思春期の子どもたちが悩みごとを相談できる「街の保健室」という民間の施設が東京都内にあります。学校の友だちや家族にも言いづらい性の悩みなど、様々な相談が寄せられています。
【写真を見る】「病院に来てからでは遅い」家族や友人にも言いづらい「街の保健室」に寄せられる“身体”や“性”の悩み【Nスタ解説】
子どもの相談所「街の保健室」 “身体”や“性”の悩み
齋藤慎太郎キャスター:
2024年4月にオープンした街の保健室「KuKuNa」では、主に中高生から25歳前後の男女を対象に無料もしくは低額で心や体、性の悩みなどが相談できるそうです。
ここでは看護師や医師が待機し、▼人間関係や家庭での悩み ▼性に関する知識 ▼性感染症予防などを学ぶことができ、避妊具や生理用品なども設置されているということです。
身体に関する悩みがあるかという調査では、▼男子高校生52.0%で睡眠不足、体型、体毛、体臭、性欲、性癖など、▼女子高校生80.0%で、体型、体毛、体臭、生理痛、胸の大きさなどという答えがあったそうです。(※1)
井上貴博キャスター:
このような悩みは、近しいがゆえに親には言いづらい、学校では性教育がタブー視されているところもありますので、医療知識のある関係者がいる施設はとても重要だと思います。全国的に増えているのでしょうか。
産婦人科医 宋美玄さん:
そうですね。日本では十分な性教育が行われず、保健室の先生がその役割を果たしていることもありますが、このような施設は日本でも注目されていて、東京都などの自治体、民間、またクリニック併設や、NPOが運営しているところなど、全国的に増えています。
ホラン千秋キャスター:
このような施設が身近にあるとすぐに相談ができるのでありがたい場所だと思いますが、課題などはあるのでしょうか。
産婦人科医 宋美玄さん:
アクセスの問題は大きいと思います。昔も電話相談などがありましたが、今は自治体が契約してオンラインでできるようになっているところもあります。今後もそのような流れは広がっていくのかなと思います。
(街の保健室のような施設の)本場スウェーデンでは診察を受けたり、検査をしてクラミジアなどの性感染症などと診断されたら投薬治療もできるのですが、日本ではまだ規制もあるので、「相談」までしかできないのが現状です。実際に薬などの治療に結びつくと、もっと実践的なのかなと思います。
井上キャスター:
治療に結びつけるための規制とはどのようなものがありますか?
産婦人科医 宋美玄さん:
やはり診療ではないでしょうか。日本では診療を受ける場合、18歳未満の方は“親と医療機関の契約での診療”という形になりますので、施設で知識を得たり、生理用品を手に入れたりできますが、まだまだそのあたりの壁があると思います。
保護者世代も性や生殖に関する知識の啓発を
齋藤キャスター:
「性に関する身体のことを親子で話し合ったか」という調査によりますと“経験なし”が▼男子高校生79.0%、▼女子高校生61.0%で、主な理由として「気まずい」「恥ずかしい」といったことが挙げられたそうです。
また保護者の方も生殖や性に関する知識を『正しく伝える自信がない』と答えた方が73.0%となり、子ども・大人とも性に関して問題があることがわかりました。(※1)
街の保健室「KuKuNa」の幸崎若菜室長は「家庭や学校だけでなく、悩みや不安を相談できる場所が“当たり前に存在”していかない限り、子どもの声を拾い上げるのは難しい。“街の保健室”の存在を知っていろんな人に活用してもらいたい」と話しています。
井上キャスター:
親御さんの意識も重要ですね。実際にこども園や保育園で性教育に関する時間を設けているところも増えているそうです。
一方、施設側は運営をしていく上でボランティアだけだと持続可能は難しいと思います。自治体の補助などがあるかもしれませんが、運営資金などはどのようになっているのでしょうか。
産婦人科医 宋美玄さん:
自治体の補助や、クラウドファンディングなどがあります。クリニック併設型ではクリニックの持ち出しで運営されているところもあります。そういった運営資金の問題と、保健師を知ってもらうという広報ですね。こちらの課題もあると思います。
これは日本の性教育が足りないという部分を民間や自治体が補っているので、やはり公的な資金の投入がされてしかるべきなのではないでしょうか。
また保護者の世代も性教育を受けてないので、教えるどころじゃない。性や生殖に関する知識の啓発は全ての年代に必要だと思います。
(※1)「メルクバイオファーマ株式会社 第8回 Yellow Sphere Project調査」
対象:全国の高校生男女200人/高校生の親400人
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<プロフィール>
宋美玄さん
産婦人科医
2児の母
女性の健康などのテーマを発信