最近は飼育環境の良さなどから、20歳を超えるご長寿猫も少なくありません。しかし、猫の長寿は長く一緒に暮らせる反面、加齢にともなう健康上の懸念があります。認知機能低下もそのひとつです。猫の行動は人間の知的行動と異なるため、変化に気づくのは簡単ではありません。今回紹介する猫の認知症の初期症状をチェックするようにしましょう。早期発見と適切なケアにつなげることができるでしょう。
猫の認知症とは?
猫も長寿になり、認知症になることがわかっています。おもな原因は、加齢による脳細胞の死滅です。
猫の認知症では、人間と同様に思考や判断などの認知機能が低下して、日常生活にも支障をきたすようになってきます。
11歳を過ぎた猫の約25%に認知症の疑いがあるといわれています。
一度発症してしまうと根治する治療はありませんが、生活環境を整えることや薬物療法などで進行を遅らせることができます。
猫は人間とは違い、社会的に複雑な行動を必要としないため、飼い主も気づきにくく早期発見のむずかしい病気です。初期症状をうっかり見逃さないように、日頃からの観察が大切です。
要注意!猫の認知症7つの初期症状
猫の認知症の初期に見られる異常は、特別に変わった症状が出るわけではありません。飼い主さんが健康を前提に考えてしまうと、見逃してしまいやすいものが多くあります。
認知症はどの子にもなる可能性があるため、そのことを念頭に置いて日頃から観察することで、異変に気づける可能性が高まります。
1.やたらと鳴く
認知症の初期には思考が乱れます。自分や飼い主のいる場所がわからなくなり、混乱や不安から突然鳴きわめくことがあります。現実と猫の認知がズレはじめている証拠です。
多くの飼い主さんは、空腹や退屈を想定するかもしれませんが、ふだん鳴かないような鳴き方をしていたら注意が必要です。
2.部屋のなかで徘徊
脳の空間認知に異常が出ると、住み慣れた部屋のなかで迷子になってしまい、壁に向かってぼんやりしていたり、開いているドアや扉の前でどうしていいのかわからずに立ちつくしたりすることがあります。
また、場所がわからずにウロウロと歩き回る徘徊も見られます。部屋で迷子になってしまうのは認知症の特徴です。
3.トイレを失敗してしまう
猫に認知症がはじまるとトイレの問題が起こります。空間の認識ができず、トイレの段差を超えられずにトイレに失敗したり、トイレまでたどり着けずに、その場で粗相したりすることもあります。
猫は基本的にトイレの場所を忘れないものですが、一連の動作がわからなくなってしまうのです。
ただし、猫は高齢になると腎機能の低下によって尿量が増えてしまい粗相してしまうことも多いため、この症状だけでは認知症を疑うことは困難ですので、ほかの症状と合わせて判断しましょう。
4.睡眠のサイクルが変化する
睡眠サイクルの変化は徐々にあらわれてきます。夜中に目が覚めて活動的になったかと思えば、ひたすら一日中眠ってしまうこともあります。
ただし、猫は季節や年齢によって睡眠と起床の時間がバラバラであることも多いため、この症状だけでは認知症を疑うことは困難ですので、ほかの症状と合わせて判断しましょう。
5.家族や同居ペットとの関係の変化
猫が認知症になると人間の認知症と同様に思考に乱れが生じます。そのため、家族や同居のペットたちとの関係が変わってしまう可能性があるのです。
異常なほど依存的になったり、逆に警戒してオドオドしたり、安定した社会性が保てなくなるでしょう。やたらと攻撃的になり、ケンカになることもあります。
6.食欲の異常(食欲不振・過食)
猫の健康は、食欲の有無に影響します。認知症の症状が出てくると、食欲不振になることがあります。食事の時間や場所がわからなくなってしまうことも影響しています。
反対に、食べた直後にまた食事を要求する過食傾向も認知症の症状のひとつです。わからないことがストレスとなり過食になるのです。
7.刺激に対して無反応
飼い主の呼びかけや鳥の声など気持ちを掻き立てられる刺激に対して、反応がなくなり、興味を示さなくなることが増えてきます。
聴覚、視覚の感覚機能自体が低下している場合と、刺激に対する反応の仕方がわからなくなり、結果的に無反応になる場合があります。
認知症の疑いがある場合の対処法
愛猫に認知症の疑いがある場合は、まず獣医師に相談して正確な診断を受けましょう。認知症の症状のなかには、ほかの病気と重複している症状が多くあるためです。異常な行動は、動画を撮影しておくと獣医師の診断の助けになるかもしれません。
もし、認知症と診断されたら、自宅では愛猫が安全で快適に生活できるよう生活環境を整えていく必要があります。
まずは、猫の基本的な生活圏(食事、飲み水、トイレ)に行きやすいようにしましょう。可能な限り、動線を短くして、段差をなくすようにします。
ただし、認知症の猫は、これまでのやり方にこだわり、ちいさな変化でも不安に感じることがありますので、生活環境を整えるときは、猫のストレスにならないよう大きな変化はしないようにしてください。
過食気味の猫には、適切な量を小分けにして与えましょう。自動給餌機を利用すると夜間の不安鳴きを抑えられるかもしれません。
また、愛猫が落ち着ける空間で休ませることも大切です。聞こえてくる音や室温にもこだわるようにしましょう。
猫が認知症になると、これまでのようにうまくいかないことが増えて、猫も飼い主もイライラを起こしやすくなります。忍耐強く対応していくためにも、家族全員で協力して一貫したお世話をするようにしましょう。
まとめ
愛猫の病気のことは考えたくはありませんが、年齢を重ねるにつれて健康上のリスクは高くなります。そして、認知症もそのなかのひとつです。
猫の認知症はすこしずつ始まるため、初期にはまったく気づかない可能性も考えられます。ふだんから活発でよく鳴きよく動く猫ほど、認知症の変化に気づきにくいため、食欲のムラやトイレの失敗などが目安になるでしょう。
脳細胞の減少という薬では治せない認知症には、病院での対処療法と家庭でのお世話が基本になります。猫の状態や飼っている環境などによって、最適な対処法は異なるため、常に獣医師と相談しながら進めることがとても大切です。
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