Amazonが処方薬のネット販売開始 メリットと課題を医療ジャーナリストに聞く【ひるおび】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-07-24 15:53
Amazonが処方薬のネット販売開始 メリットと課題を医療ジャーナリストに聞く【ひるおび】

処方薬をオンラインで

ネット通販大手Amazonで、処方薬をオンラインで受け取れるサービス「Amazonファーマシー」が7月23日から始まりました。
アマゾンジャパンの前田宏バイスプレジデントは、
「薬局によるオンラインでの服薬指導から処方薬の配送までを一気通貫で利用できる」と説明しています。

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通常、病院に行った後薬局に行って薬をもらいますが、処方箋をもらった後薬局に行かずに薬を受け取れるというシステムです。

利用方法・料金は

「Amazonファーマシー」は、どのように利用するのでしょうか。

◆病院で受診もしくはオンライン診療を受けた後、電子処方箋をもらう
※電子処方箋を扱っているか確認が必要

◆アプリで電子処方箋を登録する
・Amazonのアプリから「Amazonファーマシー」のページを開き電子処方箋をアップロード
・薬局を選んで、オンラインの服薬指導を予約
(全国のドラッグストア、ウエルシアなど約2500の薬局と提携)

◆予約時間にオンライン(ビデオ通話)で服薬指導を受ける

◆処方薬が配達される
・最短で当日発送
・配送料金は0円から600円程度
・置き配は指定不可

このサービスで利用者として想定しているのは・・・
▼慢性疾患など定期的に処方薬を必要としている患者
▼移動の手間や待ち時間を減らしたい子どもを持つ親や忙しいビジネスマン など

医療ジャーナリストの森まどか氏は、
「Amazonが参入したことでオンライン処方薬のハードルが低くなり、利用しやすくなる人も増えるのでは」と話します。

医療ジャーナリスト 森まどか氏:
医療業界は「デジタル技術に非常に疎い」というのが課題になっていますが、そこに圧倒的な資金力と配送のネットワークを持っているAmazonが参入することによって利便性が非常に高まると思います。
ただ、今すぐに広がるというより、デジタルネイティブの世代や普通にアプリやネットを使っているような世代がもう少し先になって薬を必要とすることが多くなる。
その5年後10年後を見通して、こういった参入が盛んになってくるのかなと思います。

恵俊彰:
症状にもよるんですかね。

医療ジャーナリスト 森まどか氏:
落ち着いている症状で、薬をもらいに行く手間を省ける人は非常に便利になると思います。
今薬局で受付をしてから薬が出るまでにかかる時間は13分ぐらいと言われています。
そこにさらに前の方がいると待ち時間が増え、会計が増えとなると30分前後というケースもあるので、そういったところがなくなり便利に感じる方は多いと思います。

「待ち時間なく受け取れるなら助かる」街の人はー

60代 会社員
「動くのが厳しくなる高齢者になったときに、病院に行って薬をもらわなきゃいけないというのは結構大変になってくるかもしれない。
そのときに処方箋で薬がもらえるというのは、確かにそれは便利だなと思います」

30代 母親
「風邪じゃない症状で病院に行くこともあるので、ウイルスをもらっちゃわないかなと心配。待ち時間なく受け取れるなら助かる」

実際、オンライン診療で処方箋を受け取ったことのある八代弁護士はー

弁護士 八代英輝:
僕の場合は院内処方だったので、こういった段階を踏まずにオンラインでお医者さんの診察を受けてそのクリニックから薬を送ってもらいました。
花粉症など慢性疾患で飲んでいる薬は言われることも毎回同じですし、クリニックに行って待って、薬局でまた待ってってなると、半日近く潰れちゃうのですごく便利だなと思いました。

医療ジャーナリスト 森まどか氏:
これを契機に医療DXが押し進むことを、国はおそらく期待していると思うんですが、もちろん課題もあります。

オンラインでの処方薬販売 森氏の考える課題は

オンラインでの処方薬の販売が広まったのは、新型コロナの流行でオンラインの服薬指導が解禁されたことがきっかけでした。
さらに2023年1月から「電子処方箋」の運用が始まったことで、規制の緩和が進みました。
ただ、電子処方箋の導入率は、病院で全体の1.5%、診療所で2.1%、薬局でも31.7%となっています。(日本医師会総合政策研究機構より)

森氏は以下の課題を挙げています。

▼オンラインの導入にはコストがかかるので、コストをかけられない地域の町の薬局が淘汰されてしまう可能性もある

▼薬局は地域の見守りの場でもあるので、システム化しすぎると高齢者の健康支援の場がなくなってしまう懸念も

医療ジャーナリスト 森まどか氏:
これから高齢者が増えてくる中で、地域全体で高齢者の健康を支えるということが重要視されています。
あまりにシステム化されてしまうとコミュニケーションの場がなくなったり、薬局と医療機関の連携や、薬局と介護の方・自治体の方との連携、情報交換の場がなくなってしまうので、高齢者の健康を見守っていく機能が低くなってしまう可能性はありますね。
だからライフスタイルに合わせて、目的別にどのように使っていくかが重要です。
選択肢が広がったという点では非常にいいことですが、こうした課題もあるということを知っておきたいですね。

(ひるおび 2024年7月24日放送より)
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<プロフィール>
森まどか氏
医療ジャーナリスト
日本医学ジャーナリスト協会 正会員
医療問題などを数多く取材し発信

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