台湾東部を襲ったマグニチュード7.7の大地震。ビルの倒壊現場や避難所の現状は?最も被害が大きかった花蓮県を山本恵里伽キャスターが取材。現地から最新報告です。
【写真を見る】懸命な救助活動が続く台湾随一の景勝地「太魯閣」 地震被害の大きかった花蓮県から最新報告【報道特集】
完全に傾いたビル 真横でギリギリ被害を逃れたホテル
4月3日、台湾東部沖を震源とするマグニチュード7.7の地震が発生。台湾気象当局は最大震度6強と発表した。
最も被害が大きかった花蓮市に入った。
山本恵里伽キャスター
「お店は普通に営業しています。電気もついていますし、音楽も流れています。こうした日常が広がっている中で、あちらに目を移すとビルが倒れている、非常に大きなギャップを感じます」
傾いたビルがある現場に向かうと…
山本キャスター
「茶色いビル、完全に傾いてしまっています。手前に倒れてきてますね。手前にグレーのコンクリートのブロックが積まれていますが、これ以上ビルが傾かないように置いているそうです」
ビルの真横でギリギリ被害を免れたホテル。ロビーで働いていたスタッフは…
山本キャスター「崩れてくる様子とか見えました?」
ホテルのスタッフ「建物が2分ぐらい揺れて、徐々に前の方に傾いたんです。揺れる音がすごくて、お客さんがパニックになって逃げ出しました」
ホテルに設置されたカメラが、ビルが崩れる瞬間をとらえていた。
ビルの向かいに住む女性「煙がいっぱい上がって、一帯が埃だらけになりました」
山本キャスター「この近くでこういうことが起きるってどう感じます?」
ビルの向かいに住む女性「2018年の2月6日にも花蓮で大きな地震があったんですが、その時からすでに危ないと思ってました」
1階にあった店がつぶれ、完全に傾いてしまった別のビルは、翌日、取り壊し作業が行われていた。このビルの隣に住む男性が自宅の中を見せてくれた。
山本キャスター
「いろんな所にヒビ割れが起きています。階段のところにもヒビが入っています」
──隣の壁が、ぶつかってこうなった?
住民
「わかりません、隣のビルが倒れて余震がしばらくあったあと入ってみたら、こうなってました。おそらく最初の揺れのせいだと思います」
「ついさっき85人の客、8人の従業員が救出された」
山本キャスター
「花蓮市内から北に20キロほどのところにある太魯閣に来ています。観光客にも人気のエリアですが、岩が落ちていたり、山では大規模な土砂崩れが発生していたり、この影響によって多くの人が孤立しているということです」
台湾随一の景勝地として知られる太魯閣。峡谷の険しい断崖は、地殻変動のあとが見られる絶景スポットとして、多くの観光客が訪れている。
地震発生直後、轟音と共に山肌が崩れ落ち、あたり一面は大量の土煙に覆われた。
山本キャスター
「台北へと繋がる道が完全に土砂で寸断されてしまっています。大きな土砂崩れが起きています」
花蓮県の道路を走る車のドライブレコーダーに記録された映像では、奥で土砂崩れが起きた直後、大きな岩が目の前の車を直撃。
さらに、道路も崩れ落ちた。
今もたびたび起きる余震で、土砂崩れが発生し、あちこちで土煙を上げていた。
山本キャスター
「孤立している人、連絡が取れない人の情報は入っていますか?」
土産物店の店主
「まだ中には登山客がいます。トンネルの中にも人が取り残されているようです」
太魯閣では救助を待つ人たちの姿も。
ホテルを経営する男性に話を聞くことができた。
山本キャスター「ホテルには孤立してる人がいるんですか?」
ホテルの経営者「ついさっき85人のお客さんと、8人の従業員が救出されました」
山本キャスター「どういう状況で孤立状態になったんですか?」
ホテルの経営者「道路に岩が散乱し、山の中は土煙だらけで恐ろしかった。停電して、水道管も破裂して、通信もできなくなりました」
土砂崩れの被害に遭ったそのホテルの写真では、シャワールームの壁が崩れ落ちている。
建物の真横には、すんでのところまで巨大な岩が転がり落ちていた。
取り残された客や従業員たちは、地震発生の翌日、レスキュー隊によって全員無事に救出されたという。
山本キャスター「他にも孤立してる人はいますか?」
ホテルの経営者「奥(天祥地区)の方にはまだいます。私はここで20年間ホテルを経営していますが、今回の被害が一番大きかったです」
山間部を中心に600人以上が孤立状態にあるという太魯閣(6日午前8時現在)。今も懸命の救出活動が続いている。
取材中にも余震 避難所の環境に住民は「安心」
花蓮市の中心部に設置された避難所を訪ねた。
山本キャスター
「テントの中を見てみると、飲み物やティッシュなども置かれています。かなり物資も充実している印象を受けます」
山本キャスター
「(避難所の建物内には)電話や充電ができるスペースがあり、身分証や保険証の再発行ができるようになっているそうです。着の身着のまま避難する人も多いということで、こういった設備が整えられています」
小学校の体育館とグラウンドには仮設のテントが設置され、自宅が被害にあった人など約100人(5日時点)が避難している。
避難した住民
「地震が起きたとき私は3階にいました。体が不自由だから、もし夜に地震があったら、逃げることができませんでした」
避難した別の住民
「余震が落ち着いたら家に帰りたいです。特に夜は余震があると子供達が怖がるんです」
台湾では、これまでに600回以上の余震が起きている。取材中も…
山本キャスター
「あ、揺れてる。姿勢を低くしましょう。ちょっと大きいですね。アラートが鳴っています」
避難所の環境について聞くと…
避難した住民
「ここは安心できます」
「政府の対応は良いと思います」
避難した住民(子供)
「避難所には必要な物がなんでもあります。生活用品は無料でもらえるし、シャワーもあります。お湯の温度も調節できるんです。なんでも用意されていて、とても快適です」
この避難所でテントが設置されたのは、発災からわずか3時間後。さらに…
山本キャスター
「体育館のステージは子供たちが遊ぶ場所になっています」
子供たちのための、時間割もできていた。
花蓮市の前の市長は、2018年の地震以降、行政の対応を見直したという。
花蓮市の前市長 魏嘉賢さん
「(2018年の震災以降)災害時に連携がとれるよう、ずっと準備してきました。市民は自主的に避難訓練を行い、市役所では避難所の設置場所や物資の使い方を決める人、軍に協力を依頼する人など、担当者の役割を明確にしました。災害時にそれぞれの役割をすぐに果たせるようにするためです」
花蓮市では、週に一度、必ず防災に関する会議を行い、避難物資の手配から災害時の職員のシフトまで事細かに確認。さらに、学校や地域もシミュレーションを繰り返し、災害に備えているという。
花蓮市 魏嘉彦 市長
「今回、地震が起きたとき、ただちに対応に当たるよう職員に電話で指示しました。職員達はすぐに避難所に行き、私は傾いたビルに駆けつけ、状況を把握しました。私たちはほとんど同時に動き出すことができたのです」