中国の「言いなりになることは…」大国の間で揺れる南の島・フィジー ランブカ首相が語る“中国との距離感”

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-07-21 06:30
中国の「言いなりになることは…」大国の間で揺れる南の島・フィジー ランブカ首相が語る“中国との距離感”

7月、東京で開催された「太平洋・島サミット」。参加した島しょ国は、この地域で中国の影響力が強まる現状をどのように見ているのか。サミットに合わせて来日していたフィジーのランブカ首相が帰国直前にJNNのインタビューに応じ、難しい舵取りを迫られている各国の現状を語った。

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6年ぶりに島国のリーダーが日本に集結「正しい答えを導き出せた」気候変動などで協力へ

太平洋にある18の島国や地域のトップらが参加した「太平洋・島サミット」。前回はコロナ禍でオンラインでの開催だったため、対面で行われるのは実に6年ぶりとなった。
10回目の開催となる今回は、気候変動や安全保障など7つの分野で重点的に協力していくとした共同行動計画が採択された。

初めてサミットに出席したフィジーのランブカ首相は、全体会合で行われた議論についてこう振り返る。

「太平洋島しょ国のリーダーたちは、開発や気候変動、安全保障に関する問題について議論することを望んでいました。今回のサミットで私たちは共通の課題や懸念を共有し、その解決に向けて正しい答えを導き出すことが出来たと思っています」

サミットの成果に満足していると話すランブカ首相。
一方、今回焦点の一つとなったのが首脳宣言の扱いだ。採択された宣言には「力による一方的な現状変更の試みへの反対」という言葉が明記された。念頭にあるのは中国の存在だ。

「ニーズのある開発や援助を受け入れているだけ」米中対立のはざまで揺れる島しょ国

2022年、中国は台湾と外交関係を断ったソロモン諸島と安全保障協定を締結した。
さらに今年に入ると、同じく台湾と断交したナウルと国交を回復。今回のサミットが開催される直前には、習近平国家主席が北京で島しょ国と相次いで会談するなど、この地域で影響力を広げたい思惑がうかがえる。

一方、アメリカも2022年に島しょ国との首脳会合を開催し、安全保障上の脅威と戦うための「太平洋パートナーシップ戦略」を発表するなど、中国への対抗に必死だ。
こうした現状を、ランブカ首相はどのように受け止めているのか。

「ほとんどの島しょ国はアメリカ、中国という2つの大国と独自の関係を持っています。より平等に、バランスを取って両国との関係を維持する必要がありますが、自国のニーズにより合致した援助をしてくれる国の方に傾いてしまうのも事実です。
どちらかに距離が近づきすぎているように見えると、周りの国は、それが地域の不安定化につながると心配するかもしれません。その気持ちはよく分かりますが、彼らはただ、現実的にニーズのある開発や援助を受け入れているだけなんです」

米中の対立に巻き込まれていると感じることはないか尋ねると、「あるかもしれないが、大国との付き合い方においては現実的になる必要がある」と冷静な見方を示すランブカ首相。自国の発展のため、難しい舵取りを迫られている島しょ国の指導者らの苦悩が垣間見えた。

「借金漬けで言いなりになることは避けたい」インフラ投資の恩恵を享受する一方で葛藤も

中国が存在感を強めているのは、フィジーも例外ではない。首都スバでは、中国企業によるマンション建設や、橋などのインフラ投資が積極的に行われている。

ランブカ首相はこうした支援に感謝する一方、常に心がけていることがあるという。

「フィジーが開発パートナー国に多額の借金を抱えてしまうことで、相手国の言いなりにならざるを得ない状況に陥らないよう気を付けています。私たちは主権国家として独立性を維持したいのです」

こうした状況にあるのはフィジーだけではないとしたうえで、「すべての国は、支援を受ける際には自国の安全保障について考慮する必要がある」と強調した。

そのフィジーも前政権は非常に中国寄りとされ、2011年に両国は警察協力協定を締結。中国から派遣された警察官をフィジーで受け入れるなどしてきた。
しかし、2022年にランブカ首相が就任して以降は、安全保障分野で中国との距離感を模索する動きが続いている。
現在、フィジーに中国の警察官は一人も駐在しておらず、民主主義制度や司法制度がフィジーとより近いオーストラリアとの協力を強めているという。

福島第一原発の処理水放出に理解の声 日本とフィジーは「戦略的パートナー」

「太平洋・島サミット」の期間中、岸田総理が島国のトップらとの会談で必ず行ったのが、東京電力・福島第一原発の処理水放出に関する説明だ。総理が「今後も安心を高めていく」と伝えると各国はそろって歓迎の意を示した。

しかし放出が発表された2021年当時、島しょ国からは強い反発の声があがった。理由の一つに、この地域でかつてアメリカやイギリス、フランスといった大国が核実験を繰り返し、住民が被ばくしたという悲劇の歴史がある。

フィジーでも当初、処理水の放出に大臣が懸念を表明し、国内では反対デモが起こった。しかしその後、IAEA=国際原子力機関が科学的な根拠に基づき安全性を確認したと発表すると一転して支持を表明。その後、中国が「核汚染水」などと不安を煽る発言を繰り返す中でも、日本の方針に理解を示す立場を貫いてきた。

サミットを終え、他の島しょ国の不安も払しょくされたと思うかランブカ首相に尋ねると、「そのはずだ。我々は(日本で)毎日刺身を食べていたしね」と冗談交じりで答えた。

「信頼関係を固め直すこと」が一つのテーマとなっていた今回のサミット。岸田総理は閉幕後の共同記者発表で「日本と島しょ国地域の関係を更なる高みに引き上げ、未来に向けて共に歩む決意と具体的な道のりを示すことができた」と強調した。

インタビューの最後、日本とフィジーは戦略的パートナーシップ関係にあると思うか尋ねると、ランブカ首相は「イエス」と答えた。

「私たちは同じ思いを持ち、同じ一つの地域にあります。日本に影響を与えるものは私たちに影響を与えるし、逆もまた然りです。私は『平和な太平洋』を訴えてきましたが、日本と一緒なら出来ると思います」

目まぐるしく移り変わる国際情勢の中、日本は島しょ国と時間をかけて積み重ねてきた信頼を失うことがないように、これまで以上に丁寧な対話と連携が求められている。

政治部外務省担当
大﨑雅基

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