「悲観は1ドル=230円、楽観は120円」歴史的な円安からの乱高下…今後のシナリオを専門家はどうみる

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2024-05-01 07:01
「悲観は1ドル=230円、楽観は120円」歴史的な円安からの乱高下…今後のシナリオを専門家はどうみる

歴史的な円安ドル高が続いています。日銀が金融政策の現状維持を決定した後、4月29日には1ドル=160円を突破しました。しかし、その後は乱高下が続き、不安定な動きに。1ドル=230円まで円安が進むというAIの予測も飛び出す中、これからのシナリオを専門家に聞きました。

【画像】円安が加速…その後、乱高下 4月のドル円推移が一目で分かる 1ドル=230円の未来も?

「日銀は為替の動きについていくことはしない」というメッセージ?

まずはドル円相場の変遷です。日銀の植田和男総裁の就任1年となる4月9日に円安が一段と進み、4月24日には「節目」とされていた1ドル=155円を突破しました。日本銀行が金融政策の現状維持を決定した4月26日には円安が加速し、瞬く間に、158円台となりました。これは、最近何度も聞く「34年ぶり」の円安ドル高の水準です。

その後、4月29日には160円まで進んだ一方で、数時間のうちに154円台まで急騰し、「為替介入があったのでは」という思惑も広がりました。

今後もこの円安傾向は続くのか。大和証券でチーフエコノミストを務める末廣徹さんは、日銀のホームページ上での金融政策の発表文がシンプルな1枚だったのに驚いたといい、「『日銀は為替のこの動き(=円安)についていくことはしない』というメッセージが強かったと思います」と読み解きます。

一方、日銀が金利を上げれば、少し円高に振れるという考えもありますが、末廣さんは「やってしまうと泥沼化する可能性もあるので、為替と金利の戦いには、日銀は乗らないというのが結論なのかなと思います」と分析します。

利上げで経済に効果はあるのか…日銀が経験した「為替との戦い」

元々、日銀は為替のために政策を決めているわけではないという基本があります。

白川方明さんが総裁だった2008〜13年、日本は円高傾向でした。2011年の東日本大震災の時も円高が止まらず、10月31日には史上最高値となる1ドル=75円32銭となりました。

末廣さんは「円高が止まらないので、日銀が利下げをしました。ですが、もっと円高が進んで、さらに利下げをして、ゼロ金利になってしまったので、量的緩和をして、といった『為替との戦い』だけに集中させられるということを(日銀は)経験しています」と振り返ります。

その上で、現状を見ると、日銀が何もしないのと、少しだけ利上げをするのと、「どちらが良いかは結構、微妙です」と末廣さん。

「例えばアメリカはたくさん利上げをしていますが、経済がダメージをあまり受けていません。利上げが経済にどういう効果があるのかは、世界的によく分からなくなってきています」

住宅ローンに関して、アメリカでは固定金利が一般的で、利上げしてもあまり影響がありません。一方、日本では変動金利が最近は一般的で家計への影響が大きいため、末廣さんは「少しずつしか利上げできないと思います」と考察します。

円安は悪いことなの…? 国民目線と日銀目線で異なる物差し

上記のことも含めて、日銀がなす術はあるのか。そもそも、円安は悪いことなのか。

末廣さんは「正直、円安が良いのか悪いのかはよく分かりません。私もテレビも新聞も、国民生活の目線になります。そうすると、輸入価格の負担も大きく、海外に行った時も高いと感じるなど円安の弊害はあります」とする一方で、「日銀の(目的は)最終的に物価を安定させることなので、多少、円安になった方がが良いんじゃないかという見方もできます」とします。

2022年には30%ほど円安が進みましたが、その時は企業が賃上げに動いたこともあり、「円安が止まるのも(日銀は)不安なのかもしれません」と末廣さん。「影響が出てきたらもちろん対応するけれど、もう少し様子を見させて、というのも根本にあるんだと思います」とまとめます。

その上で「(為替を)気にしているのは日銀よりも政府の方なのかなと。財務省の方が先に動きそうです」と末廣さん。為替介入の有無については、財務省の神田眞人財務官は4月30日の時点でコメントを避けています。また、岸田文雄総理も「コメントは差し控える」としています。

AIが予測する年末のドル円レートは?「楽観」と「悲観」二つのシナリオ

実現するかは全くの未知数ですが、興味深いレポートがあります。それは、第一生命経済研究所が2024年4月18日に公開した、AIを活用したドル円レートの予測結果で、「楽観」と「悲観」の二つに分かれています。

楽観シナリオでは、▼「政治の安定と国際協力の強化」▼「経済成長の加速」▼「地政学的リスクの低減」が進んだと仮定して、2024年末に1ドル=120円の円高になるとしています。大和証券の末廣さんは「昔は、世界経済が良くなって円安になると、どんどんリスクを取り、金利が安い円が売られやすかったです。今は、世の中がポジティブではなくてネガティブな方にいるので、そのネガティブな状態からニュートラルになると、世の中が安定して、為替も安定して、円高に戻るということなのかと」と分析します。

一方、悲観シナリオでは、世界的に▼「政治的緊張の高まり」▼「経済的不安定性が増大」▼「地政学的リスクが増大」したとして、2024年末に1ドル=230円まで円安が進みます。こちらについて大和証券の末廣さんは「情勢が悪化すると、『有事のドル買い』で、やっぱりドルが安心と、ドルが買われやすいというのが反映されているのかな」と見ています。

今後の為替相場がどうなるか、たしかなことは言えませんが、二つ以外にも複数のシナリオを作って頭の中に入れておこうと思います。

     ◇
取材協力: 大和証券エクイティ調査部チーフエコノミスト・末廣徹[すえひろ・とおる]

記事構成:TBSテレビ デジタル編集部・影山遼(1級ファイナンシャル・プランニング技能士)

(TBS NEWS DIGオリジナルコンテンツ「経済の話で困った時に見るやつ」より抜粋)

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