コリコリとした食感をした「たくあん」。
「たくわん」とも呼ばれるこの大根の漬物ですが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。
また、どちらが正しい呼称というのはあるものなのでしょうか。
そこでここでは、「たくあん(たくわん)」がどのような食べ物で、なんと呼ぶのが正しいのかを解説します。
「たくあん(たくわん)」とは?
「たくあん(たくわん)」がどのような食べ物なのかをまずは見ていきましょう。
大根のお漬物
「たくあん(たくわん)」は、大根をぬか床で漬けた漬物です。
天日干しした大根や塩分で脱水した大根を漬け込んで、熟成発酵させることで黄褐色に変化します。
漢字表記は「沢庵」
「たくあん」もしくは「たくわん」の漢字表記は共通しており、「沢庵」となります。
「たくあん(たくわん)」の発祥
梅干しなどに並んで漬物の定番ともいえる「たくあん(たくわん)」。
その発祥について見ていきましょう。
沢庵宗彭が考案
「たくあん(たくわん)」の誕生は、江戸時代に遡るとされています。
考案したとされるのは、江戸時代に活躍した僧侶「沢庵宗彭」。
隠遁して山形県上山市の「春雨庵」にいた際、近隣の住民から差し入れで大量の大根をもらったので漬け込んで保存食にしたのが始まりだとされています。
はじめは名前が付いていなかったとされますが、江戸に戻り東海寺を創建した後、沢庵宗彭を師事していた将軍・徳川家光が気に入ったことで「名前がないなら沢庵漬けと呼ぶことにするように」と命名したとされています。
東海寺では「百本」と呼ぶ
「たくあん(たくわん)」という名前が一般的ではありますが、沢庵宗彭が創建した「東海寺」では初代住職である沢庵宗彭の名前を呼び捨てにするのは無礼という事で「百本」や「百本漬け」と呼ばれています。
これは、大根を干したものを100本漬けるという意味から来たものだとされています。
「たくあん」と「たくわん」の違いは?
「たくあん」であったり「たくわん」と呼ばれ、2つの名称が何故あるのか。
これは日本語の仕組みに理由があります。
「たくわん」は口語
「たくあん」と「たくわん」の違いは、発音である口語か、文字である文語かという点にあります。
文字媒体の時は「たくあん」と表記するのが一般的ですが、会話する時など口に発する際は発音の関係から「たくわん」となることがあるのです。
つまり、「たくわん」は「たくあん」の口語表現だということになります。
「たくわん」を変換しても・・・
文語が「たくわん」なら、「たくわん」と書くのは間違いか、というとそうとも言い切れないようです。
なぜなら、パソコンやスマホの「たくあん」と入力すると沢庵として変換できるのはもちろんですが、「たくわん」と入力しても沢庵と変換できることがあります。
しかし、これは絶対ではありません。
入力変換ソフトによっては変換されない場合もあります。
「たくあん(たくわん)」を使った料理
「たくあん(たくわん)」は、単体でも美味しい漬物ですが、たくあんを使った料理もありますよ。
ここからは、たくあんを用いた料理をいくつかご紹介します。
新香巻
「新香巻」は海苔巻き寿司の一種で、海苔の上に酢飯を乗せて、さらにその上に細切りにしたたくあんを乗せて細巻きにしたもの。
具材は、たくあん以外の漬物になることもあります。
今では江戸前寿司の中で供されることもありますが、もともとは大阪寿司の一種。
上方で人気の食べ方として江戸に入ってきたともされています。
いぶりがっこ
「いぶり漬け」とも呼ばれるいぶりがっこ。
秋田県に伝わる郷土料理で、20日間ほど燻製にした大根を漬けることで完成します。
秋田県では、大根を天日干しする時間が十分取れなかったことから、囲炉裏の煙と熱で燻製にしたものを漬物にしたとされています。
遠州焼き
静岡県で食べられているたくあんを入れたお好み焼きが「遠州焼き」です。
刻んだたくあんの他に、肉類や魚介類を入れて焼きます。
昭和初期に、手軽に調達できる食材であることからお好み焼きにたくあんが入れられるようになったのがはじまりともされます。
サラダパン
サラダパンは、マヨネーズで和えた細切りたくあんを挟んだ総菜パンです。
滋賀県で愛されるローカルフードです。
その歴史は昭和30年代初頭にまで遡るのだとか。
たくあんの枚数
「たくあん(たくわん)」は二切れを1セットとしてで提供されることが多いですが、これは縁起を担ぐ戦国時代や江戸時代になって始まった習慣だと言われています。
一切れだけ出すと「人斬れ」、三切れになると「身斬れ」に通じるのが縁起が悪いとされ、間の二切れとなったのだとか。
まとめ
「たくあん」は「たくわん」の間に違いはなく、どちらも大根をぬか床で漬けた漬物です。
その違いは、文語は「たくあん」で口語だと「たくわん」になるという点にあります。