「ガザでの戦闘が続く限りレバノンやイエメンでの攻撃は続く」ガザ紛争から1年 専門家と支援者が考える戦火の行方

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2024-10-10 08:00
「ガザでの戦闘が続く限りレバノンやイエメンでの攻撃は続く」ガザ紛争から1年 専門家と支援者が考える戦火の行方

ガザ紛争の開始から1年。中東情勢が混迷を深める中、戦火の行方はどうなるのか、東京大学特任准教授の鈴木啓之さんとパレスチナ子供のキャンペーン海外事業チーフの中村哲也さんと共に考えます。

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(聞き手・荻上チキ、南部広美)

毎日新たな事態が生じるという認識で動いてきた

南部広美(以下、南部):
東京大学の特任准教授である鈴木さんは中東地域研究の専門家であり、ガザやパレスチナ問題に精通しています。著書にも『ガザ紛争』や『パレスチナ問題』があり、この1年間の戦闘についてどうお考えですか?

東京大学 特任准教授 鈴木啓之さん(以下、鈴木さん):
そうですね、過去の事例に照らして考えると、ここまで長期化するとは想像もできませんでした。この1年、毎日新たな事態が生じるという認識で動いてきました。

荻上チキ:(以下、荻上)
今回の長期化の背景要因についてはどうお考えですか?

鈴木さん:
まず、ネタニヤフ政権の強いリーダーシップが大きいと思います。戦時内閣の解散後も、ネタニヤフ首相が一手に戦闘を指揮しています。また、野党勢力が足並みを乱しているため、政権交代の可能性も薄いです。

荻上: 
ガザ侵攻に加え、レバノンやイランとの関係も悪化していますが、この点についてはいかがですか?

鈴木さん: 
そうですね、ガザでの戦闘が続く限り、レバノンのヒズボラやイエメンのフーシ派からの攻撃が続くでしょう。これが最終的にはイランとの対立に発展するリスクもあります。イスラエルはこれらの組織の背後にイランがいると見ています。

そう考えますと、レバノンでの戦闘が過去の事例と同じように数ヶ月で終わるというのはあまりにも楽観的すぎるように思います。懸念すべき戦闘が起きているということを認識すべきだと思いますね。

レバノンでも市民の犠牲が出ている現実を直視すべき

荻上:
なるほど、攻撃の手段や範囲というのも拡大しており、ヒズボラ関係者や民間人に対する攻撃も続いています。こうした手段の拡張についてどうお考えですか?

鈴木さん:
通信機器を使った攻撃にはとても驚かされました。ヒズボラが配布した通信機器に爆発物が仕込まれていたとのことです。また、ヒズボラの指導者ナスララ書記長に対する殺害未遂もあり、過去には前例のない攻撃手段が取られたと思います。

荻上: 
イスラエル軍は民間人を巻き込まないように限定的に攻撃していると説明していますが、この説明と実態の乖離についてはどう思われますか?

鈴木さん:
ガザ地区での状況を1年見てきましたが、レバノンでも市民の犠牲が出ており、インフラも壊されている現実を直視すべきです。

南部: 
リスナーからメールが届いています。「ガザ侵攻から1年、パレスチナの命の犠牲と戦争の拡大が胸を痛めます。国連や国際司法裁判所は何のためにあるのでしょうか?」

荻上: 
このメールについて鈴木さんのご意見は?

鈴木さん:
 国際刑事裁判所(ICC)や国際司法裁判所(ICJ)が重要な役割を果たしていますが、国際社会全体がこの問題に対してどれほど行動を起こせるかが課題です。

ガザ地区に入る物資の量は激減 薬品不足も深刻に

パレスチナ子供のキャンペーン海外事業チーフ 中村哲也さん: (以下、中村さん)
最近は他の子供たちの学習機会が、この1年にわたって失われてしまったという現実があります。避難キャンプに集まっている子供たちに、紙や鉛筆を用意し、寺子屋のような勉強の場を作る活動も行っています。

荻上: 
現地に物資を届けることが困難だったと聞いていますが、この点はいかがでしょうか?

中村さん:
ガザ地区に入る物資の量が激減しました。以前は1日500台のトラックがガザに入っていましたが、5月以降その数が大幅に減り、200台以下になりました。エジプトやヨルダン経由で一部物資を入れていますが、まだまだ厳しい状況が続いています。

荻上: 
また、メンタルヘルスや衛生環境の悪化も懸念されています。この点についてはいかがですか?

中村さん:
衛生環境や栄養状態の悪化が人々の健康に深刻な影響を与えています。野外クリニックを設置し、妊産婦や乳幼児への支援を行っていますが、薬品の不足が深刻です。

荻上:
現地のスタッフからはどのような状況が伝えられていますか?

中村さん:
非常に厳しい状況の中で、スタッフたちは一生懸命活動しています。しかし、300名以上の人道支援従事者が戦争の犠牲になりました。スタッフたちは身の安全を優先しながらも、支援を続けています。

ガザの中で多くの病院やクリニックが機能停止していますが、一部ではまだ手術やケアを行っているところもあります。負傷した子供たちを日本に受け入れるために、日本政府が「命のビザ」と呼ばれるビザを発給するなど、日本だからこそできる支援があればと考えています。

荻上: 
鈴木さん、我々ができる支援についてはどうお考えですか?

東京大学 特任准教授 鈴木啓之さん:
直接的な支援としては、国際NGOや国連組織に対する寄付が最も効果的だと思います。また、日本社会でもパレスチナやイスラエル問題への関心が高まっています。今後もこの関心を持ち続け、現地の人々を理解するための学習が必要です。

荻上:
現地で活動している方々への寄付や支援が重要だということですね。

===
<聞き手>


荻上チキ:
評論家。メディア論を中心に、政治経済、社会問題、文化現象まで幅広く論じる。NPO法人「ストップいじめ!ナビ」代表、「社会調査支援機構チキラボ」所長。著書『ウェブ炎上』『いじめを生む教室』『みらいめがね』など。

南部広美:
フリーアナウンサー。日本短波放送で株式市況、経済ニュースを担当後、J-WAVE ニュース室勤務 アナウンサーとして7年間勤務。 J-WAVE “ Jam the world”、“Tokyo コンシェルジュ”、“みうらじゅん安西肇の GOLDEN TIME”NHK BS “こだわりライフヨーロッパ”ほか、CMナレーションなど多数。

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