外国人労働者が働きやすく暮らしやすい日本とは?キャムコムグループがプレスセミナーを開催

2024-01-19 08:00

外国人労働者を日本で一定期間受け入れ、そこで学んだ技術を母国の発展のために活用してもらおうという「技能実習制度」。この制度においては、“低賃金や未払い”、“過酷な労働環境”などのトラブルも起こり、報道でも多く取り上げられ海外からの批判も大きい。それに対し、政府は労働力の確保を目的とした制度「特定技能制度」を創設。この2つの制度を一貫性のある制度に変えていくため、技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有職者会議が行われ、2023年11月30日に最終報告書が公表された。これを受け、技能実習生を中心とした4000人以上の外国人就労者の日本における就業支援や研修、日本語教育などを行なう総合人材サービスを展開するキャムコムグループは、2023年12月21日にプレスセミナー『技能実習制度の解消と新制度について 最終報告書を読み解く』を開催。これまでの技能実習制度の課題や、今後の法改正のポイント、今後の日本企業、特に地方の中小企業に与える影響など、各分野の専門家4名と共に考える座談会を行った。

写真左から、久世氏、宮谷氏、片岡氏、大山氏

同セミナーには、キャムコムグループの海外事業である株式会社キャムテック マネージャーの大山恭広氏と、長年外国人材の採用に携わり、現在コンサルティング事業を行っている株式会社 FIVE GATE 代表取締役 宮谷聡氏、外国人の労務問題の解決を得意とし、特定技能のセミナーの実施や、監理団体・登録支援機関のサポートなどを行っているLinola パートナーズ法律事務所代表 片岡邦弘弁護士、技能実習制度や特定技能制度における外国人材の活用について取材・編集を行っている株式会社ダイヤモンド社 久世和彦氏の4名が登壇した。

はじめに、株式会社キャムテックの大山恭広氏より、技能実習制度の現状と今後の法改正の方向について説明が行われた。

技能実習制度とは?

技能実習制度とは、国際貢献のため、開発途上国等の外国人を日本で一定期間(最長5年間)に限り受け入れ、OJTを通じて技能を移転する制度である(平成5年に制度創設)。技能実習生は、入国直後の講習期間以外は、雇用関係の下、労働関係法令等が適用され、現在全国に約36万人在留。受入れ人数の多い国は、ベトナム、インドネシア、フィリピンと続き(2023年6月末時点)、職種としては、建設関係、食品製造関係、機械・金属関係が多いという(2022年「外国人技能実習機構統計」より)

技能実習制度の問題点

技能実習制度は、人材育成を通じた国際貢献を目的としているにも関わらず、その実態としては安い労働力として過酷な労働環境を強いるケースも起こり批判が高まった。また、やむを得ない場合を除き、原則転籍不可となっていることも議論のポイント。さらに、技能実習生が来日するために母国の送出機関や仲介者に手数料等の支払いのため多額の借金をしているという問題も挙げられる(来日前に借金をしている人は全体の約55%。借金の平均額は54万7,788円)。また、日本国内において監理団体が適正な監理・保護・支援を実施できていないという実態もある。
これらの技能実習制度の問題を受け、2017年11月1日に施行されたのが「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」。しかし実態は変わらず、海外からの批判も収まらなかった。そこで2019年4月に新たに設置されたのが「特定技能制度」である。

特定技能制度とは?

人手不足が深刻な特定産業12分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れ、人手不足の解消を目的とした制度。外国人には実態に即して、労働者として就労ビザが発行される。また、技能実習制度で問題視された転籍についてだが、特定技能制度では転籍が可能となっている。
技能実習制度と特定技能制度は、その目的も主務大臣も異なり、対象職種も技能実習制度にはあったが特定技能分野には含まれていない職種があることなど、両制度が同時進行した故の課題がある。その課題解決に向け、有職者会議を通して両制度を一貫性のある制度に変えていく方向性が示された。

技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有職者会議の最終報告書(概要)

11月30日に公表された「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有職者会議の最終報告書」によると、今回、両制度を見直すにあたって以下の3点に重点が置かれる。

①外国人の人権保護=転籍問題
外国人の人権が保護され、労働者としての権利性を高めること。
②外国人のキャリアアップ
外国人がキャリアアップしつつ活躍できる分かりやすい仕組みを作ること。
③安全安心・共生社会
全ての人が安全安心に暮らすことができる外国人との共生社会の実態に資するものとすること。

見直しの4つの方向性
①技能実習制度を人材確保と人材育成を目的とする新たな制度とするなど、実態に即した見直しとすること
②外国人材に日本が選ばれるよう、技能・知識を段階的に向上させ、その結果を客観的に確認できる仕組みを設けることでキャリアパスを明確化し、新たな制度から特定技能制度へ円滑な移行を図ること
③人権保護の観点から、一定要件の下で本人意向の転籍を認めるとともに、監理団体等の要件厳格化や関係機関の役割の明確化等の措置を講じること
④日本語能力を段階的に向上させる仕組みの構築や受入環境設備の取り組みにより、共生社会の実現を目指すこと

