長いしっぽに短いしっぽ、まっすぐなしっぽ。猫のしっぽにはいろいろな形があり、なかには「かぎしっぽ」と呼ばれる形があります。猫のスラリと伸びたしっぽも魅力的ですが、くの字に曲がったかぎしっぽも、実は世界中にファンを持つ愛されしっぽなのです。かぎしっぽは、どうして曲がってしまうのでしょうか?この記事でくわしく解説しています。
「かぎしっぽ」ってどんなしっぽ?
かぎしっぽとは、猫の尾の付け根から先に向かう途中で、くの字に曲がったり、ねじれたりしているしっぽのことをいいます。
猫のしっぽの長さがそれぞれ違うように、曲がり方にもいろんなバリエーションがあります。
フック型
しっぽの先端がフックのように、くの字に曲がっている形です。軽く折れ曲がっているように見えます。ほどほどの長さもあるスタンダードな「かぎしっぽ」です。
ジグザグ型
しっぽが途中で何度も曲がっている形です。変形が複数箇所にあり、右や左に曲がりが出ていることが特徴です。こちらもある程度の長さを持つしっぽです。
ループ型
ぶたのしっぽのように、丸くクルンッと曲がっているしっぽです。このタイプは短い尾の猫にときどき見られます。数的には、あまり多くはありません。
いずれもかぎしっぽの一種ですが、フック型は3タイプのなかでも特に多く見られるタイプです。
猫が「かぎしっぽ」になる主な理由は2つ
猫が「かぎしっぽ」になるには、2つの理由があります。
ひとつは、遺伝子の影響で先祖代々かぎしっぽ家系というもの。もうひとつは、幼少期のケガなどによる影響です。
1.遺伝子の影響
いま生きている猫の家系の過去に、しっぽの形成に関わる遺伝子の突然変異が起きたことが原因で「かぎしっぽ」の猫が生まれています。
猫のしっぽは、背骨の延長である尾椎(びつい)と呼ばれ、しっぽの長さによって骨が18〜20個が並んでいます。
しかし、これらの骨を作っている遺伝子に変異が起き、一部が半分しかない奇形になったり、骨同士がくっついたりすると、そこから先のしっぽがまっすぐ作れなくなります。その結果、かぎしっぽが発生するのです。
遺伝子は、親から子へ受け継がれ、その子どもたちは多少の増減を繰り返しながら、かぎしっぽを引き継いでいくのです。
この遺伝性を利用したのが、ジャパニーズボブテイルやアメリカンボブテイルです。遺伝によるかぎしっぽは、猫の健康に影響することはなく、猫本人も痛みなどはありません。また、日本では雑種の猫にもかぎしっぽが見られます。
2.ケガによる影響
猫がかぎしっぽになる原因のもうひとつは、ケガによるものです。特に子猫のときには、しっぽの骨を損傷してしまうと、表面上のケガが治ってもしっぽ自体が変形する可能性があります。
交通事故や重い物の下敷きになってしまう、人によるしっぽの乱暴な扱いなどが要因となります。骨折したあとに骨が不自然な形のまま治癒が進むと、折れ曲がった状態で固まってしまいます。
しかし、このような外傷によるかぎしっぽは極少数派です。かぎしっぽの猫はほとんどが遺伝だと考えてよいでしょう。
「かぎしっぽ」が多い地域とその特徴
猫の「かぎしっぽ」は、日本を含めた東アジアに多く見られるといわれています。この地域で「かぎしっぽ」の猫が多い理由には、遺伝的要因と文化的背景が関係しています。
タイやマレーシア、シンガポールなどの東南アジアの国々では、「かぎしっぽ」の猫が一般的です。むかしから定住していた猫たちの遺伝的特性が、世代を超えて現在まで受け継がれているためです。
日本でもかぎしっぽの猫は多く見られますが、特に長崎県ではその8割が「かぎしっぽ」といわれています。
長崎は、鎖国の中でも外国との貿易が許されていた場所であり、オランダや中国などとの交易が盛んでした。海外から多くの物資や文化とともに、猫も長崎に持ち込まれました。
特に、東南アジアや中国から渡来したかぎしっぽの猫は、長崎経由で日本中に広がったと考えられています。
世界のほかの地域でも、かぎしっぽの猫は神聖視され、幸運を引き寄せると信じられていることが多く、かぎしっぽの猫は特別に扱われ、繁殖が進んだのだろうと考えられます。
まとめ
かぎしっぽにまつわる逸話は世界中にあります。
タイでは、猫が完璧な生き物であるがゆえに、神様がその完璧さを少し和らげるためにしっぽを曲げたという話が伝わっています。
また、中国では幸運を引き寄せる猫のおかげで豊かになった村の住人が、いずれ起こる不幸を心配したところ、神様は猫に「しっぽを曲げて幸運を引っかけておけ」と命じたという話もあります。
さまざまな伝説のあるかぎしっぽですが、多くが遺伝による奇形であり、猫の健康上には問題ありません。一見、まっすぐなしっぽでも、触ってみると先端の方に曲がりを持つ猫もいます。
猫が嫌がらなければそっと触ってみてください。もしかしたら、その猫は、神様から命じられた幸運を引っかけている猫なのかもしれません。
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