今年の「新語・流行語大賞」に選ばれた“裏金問題”。少数与党になってから初めてとなる国会論戦は、「政治とカネ」が焦点となりました。今後の政治はどう動くのか、TBSスペシャルコメンテーターの星浩さんが解説します。
石破総理 企業・団体献金「不適切でない」
石破総理の所信表明演説に対する各党の代表質問。与党が過半数割れしてから初めての本格論戦です。
立憲民主党 野田佳彦代表
「いつ政治改革をお話されるのかなと…」
トップバッターは立憲民主党の野田代表。まず切り出したのは「政治とカネ」についてです。
立憲民主党 野田代表
「多くの野党が主張している企業・団体献金の廃止について、総理は所信(表明演説)では全く触れていない。改革の本丸である企業・団体献金の禁止を、なぜ議論の俎上にのせようとしないのですか」
野田氏の質問中、笑顔も見せていた石破総理でしたが答弁では…
石破総理
「政党として避けなければならないのは献金によって政策がゆがめられることであります。これには個人献金も企業・団体献金も違いはございません。我が党としては…」
議場内
(えーーー!)
石破総理
「我が党としては、企業・団体献金自体が不適切であるとは考えておりません」
JNNの最新の世論調査では、政治資金規正法の再改正をめぐり64%が「企業・団体献金の禁止」を法案に盛り込むべきと答えています。そして焦点の1つ、「年収103万円の壁」の引き上げについては…
立憲民主党 石川香織 衆議院議員
「103万円の壁を引き上げることで、地方にとっては大きな減収になるという懸念が知事や市町村長から上がっています」
石破総理
「経済や税収への影響、個人住民税の取り扱いや公平性など専門的な観点も含めて、様々考えねばならない論点があるものと認識しております」
流行語「裏金問題」がトップ10入り
小川彩佳キャスター:
代表質問が行われて、与党が過半数割れとなった衆院選後初の本格論戦が行われたわけですけれども、今後の議論の焦点の1つが「政治とカネ」ですね。「裏金問題」も流行語大賞に選ばれました。今後どうなっていくのか。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
論点は3つありまして、政治資金をチェックする「第三者機関の設置」、幹事長に10億円とか渡されていた「政策活動費の廃止」、それから「企業・団体献金の禁止」なんですが、どうやら「第三者機関の設置」と「政策活動費の廃止」は今国会で歩み寄るのではないかというふうになってきました。
ただ「企業・団体献金の禁止」については与野党も隔たり大きいので、2025年の通常国会ということで、2025年は夏に参議院選挙がありますので、参議院選挙の前までに合意ができるのかできないのかが2025年の焦点になってくると思いますね。
今国会は「大きな転換点」
藤森祥平キャスター:
その合意形成も含めて、少数与党の国会運営が始まりました。星さんは今国会が大きな転換点になると。こちらの映像をご覧ください。
これまで毎年のように見られている、新年度の税制の枠組みを決める税制調査会の会合前の風景。皆さんがいろんなもの持ってアピールしてますね。関係団体や自治体の関係者が会合に出入りする国会議員に要望を訴えてるんです。ああしてほしい、こうして欲しいと声も上げていますね。これはどうなりますか?
TBSスペシャルコメンテーター 星さん:
これもう政策決定というのは自民党が全てということを表してると思いますけども、この風景が大きく変わりそうなんです。なぜかというと、今まで自民党ではその事前審査と呼ばれる政策決定のあり方が続いてきました。これはどういうことかといいますと、自民党の中の政務調査会というところで、議員と官僚とが密室で議事録もないまま調整を進めて法案を提出する。
そうすると自民党は与党が多数ですので、国会では数の力で押し切るということなんですけれども、業界団体もどんどん陳情したり献金をしたりして、不透明なお金の温床になっていたということもあるんです。ただ今度は少数与党ですので、これができなくなったというのが非常に大きな転換点になるんです。
小川キャスター:
ということは結構国会が変わっていくということになるんでしょうか?
TBSスペシャルコメンテーター 星さん:
そうですね。例えば今、自民党・公明党と国民民主党で103万円の壁の撤廃について話し合われてますけど、実はこれも議論の中身そのものは密室なので、この事前審査に近い形なんです。これに対して、例えば立憲の野田代表はこれからは国会でオープンにやりましょうと。今までのように事前審査で密室でやるんじゃなくて。
国会で例えば政府案を出して、それに対して与野党がオープンに議論をして修正をして成立を図るというやり方に転換すべきだと言ってまして。実はこの問題は臨時国会で議論は始まっているんですけど、2025年の通常国会に向けて、私は非常に大きな政治的な論点になってくると思います。
藤森キャスター:
簡単に変わりそうにないってことですか?
TBSスペシャルコメンテーター 星さん:
今回のように国民民主党を抱き込んでまた密室でやるっていうのは、自民党と公明党がするとそっちの方が楽ですので、そちらの方に行くのか、それとも野田さんが言ってるようなオープンな透明性の高い議論に転換していくのか。これはもう60年以上続いてる慣行なので、それが変わるかどうかというのは非常に大きな、ある意味では日本の政治の分岐点になると思います。
小川キャスター:
私達も政治不信の中にいましたから、なかなか疑心暗鬼になってしまうところもありますけれども、期待を込めて見ていきたいところです。
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<プロフィール>
星浩 さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年