タレントの松本人志さんが、複数の女性に同意のない性的行為をさせたと「週刊文春」に報じられ、賠償などを求めている裁判の初めての口頭弁論が開かれ、文春側は全面的に争う姿勢を示しました。
【写真を見る】【弁護士が解説】松本人志さん第1回口頭弁論、文春側 全面的に争う姿勢、今後の裁判の流れは【Nスタ】
「筆舌に尽くし難い精神的損害」松本人志さん側主張
井上貴博キャスター:
ダウンタウンの松本人志さんについて、「週刊文春」が「複数の女性に同意のない性的行為を行った」と報道しました。この報道について松本人志さん側は、名誉毀損による慰謝料など総額5億5000万円の支払いと謝罪広告を求めると主張しています。
松本さんは25日に「たくさんの人が自分のことで笑えなくなり、何ひとつ罪の無い後輩達が巻き込まれ、自分の主張はかき消され、受け入れられない不条理にただただ困惑し、悔しく悲しいです。世間に真実が伝わり、一日も早くお笑いがしたいです」というコメントを発表しています。
28日の口頭弁論に松本さんは出席しませんでしたが、松本さん側は「客観的な証拠がないのに一方的な供述を取り上げた」「番組出演を休止せざるを得ない状況になり、筆舌に尽くし難い精神的損害を受けた」などと主張しています。
一方、文芸春秋側は真っ向から反論し、「芸能界のトップに君臨する原告が複数の女性に対し同意なく性的行為に及んだ事実を報じたもの」「同意のない性的行為はいずれも真実」などと主張しました。
河西邦剛弁護士によりますと、28日に第1回の「口頭弁論」が行われ、このあと5〜6回、口頭弁論が行われるということです。その後、「本人尋問」、「証人尋問」と経ていくことになり、それでも和解が成立しなければ判決へという流れが想定されています。
▼松本さん側が女性の証言の信用性を崩すことができるか、一方、▼文芸春秋側は女性の証言の信用性を証明できるかというのが裁判のポイントだということです。
ホラン千秋キャスター:
松本さん側は(報道を)否定していますが、週刊文春の報道によると、色々な事象が密室で起きていて、回を追うごとに登場人物が増えています。実際に密室で何が起きていたのかということを証明するのは難しいのでしょうか。
河西邦剛 弁護士:
今回の事案を具体的に、詳細に見ていく必要性があると思います。
週刊文春の報道によると、AさんもBさんも複数人で六本木のホテルのフロアでパーティーをしていて、そこから松本さんとAさん、松本さんとBさんのそれぞれが寝室に行き、2人きりの場面で起こった性的強要とされています。
この“性的強要”報道について松本さんは「真実ではない」と主張しているので、今回の真実性、いわゆる性的強要があったかどうかというのは、Aさん、Bさん、松本さんにしか分からないという状況です。
そのため裁判所に対して、▼文春側はAさん、Bさん出廷の上、記事に書いてある内容を証言していく、▼松本さん側は「そうではない(事実ではない)」ことを証言し、裁判所はどちらが信用できるかということを判断していくことになります。
ホランキャスター:
裁判の過程はどれくらいの時間がかかるものなんですか。
河西弁護士:
判決まで1年半から2年ほどかかってくるかと思います。「本人尋問」「証人尋問」まで約1年、さらに判決までは半年ほどというイメージです。
裁判のポイントは“当事者”の出席か
歴史・時代小説家 今村翔吾さん:
僕もどちらかというと出版側の人間で、自身も色々なことについて書くことに対して、まず「どうなんだろう」と葛藤し、疑問を持たないわけではありません。
ただ、これまでの文春の報道をみると、文春がこういう記事を上げるときは結構念入りに取材をしてるということは感じています。そういう点から文春側は自信があるんだろうなと何となく感じます。
河西弁護士:
今回、文春側は裁判になることも十分想定していたと思います。松本さん側は、客観的証拠がない、物的証拠がないと言っていますが、(文春側は)それも織り込み済みだと思います。
当然ながら、松本さんとAさん、Bさんだけの寝室(密室)での性的強要であれば、客観的証拠=録音や防犯カメラ映像があるわけないですよね。ただ文春側は、Aさん、B子さんに取材を重ねる中で、裁判の中で証言してもらうことで立証できると考えていたんじゃないかなと思います。
井上キャスター:
松本さんを擁護する、文春報道を否定する方が出廷するかもしれません。一方で、文春報道の被害を訴える方が出廷する可能性もあります。どのような方が出廷するのがポイントになるんでしょうか。
河西弁護士:
文春側(女性側)からすると、今回の飲み会、パーティーに参加していたほかの参加者から「性的行為がありました」とか、文春報道のストーリーに沿うような、例えば「A子さんと松本さんがフロアから寝室に行く姿を見ました」という声が出てくると、“性的関係があった”という土台ができることなってきますので、文春側の証人になってきます。
松本さん側としては、「飲み会はあったが、性的関係は一切ありませんでした」、「寝室に移動する姿なんか見ていません」という声があると、“性的強要があった”という土台が崩れることになるので、性的関係におよぶ機会はなかったということを(飲み会に参加していたとされる)小沢さんや放送作家のXさんなど、その場にいた方によって証言していく可能性があるかなと思います。
井上キャスター:
松本さんは裁判に集中するために仕事を休止していますので、出廷するのかどうかがポイントです。
河西弁護士によりますと、「出廷する義務はない」ということですが、「女性の証言の信用性を崩すためには松本さん本人の証言が必要不可欠」「証言がなければ女性の主張が認められることになる」ということです。被害を訴えた女性と松本人志さんが法廷で“直接対決”することがあるのでしょうか。
河西弁護士:
“直接対決”と書いてありましたが、実際は同じ法廷で相対峙して質問し合うことはないかなと思います。
当然、女性のプライバシーを守ることはすごく大事ですので、例えば裏動線から入って松本さんと会わず、記者などの取材陣などからも守られるような形で法廷に案内して証言をする、証言をするときもパーテーションなどで見えないようにするといった配慮は十分になされると思います。
ただ、やはり今回の週刊文春の記事の信用性を争う上で、AさんBさん、そして松本さんのどちらが信用できるかという裁判所の判断がポイントになります。AさんBさんが出廷しないとなると、文春側はかなり不利になり、松本さんが出廷しないとなると、松本さんが不利になってきますので、そういう意味では、証人尋問まで今回の裁判がどうなるかは流動的になってくると思います。