各分野のスペシャリストが講師となり、授業を展開する「ひるおび 出前授業」。第8弾となる今回のテーマは『不登校』。
講師は「ひるおび」コメンテーターで、不登校などさまざまな課題を抱える子どもたちの支援を続ける白井智子さん。生徒役には20歳以上の男女15人をお招きし、「学びの選択肢」について一緒に考えました。
【写真を見る】“学校に行きたくない”は悪いこと?多様化する学びの選択肢【ひるおび 出前授業】
増加する”不登校生徒”
不登校=病気や経済的な理由以外で年間30日以上登校していない児童生徒を指します。
文部科学省HPによると東京都内の公立校の不登校児童・生徒の数は増加傾向にあり、2023のデータでは、
▼小学校 1万3275人
▼中学校 1万8451人
▼高校 5333人
となっています。
中学校では「13人に1人」は不登校となっています。
恵俊彰:
グラフ的にみると、中、高、そして小学校も伸びてきているんですね
白井智子:
学校に行けなくなるということがすごく身近な話であり、誰もがそうなる可能性があるという心の準備をしておくことはとても大切なことだと思います
白井さんは、
学校のシステムが多様な子どもたちに対して不適応なのではないか。
たとえ学校に行けなくなったとしても、学びの可能性をあきらめないことの重要性を伝えてから授業が始まりました。
【1】親の葛藤
【2】多様化する学びの選択肢
授業は2つのテーマで進められました。
【1】親の葛藤
「学校に行きたくない」親はどうする?
はじめに、スタジオにいる生徒役の大人の方たちに、もし子どもが「学校に行きたくない」と言ったら学校へ「行かせる派?」・「行かせない派?」を問い、それぞれの考えを共有しました。
▼行かせる派・・・6人
・家では得られない貴重な体験ができる
・学校に行くのが当たり前、行きたくないはわがままという思い込みがあった
・社会に出る前に訓練できる良い場
▼行かせない派・・・9人
・つらい時や足が進まない時は一旦休憩をさせる
・学校以外にも学びの場があればいい
そこで、実際に不登校になったケースを紹介しながら、子どもへの適切な対応について考えました。
ケース(1)~担任の先生の対応で~
===経緯===
1.給食中に友達とじゃれあっていると、友達の手が腹部に当たり、口に入っていたものを出してしまう
2.当時感染症が流行しており、おう吐物の処理に敏感だったことから迷惑をかけてすみませんとみんなの前で謝らせられた
担任の先生の対応が原因で不登校になってしまったといいます。
不登校生徒の親はー
本人は苦しいのにそういう状況になったためひどく傷ついてしまい、それがきっかけで学校に行きたくないという心境になってしまったと当時の様子を語りました。
そんな中、学校に行けるようになったきっかけは”クラス替え”でした。
不登校生徒の親:
息子の場合はきっかけがクラスと担任の接し方だったので、学年が変わって先生が変わった途端に人が変わったように元の息子に戻ってくれた
Q:学校や先生がよい対応をしてくれなかった時、あなたはどうしますか?
2歳児の母・こしょーこさん(仮名):
先生も人なので、完璧じゃないからこそ感情論でやりとりしてもしょうがないので、まず何が起きたのか事実確認をしつつお互いが歩み寄って解決方法を見つける。それが無理なのであれば、自分が形を変えて行動していく方がいいのかなと思いました。
ケース(1)では、クラスという環境が変わることで最終的に学校へ通えるようになりました。
ケース(2)~「朝起きられない」~
===経緯===
1.朝起きることが難しくなる
2.はじめは体調不良だと考えていたが、怠けていると思い無理やり起こしていた
3.テレビ番組で娘と同じ症状を見かける
4.病院へいくと起立性調節障害と診断された
起立性調節障害とはー
精神科専門医 田中伸一郎氏によると、
成長の途中で自律神経系の働きが不完全なため起こると考えられている症状であり、体の問題(自律神経系の不調)なので、心の問題(怠け)ではないといいます。
Q:目に見えない不調を子どもが訴えた場合、あなたはどうしますか?
実際に娘が、電車に乗ると腹痛に襲われ、登校が難しかった経験をした生徒の方。
腹痛が仮病であると疑わなかったのかを問われるとー
高3娘の母・ももこママ(仮名):
先生から、元気そうに見えるけれど心はナイーブなのでお母様も育て方に気を付けてくださいと聞いていたので叱らない教育でやってきましたし、学校も叱らない方針だったので助かりました。
子ども一人ひとりによって不登校の原因や対応の仕方は様々であることを学びました。
そこで、多様化する学びの方法に注目し、子どもたちの”居場所づくり”の大切さについても見ていきました。
【2】多様化する学びの選択肢
子どもたちの”居場所づくり”
国では生徒個人の状態に合わせた学びの選択肢を増やす取り組みが行われています。
その一つにフリースクールがあります。
YUME School川崎ラチッタデッラ校では、生徒個人のペースを尊重した学びの機会を提供していました。
YUME School 新美貴大代表:
最初は学校に行けなかったりとか不安があって自分を表現できなかったりする。やっぱり自分に合う環境を見つけたりその中で変化を重ねて自分らしく過ごしてくれていたり、本当に笑顔を見ると元々苦手だったことができるようになったりとかそういう達成感を味わいながら日々過ごしてくれているのかなと感じます。
今回ひるおびではYUME Schoolに通うゆいとさん(高校3年生)となおさん(高校3年生)に密着しました。
朝起きることが難しく、次第に学校へ通えなくなったという高校3年生のゆいとさん。
「ゲームが好き」という思いから将来の夢ができたそうです。
ゆいとさん(高校3年生):
ぼくはゲームがめっちゃ好きなので、ゲームを作るのが将来の夢です。
また、人間関係に悩み不登校になったという高校3年生のなおさんも、
会計学への興味から目標を見つけ、フリースクールで学習に励んでいました。
なおさん(高校3年生):
自分は会計学に興味があるので税理士とか会計職に就きたいなと思っています。
学校とは違い、ゆとりをもって個人のペースで学習できるフリースクールに通うことで、それぞれが将来の目標を見つけ、日々学習に取り組んでいました。
また、オンラインフリースクールのainiスクールも取材しました。
メタバース空間(仮想空間)を活用して、ゲーム感覚で授業を行うメタバース学校で、それぞれ生徒がアバターを用い、非対面型で授業に参加していました。
授業回数を重ねるにつれて”リアル”で会いたいという生徒の声もあり、対面による修学旅行を実施できたそうです。
この他にも空き教室を利用した学校内フリースクールなどもあり、
学校に行けなくても学校に代わる社会、つまり、子どもにとって安心できる居場所が大切であり、様々なやり方があると学びました。
子どもだけでなく親も助け合う
白井さんによると、
子どもが不登校になると親にも負の影響が出てくるといいます。
▼メンタル不安定
▼世間体が気になる
▼収入源
▼家庭崩壊
恵俊彰:
保護者もつながりを持っておくことは大事なんでしょうか?
白井智子:
とにかく(子どもの)自己肯定感をいかに下げないか、周りの大人がいかに寄り添ってあげるか、そしてまた親にも周りの大人がちゃんと寄り添ってあげることがすごく重要ですね。
居場所を持っておくということが非常に大事かなと。…
学校に行けていないからこそ外とのつながりを持っておく(友達と会う、塾に通うなど)ことが大事で、それでかえって自分に合う教育の場に出会えたなんてこともありますので、お互いに支えあっていけたらと思います。
(ひるおび 2024年11月8日放送より)