今や家庭に一台あるのは当たり前のようになった感のあるウォーターサーバー。ちょっと昔なら、取引先のロビーに置かれているのを見つけて「この会社、景気がいいんだろうな」なんて判断の尺度のひとつにしていた人もいたかもしれませんが、ここまで家庭に普及したら、視界に入っても特に何も感じなくなったはず。そんなウォーターサーバーが急速に普及したきっかけは、2011年の東日本大震災。というのも、震災による水不足を経験して一般家庭での備蓄水需要が急速に高まり、さらに水道水から放射線物質が検出され、水に対する人々の意識が変わったからです。その結果、ウォーターサーバー市場規模はこの10年で約2倍にまで拡大しました。
ところが近年、ペルフルオロアルキル化合物とポリフルオロアルキル化合物を総称した有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」による水道水や天然水への水質被害で消費者の意識はさらに変化。水道水と同じくウォーターサーバー内部の衛生面も危険と感じているようです。そこで13年連続宅配水お客様満足度No.1の「クリクラ」を展開する株式会社ナック(https://www.nacoo.com/)では、ウォーターサーバー利用者1100人への意識調査を実施し、消費者の衛生管理に対する意識と、見落としがちなウォーターサーバー内部の衛生面の実態を明らかにしました。
約6割が水道水を飲むことに抵抗を感じている
「水道水を飲むことに対して、どのような印象を持っていますか?」という質問に対し、ウォーターサーバー利用者の約6割が水道水を飲むことに抵抗があるという結果に。近年、全国でPFASの検出が相次ぎ、政府も対応策として「水の安全確保」への実態把握と対応策をかかげていることもあり、今後も消費者の意識は変異していくのではないかと予想できます。
約7割がウォーターサーバー内部の衛生面に不安を感じている
「ウォーターサーバー内部(タンク・配管等)の衛生面に不安を感じたことはありますか?」という質問に対し、約7割が感じていると回答。この調査結果は業界にとっても重要な課題を提示しているといえそう。ウォーターサーバーの水を安心して利用してもらうためには、各メーカーからサーバー内部の衛生面についての正しい情報を発信していく必要があると考えられます。
約8割が自身でウォーターサーバーの手入れをしたことがある
「使用しているウォーターサーバー(表面本体・給水口等)をご自身でお手入れしたことがありますか?」という質問に対し、約8割が自身でウォーターサーバーの手入れを行っているという結果に。これは消費者の衛生意識の高さを示しているといえ流でしょう。しかしながら、その多くがウォーターサーバー本体の外部に留まっていて、ここにサーバーのメンテナンス(衛生管理)に対する課題があると考えられます。
約8割がウォーターサーバー内部の定期的な手入れが必要だと考えている
「サーバー内部(タンク・配管等)の定期的な手入れは必要だと思いますか?」という質問に対し、約8割が「内部の定期的なお手入れは必要だ」と思っているようです。このことから自身で目視することが難しく、手入れするのが困難なタンクや配管などへの衛生意識の高さが読み取れます。しかしながらウォーターサーバーの構造上、専門知識がなければ内部を手入れすることは困難なため、各メーカーにはメーカー側で清掃や交換をするか、サーバー本体の構造を変えるなどの対策が求められるでしょう。
約6割がウォーターサーバー本体の交換をしたことがある。またその5割弱が衛生面が気になったと回答
「ウォーターサーバーの利用期間中に、サーバー本体の交換をしたことがありますか?」という質問に対し、約6割があると回答。またその5割弱が「衛生面が気になって交換もしくは乗り換えた」と回答したことから、ウォーターサーバー利用者の中で一定数の人が、利用を続ける中でサーバーの衛生面が気になりだしていることが読み取れます。
ウォーターサーバー内部の洗浄・メンテナンスのために、定期的にメーカー側でサーバー交換をしてもらえると安心すると利用者の約9割が回答
「メーカー側で定期的に、サーバー内部の洗浄・メンテナンスのためにサーバー交換してもらえると安心ですか?」という質問に対し、約9割のウォーターサーバー利用者がメーカーによる定期的なサーバー交換を望んでいる結果となりました。でもまだまだメーカー主体でのメンテナンス・交換が徹底されていないのが実情で、今後の業界全体の健全化のためにも、メーカー各社が内部の衛生面を保証できるだけのメンテナンスサービス等を徹底し、販売後にもウォーターサーバーの衛生管理に取り組んでいくことが求められます。
クリクラ中央研究所(R&D施設) 小林麻比研究員のコメント
1年以上お手入れをしていないウォーターサーバーでは、コックから採取した水中の細菌数が、多いもので1ml中に103オーダーまで増殖していることが明らかになっています。これは、水道水の水質基準の10倍以上の細菌数です。
これらの結果は、安心・安全を求めてウォーターサーバーを選択する消費者が多い一方で、適切なメンテナンスを怠ると、かえって衛生面でのリスクが高まる可能性を示唆しています。
古畑勝則氏(麻布大学 教授 生命・環境科学部 臨床検査技術学科)のコメント
ウォーターサーバーを利用し続けると、どうしても内部に汚れが蓄積し、それをメンテナンスによって除去しないと細菌が増殖します。細菌が増殖するとバイオフィルム(生物膜)を形成します。バイオフィルムは細菌のすみかですから、さらに細菌汚染は拡大し、悪循環が続きます。その結果、冷水に異臭がしたり、味に変化が起こる場合もあります。こうした状況を改善するには、必ずメンテナンスが必要です。ウォーターサーバーを利用するには適切なメンテナンスは必須です。
今回の調査結果を読んでいて、記者は幼少期の実体験を思い出しました。九州にある世界有数の温泉地出身の記者は、水道をひねればミネラルウォーターのような美味しい水が出るという場所で育ちました。そんな環境のため、水は水道から出るものを当たり前のように飲んでいましたが、ある時、今は亡き祖父が「もっとうまい水を飲ませちゃる」と言って、山へ私を連れて行き、空のペットボトルに湧き水を汲み始めたのです。小学校低学年だった私は祖父の言葉を鵜呑みにして、迷うことなくその水を飲み、その後もしばらくはいっしょに水汲みに通っていました。ところが10回ほど行った頃でしょうか、水を汲んだペットボトルの内部にアメーバ状のものを発見。怖くなってそれ以来、その水を飲むことはやめてしまいました。ウォーターサーバーの水は天然水と銘打っていることが多いですが、そんなトラウマから記者は完全に安全を信じなくなりました。でもよくよく考えたら、祖父は10回の水汲みの間にペットボトルを一度も洗ってなかったのです。そう考えると、水が悪いのではなく、水を入れた容器(ウォーターサーバーの場合は本体内部)の手入れが重要なのではないでしょうか。多くの人たちがウォーターサーバーを利用する現在、健康のためにも適切な手入れを施して安全な水を飲んでほしいと思いました。
今回調査を実施したクリクラでは、サービス開始時よりメンテナンスに力を入れているそうです。ご家庭では対応が難しい箇所については、ウォーターサーバーのメーカーや専門業者による「メンテナンスサービス」を利用することも効果的だと思いました。この機会に、メンテナンスサービスに力を入れているメーカーを調べてみてはいかがでしょうか?
【調査概要】水の安全性と衛生管理に関する意識調査
調査期間/2024年9月27日〜10月4日
調査方法/大手リサーチ会社によるインターネット調査
調査地域/全国
調査対象/20代以上の男女215,060名から、ウォーターサーバー利用中の方を選出して本調査を実施
※株式会社ナック調べ