アメリカ大統領選のときにAIで作られたディープフェイク映像に…有名人をかたる偽広告。ネット上に出回るフェイク情報にどう対応していくのか…。「法で規制?」「新技術で対応?」偽情報の法規制に賛成ですか?反対ですか?
【写真を見る】「大統領選ディープフェイク」に「有名人の偽広告」…ネット上に出回るフェイク情報の法規制に賛成?反対? AIエンジニア安野貴博さんと考える【news23】
“ネットの偽情報”の法規制 「まずは野放しになっている問題の処理を」
石破総理(3日)
「ネット上の偽情報・誤情報は短時間で広範に流通拡散し、国民生活や社会経済活動に重大な影響を及ぼしうる深刻な課題。必要に応じ、法規制も含めたさらなる対応を検討」
平デジタル大臣(6日)
「規制よりは新技術で対応できたらいいなと。ハードロー(法規制)は最後の最後」
藤森祥平キャスター:
規制に向けてやや温度差を感じるような発言もありました。
小川彩佳キャスター:
法規制にもさまざまな形があると思いますが、まず法規制をするべきかどうか、どうお考えですか。
AIエンジニア 安野貴博さん:
私は法規制に関しては、慎重に考えるべきなのではないかという立場です。現行法で対応できていなくて、新しく規制をすることで対応できる部分がどこなのかということが、まず一つの課題になってくるかと思います。
誤情報や偽情報というのは、名誉毀損であったり、選挙の場合は公職選挙法、偽計業務妨害などの既存の法律で対応は可能だと思います。人間が偽情報を流したとしても、AIが偽情報を流したとしても、同じ法律が適用できるかと思います。
むしろ問題なのは、現行法ですでに問題とされてるような投稿が、“野放し”になってしまっていることではないでしょうか。その点について対応できる処理能力のようなものを拡充させていく方が、実は急務であると考えます。
新しい法律で、例えば新しい技術に対する規制などをしたとして、果たしてこの問題を解決できるのでしょうか。法的に問題があるものが放置されている中、新しい法律を作るよりも、すでに問題となっているものを処理する方が先なのではないかと思います。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩氏:
村上総務大臣に聞いてみても、現行法で対応できる部分がかなりあるようです。つまり威力業務妨害や、脅迫などに対して警察が取り締まることは可能なのですが、問題はスピードです。
誹謗中傷がなかなか止まらないと、どんどん広がっていって被害がさらに広がるので、どのようにガードしていくか。今はそのシステムがまだ欠けているので、どう構築していくかがこれからの課題だと思います。
拡散前の偽情報を事前に警告「プリバンキング」とは?
藤森キャスター:
偽情報の対策として、ファクトチェックだけでなく偽情報が出回る前に予防する「プリバンキング」というものがあります。偽情報が出回る前に、拡散が予想される偽情報を事前に警告するというものです。
2022年、台湾の元デジタル担当大臣のオードリー・タン氏は「ディープフェイクの危険性」について、動画を投稿していました。
オードリー・タン氏が投稿した動画
「待って!本当に本物のオードリー・タン?もう一回観てみよう。この人、本当に“あの”オードリー・タン?
この動画を観ている人は簡単に『ディープフェイク』だと見抜けたかもしれません。じゃあ、あなたの友達や家族も『絶対に見抜ける』と言い切れますか?もし詳しく知らないモノがディープフェイクになっていたら?本当に見抜けますか?
画像や音声が簡単に改変できる今、何を信じるべきでしょうか?」
藤森キャスター:
動画はオードリー・タン氏自身が作ったディープフェイクです。「プリバンキング」は有効なのでしょうか。
AIエンジニア 安野さん:
一つの手段として有効だと思います。研究を見てみると、偽情報を信じてしまった後に訂正するのはなかなか難しい。一方で、「こういう技術があり、こう使われるかもしれない」とか、選挙のときなどに、「二つの陣営を分断するような言説がまかれる可能性がある」などの警告をしておくと、それに対する警戒心が一定上がり、信じる前に対処することができます。
いろいろな手段を組み合わせながらやっていくのが一番だと思いますが、「プリバンキング」も取り入れるべき主要な戦略の一つかなと思います。
小川キャスター:
安野さんは東京都のDXなどのアドバイザーをなさっていますが、こういったアドバイスもなさっているのですか。
AIエンジニア 安野さん:
東京都では「ブロードリスニング」という、皆さんの意見を聞くということをやっています。
今、SNSではフィルターバブルで、自分と近い意見の人しか見ることができないという問題がある中で、全体像が見えるようにすることは意味があるのではないでしょうか。
小川キャスター:
「プリバンキング」をどう多くの人に見てもらうかということもポイントになってきますね。
『ネット上の偽情報』について「みんなの声」は
NEWS DIGアプリでは『ネット上の偽情報』について「みんなの声」を募集しました。
Q.ネット上の偽情報の法規制 どう考える?
「賛成」…47.6%
「表現の自由を損なわない範囲で賛成」…44.9%
「反対」…5.6%
「その他・わからない」…1.9%
※12月9日午後11時20分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは10日午前8時で終了しました。
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<プロフィール>
安野貴博さん
東大卒のAIエンジニア
SF作家
都知事選でAI選挙を展開し5位
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年