「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有職者会議の最終報告書」の提言まとめ
・技能実習制度は「育成就労」となり、発展的解消と共に在留期間は基本3年という枠組みに
・人材確保と人材育成を目的とし、国際貢献は外れる
・従事できる業種は特定技能の業務区分
・キャリアパスについては、主たる技能を定め育成と評価をする
・転籍:範囲を拡大・明確化し、手続きを柔軟化
・監理団体と登録支援機関の要件を厳格化
・転籍に関して、民間の有料職業紹介が可能に
・借金問題:本人負担手数料等の一部を受入れ企業が負担

各専門家による座談会

プレスセミナーの後半に行われた座談会では、“外国人労働者の人権保護”、“キャリアアップ”、“全ての人が安全安心に暮らすことができる社会、外国人との共生社会”にスポットを当て、各専門家のそれぞれの視点で話を繰り広げた。

“外国人労働者の人権保護”における転籍問題について

現在転籍については1年目、2年目から転籍を認めるなど議論が続けられている状況だが、宮谷氏は「現状として日本に行きたいという労働者が減りつつある。転籍期間を決めて単に縛るのではなく、国際労働市場の中で労働力の獲得競争が激しくなっている昨今、日本に行きたいという声を増やすこと、賃金や優遇策などをセットで考える必要がある」と語った。

この問題に関して片岡弁護士は、「自身が対応してきた中では“転籍できない”といった感覚はないが、実際には報道に出るような悪質な監理もあるので、それに対する厳罰化などの話が今回出なかったのが残念だ」と述べた。大山氏は「日本人の新卒採用で考えた場合、もし3年転籍はだめですよと言ったら相当叩かれるはず。外国人だから、日本人だからと考えずに転籍制度を認めていくべき」と述べた。

借金問題に関わる手数料に関して

宮谷氏は「手数料をゼロにしようという、企業側が負担しようという動きもある。これまで安価な労働力と捉えられていたところを、今後は安定した労働力を受けるための必要なコストだと日本側の負担を求めていかれれば」と話した。これに対し、大山氏は「今回の有職者会議では、手数料等の一部負担なので、手数料に対してなのか、実費なのかは不明であり、それによって金額は変わってくる。全体のコストを考えると育成し雇用することができない企業も出てくる可能性がある」と課題点を挙げた。

“キャリアアップ”について

キャリアアップに関して、宮谷氏は「キャリアプランを受け入れ企業が考えなければならないという中で、日本人にすら考えたことがないという企業もあると思う。今後どこまで求められるのかに注目したい」と述べ、片岡弁護士も「技能実習制度は基本的に技能実習計画というものに基づいて実習が行われている。厚生省がモデル計画を出して、それに沿って行う形の計画となっている。それが今回特定技能に揃えるとなり、どういった計画を作ればいいのかが問題となる。職種の幅も各社ごとにやっていることは全然違う。それによって転籍時にも非常に問題になっていくのでは」と話した。転籍を認めた場合のキャリアの引継ぎについて大山氏は「育成就労から特定技能1号になる時、1号から2号になる時の試験制度などにおいて、ある程度計れるような指標を持っていくのではないか」と述べた。

“全ての人が安全安心に暮らすことができる社会、外国人との共生社会”とは?

片岡弁護士は、「日本語教育」が一番大事であると述べ、「特定技能や技能実習において監査や団体から支援は受けられるが基本的に自分で情報を受け取ることが必要となる。日本語ができないことにより騙されてしまうといったケースもある。日本語の理解により社会にも馴染んでいけるのでは」とコメント。宮谷氏は、「外国人の方々も日本で生活していくわけで、就労面だけではなく、地域のコミュニティとしてサポートできる仕組みが必要」と語った。大山氏は「ちょっとの声かけが大事だったりするところを、自分たちの心の中で少し差別や距離を置いてしまうこと自体が共生社会の創設において難しいことだと思う。地方行政で多言語対応するのは現実的に難しいとは思うが、DX商品やコールセンターなど便利なものを使いながら、一つ一つ寄り添っていくことが重要。受け入れる体制や心持ちが非常に重要であり一番の課題」と述べた。

最後に久世氏は「今回の改正は、外国人を受け入れる日本企業、さらには日本人が、その外国人と一緒に働いていく環境を作っていくためにはどうすればいいかを考える、いいきっかけになるのではないか」と述べセミナーを締め括った。

外国人を受け入れるということは、企業だけでなく、同じ日本で生活する私たちも関わりの深いことだ。外国人が働きたいと思えるような日本にするために、私たちができることをこの機会に考えてみてはいかがだろうか。

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