしれません。
「鬼哭啾啾」の類義語
最後に「鬼哭啾啾」の類義語を見ておきましょう。
陰陰滅滅
「陰陰滅滅」とは気分が暗く気の滅入る様子のことです。
中でも陰気で物寂しいような様子のことを意味します。
主にこれらは暗い雰囲気の表現として使用されます。
「陰陰」は薄暗く物寂しい陰気な様子のことです。
「滅滅」は生気がなくなり暗い様子のことです。
それらどんよりとした様子が「鬼哭啾啾」と重なります。
刀光剣影
「刀光剣影」とは殺気がみなぎっていて今にも戦争が起こりそうな様子のことを言います。
また、激しい殺し合いなど凄惨な様子を意味する言葉でもあります。
これらは刀は光で煌めき、剣の影がちらつくという意味から来ている言葉なのだとか。
実際に「刀光」は刀が光で輝いている様子のことを言います。
また「剣影」は剣が陰でちらつく様子のことを言います。
それら刀や剣による命の応酬を言い例えたところが「鬼哭啾啾」に通ずるのではないでしょうか。
まとめ
「鬼哭啾啾」はただならぬ気配が漂っていることを言います。
特に鬼気迫るような気配が漂っていることを言った表現です。
そこは禍々しい字面に通ずる意味と言えるかもしれません。
これら「鬼哭啾啾」は日常生活ではあまり使用しませんが、覚えておくと役立つかもしれません。