寒さが和らぎ、春の足音が近づいています。桜の花が咲き、お花見や入学式、新生活など新たな始まりを迎える季節がやってきます。春の訪れは希望と活力を与え、心を満たしてくれますよね。しかし、同時に、花粉症の季節も本格化してきます。日本気象協会によると、2024年は2月上旬からスギ花粉の飛散が始まり、この3月がピークと予測されており、花粉症の症状が増えるこの季節、多くの人々が対策を求めています。花粉症は近年、その有病率が増加しており、生活に大きな影響を与える国民病の一つとなっており、寒暖差の激しいこの季節、花粉症対策はますます重要です。
さらに、近年私たちの健康にとって重要な役割を果たす腸内環境が注目されています。特に、腸内細菌が生み出す「短鎖脂肪酸」が免疫システムのバランスを整える効果があることが分かっています。そこで、花粉症の予防においても、腸内環境を整えることが有効であると考えられ、腸活が注目されているのです。 そこで今回は、短鎖脂肪酸を増やすための最新の腸活情報をお届けします。
花粉症と免疫システムの関係
花粉症は、免疫システムの一種であるアレルギー反応が過剰に反応することによって引き起こされる病気です。免疫システムは、体を守るために大切な働きをしていますが、ときには誤って無害な物質に反応してしまうことがあります。花粉症の場合、免疫システムが花粉を異物とみなし、過剰な炎症反応を引き起こします。その結果、鼻づまりやくしゃみ、目のかゆみなどの症状が現れるのです。花粉症の発症や症状の軽減には、免疫システムのバランスが重要であることが知られています。
腸内環境の重要性
腸内環境は、私たちの健康にとって極めて重要です。腸は体内で最も大きな免疫器官であり、免疫細胞のほぼ半数がここに集まっています。この免疫機能は、「腸管免疫」と呼ばれ、腸内に生息する腸内細菌によって支えられています。生活習慣や年齢、薬の服用などが原因で腸内フローラのバランスが崩れると、免疫力が低下し、体の健康に影響を与えます。しかし、腸内細菌のバランスを保つことで、腸管免疫が高まり、体の免疫力が向上し、免疫システムが安定します。
従来は腸内細菌を「善玉菌」「悪玉菌」と分類してきましたが、最新の研究では、腸内フローラは個々の人によって異なる種類や数の菌から形成されていることがわかっています。また、腸内細菌が摂取した食品から生成される代謝物質が体に影響を与えることも分かっており、これまで「悪玉菌」とされてきた菌も、実は体に良い影響をもたらす可能性があります。
腸内には約1,000種、数にして40兆個もの細菌が生息しており、個人ごとに異なる腸内フローラを理解し、健康に良い代謝物質を促進するために、各自の腸内細菌が活躍することが重要です。
腸活が花粉症対策に効果的
2023年、腸活アプリ「ウンログ」を運営するウンログ株式会社が20〜50代の女性2,739名を対象に「花粉症と腸活に関する意識調査」を実施しました。
調査結果によれば、春に悩む身体的な不調の主因は「花粉症」であり、約6割の参加者がこれを挙げました。さらに、4人に1人が腸活によって花粉症が改善したと回答しました。花粉症対策に効果的な腸活の方法としては、「良い菌の摂取」が第1位であり、次いで「良い菌の“エサ”の摂取」が挙げられました。このことから、乳酸菌やビフィズス菌などの菌だけでなく、これらの菌の成長を助ける食物繊維やオリゴ糖などの成分の摂取も花粉症対策に有効であるという認識が広がっています。
短鎖脂肪酸の役割と増やし方
最新の腸内環境研究では、「短鎖脂肪酸」という成分が注目されています。この短鎖脂肪酸は、大腸内の腸内細菌が食物中に含まれる成分を取り込み、代謝することで生成されます。特に、バクテロイデス、ルミノコッカス、プレボテラ、ビフィドバクテリウム、フィーカリバクテリウム、ブラウティアなどの腸内細菌が日本人の腸内に多く棲んでいる傾向であり、短鎖脂肪酸の産生に関与することがわかっています。
