’24年7月より、TBS赤坂ACTシアターにて舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』東京公演が上演中です。ロングラン作品として今年で3年目を迎えた当公演は、先日総観客数が100万人を突破し、快挙を成し遂げました。
また今年の公演からは新ハリー・ポッター役として俳優の平方元基氏が抜擢され、さらなる注目が期待されています。
そこで、舞台俳優として数多くの作品に出演し着実にキャリアを積んでいる平方氏に、今回のハリー役にかける思いや意気込みなどを語ってもらいました。
新ハリー役に「マズいことになったな(笑)」
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』は、ハリー・ポッターとホグワーツ魔法魔術学校の仲間たちが魔法界を去ってから19年後の世界を描いています。成長し三人の子の父親となったハリー。その次男のアルバスがホグワーツ魔法魔術学校に入学することになるのですが、ここで再びハリーの周辺にさまざまな問題が起こり――。
この舞台は、’16年の7月にイギリス・ロンドンの劇場「パレス・シアター」で初演。その後は、これまでアメリカ・ニューヨーク「リリック・シアター」や、オーストラリア・メルボルン「プリンセス・シアター」、カナダ・トロント「エド・マービッシュ・シアター」など、世界の主要都市で公演が行われました。
そして日本では東京公演として、’25年2月まで東京赤坂にある「TBS赤坂ACTシアター」にて上演されます。
スラッと長身で舞台映えしそうなスタイルが人目をひく平方氏。2008年の俳優デビュー以来、ミュージカル俳優や舞台俳優として数々の名作に出演し、注目度を集めています。
そんな平方氏が今回ハリー役として出演する前は、作品に対してどんな印象を抱いていたのでしょうか? 時折はにかんだ笑顔を浮かべながら、平方氏は次のように答えます。
「イギリス公演が始まった年、たまたま旅行でロンドンを訪れていて観劇したことがあったんです。その時、ハリー・ポッターの世界観は舞台ではこんな風に表現されるんだ、演劇の力ってすごいんだ、と感銘を受けました。そして、そんな世界的に有名な作品が日本人のキャストによって同じように実現できる、というところに“日本の演劇界の底力”を感じたんです」
そして見事オーディションによってハリー役に決まった平方氏ですが、さてその当時の心境はどうだったのでしょう。平方氏は冗談をまじえながらも演劇に対する情熱を語ります。
「嬉しかったのはもちろんですが、同時に『マズいことになったな……』と(笑)。歴代の先輩方と話す機会があったのですが、ひとつ間違うと人が死んじゃうような激しい演出もあるとのことで、その大変さを聞いていましたから。ですが、演出家は海外の方ですし、そんな自分の事を知らない方たちと一緒に1から芝居を作っていくというのは自身にとってもいい経験になるだろうと、思い切って挑戦しようと思いました」
キャストのチームワークの良さが良い舞台を作り上げる
7月からの公演まで約2か月間の稽古を続けてきたという平方氏。ほかのキャストたちとのチームワークについては気になるところですね。
「大所帯となると人間関係でむずかしいところはたくさんありますが、稽古期間中や上演中の現在もとても楽しいです。周りは、僕が入る前からもう3年目にもなるキャストたちですし、ひとことでいうと“プロの集まり”。仕事を怠らない姿勢を持ちつつ、他のキャストへのリスペクトも忘れない。そういう雰囲気って舞台にもあらわれると思うんですよね」
東京公演ではハリー役で同じく俳優の吉沢悠氏とのダブルキャストで演じている平方氏。吉沢さんとはどのようなコミュニケーションをはかっているのでしょうか。
「ライバル関係なのでは?と思われがちですが、ヒサシくん(吉沢氏)とは毎日のように連絡を取り合う仲。ヒサシくんのハリーの演じ方を見たから僕もこう演じなきゃ、そしてその逆も……というのはなく、お互いに自分なりのハリー像をもって切磋琢磨できていると思っています。公演が終わったあとに『あそこの場面大変だったね』とか『とても良かったよ』などとお互いに感想を話したり、時には相談したりなど、いい信頼関係ができていると思います」
平方ハリーが伝えたい舞台の見どころとは?
『ハリー・ポッターと呪いの子』は、37歳の大人に成長したハリーを中心にストーリーが展開されます。そこでハリーに直面するのは、ホグワーツ魔法魔術学校に入学が決まった次男のアルバスとの確執。この場面を演じるにあたり、平方氏が見どころを語ります。
「どの家庭でも幼い時に両親をはじめ大人たちと対立したことってあると思うんですよ。だけどいざ自分が大人になった時に、果たしてちゃんとした大人になれているのか?そもそも“大人になること”ってどういうことなのか?と葛藤することも。この舞台はこれが大筋のテーマになっています。ハリー・ポッターの世界って単純に小さい子どもが悪を倒す、というものだけではなくダークな部分も色濃く描かれている作品だと思うので、その部分に注目してもらいたいですね」
舞台公演は’25年2月まで
「客席からの反応によって、その日の舞台の色合いが変わっていくのがおもしろい」という平方氏。夏休み中は子どもたちの観客が多く、時にはじまる舞台と観客との掛け合いも楽しいのだとか。また、「舞台公演ならではの照明にこだわった演出も見どころのひとつ」といいます。
イギリスの小説からはじまり、映画となり、今や日本人が演じる舞台にまで展開を続ける『ハリポタ』シリーズに、今後も目が離せないですね!
【概要】
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』
場所:TBS赤坂ACTシアター
〒107-8006
東京都港区赤坂5‐3‐2 赤坂サカス内
期間:’25年2月まで
※チケット購入方法等、詳細は公式サイトをご参照ください
https://www.harrypotter-stage.jp
<取材・撮影・文/櫻井れき>