地震、そして、豪雨で能登の人口流出は加速しています。葛藤を抱えながらも能登に残り、「未来へ繋いでいきたい」と動き出した若い世代。その思いに迫ります。
人口流出の珠洲 27歳の本音 「離れたくないでも同世代は…」
石川県・珠洲市で暮らす真脇魁(まわき・かい)さん(27)。
真脇さんは自宅で家族とともに被災しました。
真脇魁さん
「立っとられんどころか、座っとられん。地面ボンボンって浮いてくるし、電柱倒れそうになってくるし」
海岸近くには、高さ5メートルを超える津波が押し寄せました。
珠洲市を襲った震度6強の揺れ。
被害を受けた住宅は、約5500棟に上ります。
生まれ育った場所は、変わり果ててしまいました。
同級生の記者に漏らした、真脇さんの本音。
真脇さん
「残りたいなとは思っているけど、残ってどうするのか。俺は残ってもみんなは安全な所に行ってもいい。俺は残ってちょっとずつできることはあるんじゃないか」
記者
「珠洲がすき?」
真脇さん
「珠洲は大好きやね。この土地から離れるのが嫌というか。一方で若い人たちはたぶん残らんやろうし、悲しさはあるけど」
「小1の甥が津波の絵を…」 能登の子どもに笑顔取り戻す
葛藤を抱えた中、更に気がかりな事がありました。
それは7歳の甥の様子です。
真脇さん
「トラウマになって、小学校1年生だったらわかるし、金沢行ってから津波の絵を描きだしたって聞いた瞬間にあいつらのメンタルも心配なってきた」
能登の子どもたちに笑顔を。そう心に決めた1年の始まりでした。
車のコーティング業を営む真脇さん。
作業場は被害を受けましたが、依頼された先での仕事を続ける傍ら、行動に移します。
2024年5月にはライブを開催。町の人と笑顔をテーマにした曲を歌いました。
校庭に仮設住宅が建ち、遊び場が少なくなった子どもたちを集めて運動会。
地元の若者6人が中心となって、地域の人も集うイベントを企画していきました。
記者
「すごく速かったね」
子どもたち
「何も考えてませんでした」
「楽しい!」
「みんなで1位になりたい」
洲珠に残った27歳の1年 提灯に願い「子どもを笑顔に」
この日、真脇さんが訪れたのは、珠洲市内の避難所。
支援に訪れた人や避難所に身を寄せる住民に提灯を渡し、1人ひとりに夢や希望を書いてもらいます。
住民
「笑顔が無かったり、やり場のない気持ちを聞くことが多いので、笑顔が多くなると良いなと書きました」
珠洲の街に灯った600個以上の夢ちょうちん。
真脇さん
「自分としては能登は復興できる場所かなと思っている。人数が少ないのは確かだけど、人数が少ない割に、それ以上のパワーを持っている。助けてもらえる若い人らと一緒にずっと頑張っていければ」
珠洲に残った27歳の1年 豪雨で車が…それでも前へ
しかし、活動を阻むのは、またしても自然災害でした。
9月に能登を襲った豪雨。
土砂崩れや川の氾濫が相次ぎ、町に濁った水が溢れました。
真脇さんが仕事で使っていた車も、濁流の被害に。
それでも全国の子どもたちと共に作った動画を公開し、能登の今を発信し続けています。
真脇さん
「すごく人数が多くて反響が(大きい)」
珠洲に生きる1人として、真脇さんが伝えたいこと。
真脇さん
「運動会などを通していくなかで子どもらの笑顔が、一番周りも元気にできる。若者が動けば力を与えられると思うので。子どもらの笑顔が宝だと思っているので、子どもの笑顔を広げて周りの人を笑顔に」