ロシアによるウクライナ侵攻開始からまもなく2年半。
この戦争では、私たちの身近にある「ドローン」がなくてはならないものになっている。
「最先端の科学」がいま、戦争の姿を大きく変えている。
【写真を見る】「攻撃にためらいはない」最前線のドローン部隊に潜入…兵士の言葉は【科学が変えた戦争】
戦争の姿を一変させた「攻撃用ドローン」
7月、ウクライナ側が公開した映像が世界に衝撃を与えている。
上空から捉えられたのは1人のロシア兵。
そこに、爆弾を抱えたドローンが忍び寄る…。
次の瞬間、ロシア兵に向かっていき、爆発。
ドローンが一変させた戦争の姿だ。
ロシアの中枢・クレムリンにも。モスクワの高層ビルにも。
そしてロシアの軍艦を破壊したのも…ドローンだった。
ウクライナのゼレンスキー大統領は
「無人システムは陸海空の戦闘で有効性を証明した」と強調する。
一方、ロシア側もドローン頼みだ。わずか数十センチほどの攻撃用ドローンを開発した。
プーチン大統領も「注目されるのは無人機だ」と、ドローンの重要性を強調する。
標的に爆弾を落としたり、爆弾を抱えたまま突っ込んだり…
こうしたドローンの機能を最大限活用し、両国の戦闘は続いている。
操作する様子はまるでゲームのようだが、これで人の命が奪われているのだ。
ウクライナのドローン部隊に密着
ロシアによる侵攻が続くウクライナ北東部、ハルキウ州。
そこで、最前線で戦うウクライナのドローン部隊への同行取材が許された。
午後9時、現れたのは兵士たち約10人。
ウクライナ兵
「ドローンもっとあった?他に何か持っていく?」
「これで全部」
これから向かうのはロシアとの国境地帯。つまり戦場だ。
増尾聡記者
「今から出発していきます。ここから30分ほどの最前線に向かっています」
しかし、5分後、車は急停止する。
ウクライナ兵
「今、上空にロシア軍のドローンがいるので去るまで待つしかない」
上空にロシアのドローンが飛行しているのが確認され、待機命令が出たのだ。
ここは戦場、こうした事は日常茶飯事だ。
増尾聡記者
「ここにずっと滞在していることもリスクで、心が落ち着かない時間が続いています」
身を隠すこと約50分。
増尾聡記者
「今から出発ということです。許可が出たということです」
ドローンが去ったことを確認し、すぐに出発する。
そして到着したのは、ドローン部隊の拠点。ロシアとの国境からわずか5キロの地点だ。
増尾聡記者
「ここがウクライナ軍のドローン部隊が活動する拠点になります。
おそらく民家の貯蔵庫のような場所でしょうか。拠点に無事、着くことができました。」
案内された地下室は、10畳ほどの広さの場所だった。
部屋の一角にあるモニターには、戦場を飛ぶ、ドローンからの映像が映し出されている。
この部屋から遠隔操作で攻撃を行っているのだ。
作戦で使うのは暗視カメラ付きのドローンで、10kmまで飛ぶことができ、最大3kgの爆弾が搭載可能だという。
操縦するのは、コスタ伍長(30)。5か月前、この部隊に配属された。
私たちがコスタ伍長にインタビューをしていると、突然、司令部から連絡が入った。
司令部
「さっき“位置情報”を送った」
ウクライナ兵
「了解。ロシア兵は建物にいるのか?」
この瞬間から、自爆ドローンを使った作戦が開始される。
屋外では、爆弾を積んだドローンの設置作業が、あわただしく始まった。
増尾聡記者
「いまドローンが設置されました。これが飛んで行き、ロシア軍の戦車や人に突っ込んでいくということです」
そしてドローンは飛び立った。
地下室に戻ると、コスタ伍長はゴーグルを付け、ドローンからの映像を確認していた。
隣のナビゲーター役の指示を受けながら、コントローラーで操縦する。
ドローンはロシア軍の拠点に向け、一気に飛んでいく。
コスタ伍長
「あの小屋を攻撃するか?」
ナビゲーター
「一軒目のだよね?」
コスタ伍長
「あの屋根のないところが地下室の入り口かも」
コスタ伍長らは狙いを定める。
コスタ伍長
「目標に入るぞ!」
標的に突入。その瞬間、映像は途切れた。
ナビゲーター
「うまくいった」
コスタ伍長
「2キロの爆弾だから、激しく爆発したのは間違いない」
増尾聡記者
「中にロシア兵がいたとしたら?」
コスタ伍長
「不運だったね・・・とても」
増尾聡記者
「実際の人間に爆弾をヒットさせるのはどんな気持ち?」
コスタ伍長
「分からない…。嬉しいとか、悲しいとか、そういう感情ではない。強い感情はない。ドローンであれば、ほとんどの人は標的を攻撃することにためらいを感じないと思う」
ウクライナのドローンを支えているのは3Dプリンター
ウクライナでは今、ドローンの大量生産が始まっている。
増尾聡記者
「ここがまさに、ドローンのパーツを作る工場ということになります」
部屋にあるのは15台ほどの3Dプリンターだ。
これで部品を簡単に作ることができるという。
スタッフ
「今日は発電機を使って3Dプリンターを7台稼働させます」
製造されているのは、ドローンの発射台と、上空から爆弾を落とすための部品「ドロップ」だ。
ダミーの爆弾で試してみると…
スタッフ
「こんな感じです」
製造にかかる費用は、1機あたりわずか7万円。
人を殺す兵器はいまや、安く簡単に作ることができる。
ドローン100万機の製造目指すも 司令官「まだ足りない」
ウクライナは2024年6月、「ドローン専門部隊」を設立。
100万機のドローンの製造を目指している。
それでも司令官は「まだ足りない」と話す。
ウクライナのドローン部隊司令官
「30万機のドローンで足りるだろうか?いいえ。100万機のドローンで足りるだろうか?いいえ。200万機では?いいえ」
「戦場ではドローンの多い方が勝つ」「ドローンは革命をもたらしたんです」
(TBSテレビ「つなぐ、つながるSP 科学が変えた戦争 1945→2024」8月11日放送)