「貧血」とは、血液中の赤血球量が減少した状態を指し、この状態が続くと、体の細胞に酸素が供給されず命に係わるほど重篤化することもある病気です。この病気は、人はもちろん、犬も発症することがあります。犬が「貧血」になっているとき、一体どんなサインが見られるのでしょうか。
犬が「貧血」になっているときのサイン
「貧血」と聞くと「血が足りないのでは?!」と思われがちですが、実際は血液そのものではなく、赤血球の量が関係しています。
血液検査の項目で、『ヘマトクリット値』『赤血球数』『ヘモグロビン値』というところを見てみましょう。
ヘマトクリット値は血液中に閉める赤血球の割合を、ヘモグロビン値は血液中のヘモグロビンの濃度を示しています。いずれも基準値が定められており、その基準内であれば酸素を供給する能力に問題はないと言われています。
赤血球は骨髄内で作られ、血管に放出されると肺で受け取った酸素を体の隅々にまで運ぶ働きを持っています。赤血球の寿命はおよそ100日で、古くなった赤血球は脾臓という臓器で壊され取り除かれています。
通常であれば、骨髄で生産される数と脾臓で破壊される数が釣り合っているため、赤血球が極端に多くなったり少なくなったりすることはありません。しかしこのバランスが崩れてしまうことで「貧血」が起こります。
貧血になると、体のいたるところの細胞において酸素不足が起こります。この酸素不足の状態が放置されて症状がさらに進行すると、多臓器不全から昏睡状態に陥り死んでしまうこともある危険な病気です。
1.粘膜の色が白くなる
健康な動物の粘膜の色は赤血球の色である赤が透けている状態で、赤~ピンク色をしています。
これが何らかの原因によって貧血を起こすと、血液中の赤血球が不足し末端の毛細血管へいきわたらなくなり、粘膜の色が薄ピンクから血の気のない白い色、あるいはそれより進んで青みのある紫色に変色することがあります。
愛犬が貧血かなと思った場合、犬の歯茎を指先で軽く押してみましょう。白くなった後にすぐ赤みが戻れば大丈夫ですが、いつまでも白い場合は貧血を起こしているので動物病院へ相談しましょう。
2.食欲がなく、ぐったりしている
犬の元気のバロメーターは食欲です。ぐったりと起き上がるのにも怠そうにしていたり、食欲がなかったりする場合は体調不良を疑います。
一時的な症状の場合は、しばらく様子を見ておいてもよいかもしれません。しかし、貧血を起こすと消化器官も弱くなるため食欲が著しく低下します。食欲不振が数日続いていたり、朦朧としていたりする場合はすぐに動物病院を受診しましょう。
3.歩行時にふらつく
人間の場合でも、「貧血」のときはふらふらっとしてしまいますよね。犬の場合も同様で、貧血になると脳に酸素が足りなくなってめまいを起こすことがあるようです。
また、四肢に力が入りにくくなり、歩いているときによろけるそぶりを見せることがあります。立ち上がる際に踏ん張り切れなくて、転んでしまうこともあります。
このような場合、転倒でケガをする危険があるので、愛犬の周りには歩行の邪魔になるものを置かないようにしてあげましょう。
4.おしっこの色がいつもと違う
ペットシーツに排泄ができる子の場合、おしっこの色も「貧血」の指標になります。
通常であれば犬の尿は薄い黄色をしているのですが、これが濃い黄色、オレンジ色になった場合、尿が濃縮している状態と考えられます。この場合は脱水を起こしている可能性が高いため、速やかに水分の補給をする必要があるでしょう。
しかしおしっこの色がピンク色に近かった場合、これは体内で「溶血」が起こっている可能性があります。溶血とは、赤血球が何らかの原因で血管内で破壊され、赤い色素であるヘモグロビンが血液内に流れ出ている状態を指します。
この何らかの原因で代表的なものが「玉ねぎによる中毒」と、「免疫介在性溶血性貧血」です。血管の中で赤血球が破壊されているので生産が追い付かず、重篤な貧血症状を起こし命にかかわることが知られています。一刻も早く動物病院へ連れて行ってあげましょう。
まとめ
犬の「貧血」の原因は、先天性のものもあれば食事や寄生虫による場合もあります。
先天性の場合は防ぐことが難しいのですが、食事や寄生虫・細菌感染の場合は対策をすることが可能です。
ネギ類を決して与えないこと、貧血を起こす寄生虫や細菌を媒介させないため、ノミやマダニの対策をしっかりすること、などを心がけてあげることで、愛犬の「貧血」のリスクも軽減されるでしょう。
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