これらの細菌が必要とする成分を腸に届け、その成分を多様な腸内細菌で代謝し合うことで、短鎖脂肪酸の量を効率的に増やすことができます。つまり、バランスの良い食事や腸内環境を整えることが、健康な短鎖脂肪酸の生成につながるのです。このように、腸内細菌との共生を促進する食生活や生活習慣の改善は、健康な腸内環境を維持し、身体の免疫力を高めるために重要です。
短鎖脂肪酸を産み出す、日本人に多い腸内細菌
1.バクテロイデス
多くの人で一番割合の多い菌として報告されています。特に、動物性たんぱく質や脂質の多い欧米型の食事をする人に多いといわれています。水溶性食物繊維(イヌリンなど)を餌にプロピオン酸を作り出します。また、バクテロイデス属の中には、持久力の向上に関わる種類が報告されています。
特徴:多くの人に多い・プロピオン酸をつくる・持久力に関係
多く含まれる食材:にんにく、ごぼう、たまねぎ、チコリ、キクイモ
2.ルミノコッカス
やや多くの人が保有している菌です。レジスタントスターチ(RS)という難消化性でんぷんを餌に酢酸をつくり出します。そのため、RS分解菌の代表的な種類として知られています。独自の調査結果から、果物や野菜、きのこを食べる人、お通じが少なめであると自覚している人に多い傾向が見えてきています。
特徴:酢酸をつくる・レジスタントスターチ分解
多く含まれる食材:豆類、芋類
3.プレボテラ
穀物や野菜、豆類などの食物繊維を多く食べる人に多く存在することが知られています。水溶性食物繊維(大麦など)を餌にコハク酸をつくることが知られていて、コハク酸は他の腸内細菌の餌になり、プロピオン酸につくり変えられることが見えてきています。
特徴:食物繊維を食べる人に多い・コハク酸をつくる
多く含まれる食材:麦ごはん、全粒粉パン、グラノーラ、雑穀
4.ビフィドバクテリウム
いわゆるビフィズス菌で、多くの日本人が保有している菌です。特に、乳製品を食べる人に多いと報告されています。水溶性食物繊維(オリゴ糖など)を餌に酢酸をつくることが知られており、お通じへの影響をはじめ様々な健康との関わりが報告されています。
特徴:乳製品を食べる人に多い・酢酸をつくる・お通じへの影響
多く含まれる食材:牛乳、乳製品
5.フィーカリバクテリウム
多くの人が保有している菌です。水溶性食物繊維(ペクチンなど)を餌に酪酸をつくることが知られています。独自の調査結果から果物、野菜、玄米雑穀米を食べる人、運動する人に多い傾向が見えてきています。また、先行研究から女性の長距離ランナーに多かったという報告もあります。
特徴:果物、野菜、玄米雑穀米を食べる人に多い・酪酸をつくる
多く含まれる食材:バナナ、はちみつ、たまねぎ
6.ブラウティア
多くの人が保有している菌です。内臓脂肪面積が小さい人に割合が多い菌として報告されています。酢酸をつくるはたらきが知られており、カカオポリフェノールによって増えることが見えてきています。
特徴:多くの人に多い・酢酸をつくる・内臓脂肪面積に関係
多く含まれる食材:ハイカカオチョコレート、麹
腸内フローラの個人差と腸内フローラ検査の重要性
個人ごとに異なる腸内フローラですが、例えば、ビフィズス菌の存在も個人によって異なり、効率的な短鎖脂肪酸の増加を目指すには、自身の腸内フローラを知り、それに合わせた食事を意識することが重要です。近年では、腸内フローラの検査キットが手軽に入手できるようになり、病院だけでなく、オンラインサービスや薬局などで容易に検査が行えるようになってきています。
年々悩ませる花粉症の対策において、腸内環境の重要性が再確認できたのではないでしょうか。腸内フローラのバランスを整えるためには、短鎖脂肪酸を意識した腸活が有効です。食物繊維や発酵食品などを積極的に摂取し、腸内細菌の活性を高めましょう。これにより、免疫力が向上し、花粉症の症状を軽減できる可能性があります。 健康な腸内環境を整えるために、日々の生活で腸活を意識してみてはいかがでしょうか?