「家賃を値上げします」という通知が届いた方はいますか?年の瀬が迫るこの時期の“不幸の通知”に、多くの人が悲鳴を上げています。家賃値上げの通知が届いた場合、どうすればいいのでしょうか。賃貸住宅のトラブルに詳しい弁護士に伺いました。
家賃の値上げ通知が届く 貸主側の本音「2年に1回の見直しはお願いしたい」
良原安美キャスター:
東京23区の駅から徒歩3分のマンション(1K)に住んでいる人のもとに、約1か月前にマンションの管理会社から「家賃値上げ通知」が届いたそうです。近隣相場と比較して、増額の要求がありました。
現在の賃料の月7万4000円から8万1000円へ、7000円の値上げです。突然の通知に「10%の値上げにびっくりした」と話していました。
他にもSNSを見ると、家賃値上げの通知が届いている方がいるようです。
「いきなり家賃26000円の値上げと言われた。こんな古いビルに高い家賃を払う必要があるのか」
「いきなり来月から家賃10%上がるとか言ってきた。無理なら今月いっぱいで出てけと」
「築年数経ってるのにまさか上げると思わなかった。それくらい不景気なのか」
一方、貸主側も事情があって家賃を値上げしています。
東京23区にアパートを1棟を所有している貸主さんによると、▼敷地内の清掃代や共用エリアの電気代、▼オートロックなど壊れたドアの修理代にかかる費用が上がっていることや、▼地価が上がり、固定資産税が上昇していることが、家賃値上げの背景にあるようです。
「2年に1回の家賃の見直しはお願いしたい」と本音を漏らしていました。
「家賃値上げ」について法律は?通知時期は前日でも可能
そもそも家賃の値上げについて、土地や建物を借りる際の法律『借地借家法』が適用されます。
家賃値上げの条件(第32条)として、▼土地建物に対する税金などの負担増加、▼土地建物の価格上昇などの経済事情の変動、▼近隣の同じような物件の家賃よりも安い場合など、これらの条件が当てはまる場合、家賃の値上げが可能になります。
しかし、賃貸住宅のトラブルに詳しい上原幹男弁護士によると、「家賃値上げの通知時期についての法律はない」ということで、法律上は前日でも可能という事です。
ホラン千秋キャスター:
前日に通知された場合、払えないから出ていこうとしても、それに対応する時間がなさすぎて困る方もいると思います。仮に前日に通知が来て、値上げした金額の家賃は払えないが、引っ越すまでに時間が必要だから、ひと月だけ住むことになった場合も改定された金額の家賃を支払わなければならないのでしょうか。
上原幹男弁護士:
通知はあくまで“お願い”になります。そのため、通知された金額を払わなければいけないわけではありません。通知が来たら、とりあえず貸主さんと連絡を取り、「この金額をすぐ払うのは厳しい」と相談するところから始まるかと思います。
井上貴博キャスター:
家賃の値上げ通知が来たので貸主さんと交渉して、値上げ幅を下げてくださったことも経験としてあります。便乗値上げなどの可能性もあるので、交渉することはとても重要だと思います。家賃に限らず、駐車場代なども同じ感覚で捉えてよいのでしょうか。
上原弁護士:
借地借化法は土地・建物に関する法律なので、駐車場はまた別の話になります。ただ賃上げの交渉自体は同じ理屈なので、交渉することは可能です。敷地内の駐車場なども同様です。
ホランキャスター:
急に値上げになって困る借主の気持ちもわかりますが、貸主側にも様々な事情があるということですね。契約の更新時期ではなく、途中契約の途中であっても、家賃の値上げ通知をすることは可能なのでしょうか。
上原弁護士:
家賃の値上げは契約の途中でも可能です。ただ、契約書に「契約期間中は値上げしない」と書いてある場合は更新時になります。
井上キャスター:
値上げ幅や時期がかなり抽象的な気がしますが、法律で明文化されないのでしょうか。
上原弁護士:
経済情勢に合わせた変化をさせたいため、上げ幅を決めることは難しいかと思います。また、家賃を下げることも可能だと法律には書かれていました。その時の情勢に合わせて、柔軟に対応できるための法律だと考えます。
もし値上げの通知が届いたら?弁護士「納得出来ない場合、話し合いの場を」
良原キャスター:
もし家賃の値上げの通知が届いた場合、上原弁護士によると「納得が出来ない場合は無視せず、話し合いの場を作る」とのことです。
その話し合いの内容ですが、▼値上げする根拠の資料を見せてもらう、▼家賃を段階的に上げてもらうなどの交渉の余地があります。冒頭にご紹介した7000円の値上げの通知をされた方は、最終的に4000円の値上げで合意したということです。
納得がいかず、値上げ通知を無視し続けてしまうと、裁判に持ち込まれてしまう可能性があるため、納得いかない場合は話し合いをすることが大切ということでした。
ホランキャスター:
借主から家賃の値上げについて聞かれた場合、貸主はその根拠を示さなくてはいけないので、基本的には常識の範囲内で家賃の値上げをお願いするということですよね。
上原弁護士:
物価などが上がった結果として、家賃を上げる必要が出てくるため根拠があるはずです。
井上キャスター:
これだけ物価高で、土地代も上昇しているので、家賃値上げの相談は増えていくでしょうね。
上原弁護士:
貸主も値上げせざるを得ない状況にあるかなと考えています。
井上キャスター:
その時に交渉できることを知っていれば、押し切られずに相談して必要な情報は提示してもらうことができますよね。
ハロルド・ジョージ・メイさん:
今回の情報は非常に役立つと思います。物価高の世の中で、コストも必然的にかかります。両者のバランスの問題になるので、まずはこういった情報を知っておくことが重要ですね。
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<プロフィール>
上原幹男 弁護士
検事を経て弁護士に 上原総合法律事務所を開所
賃貸住宅の家賃トラブル案件を数多く担当