2025年1月13日夜、宮崎県・日向灘で発生した地震について、気象庁は南海トラフ地震臨時情報「調査中」を発表しました。調査を終えて、「新たな巨大地震が起きる可能性が平常時より高まっていると考えられる現象ではなかった」として、「調査終了」を発表しました。
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南海トラフ地震臨時情報が2024年8月に初めて発表されるまでは、その存在や意味が国民にほとんど伝わっていませんでしたが、発表後に行われたインターネットの調査では、臨時情報がおおむね好意的に受け止められていることが分かっています。
南海トラフ地震臨時情報が初めて発表される前は…「知っている」は3割切り
国は平成まで、南海トラフ地震の一つである「東海地震」の発生を、直前に予知できるとの前提で防災対策を講じてきました。その名残で「地震予知」の名前の付いた部署が気象庁にも、かつて存在しました。
ところが、国は2017年、方針を180度転換します。
東京大学地震研究所 平田直教授(2017年当時)
「現在の科学の実力では『3日後に確実に地震が起きる』とは言えない」
国は、南海トラフ地震の防災対応を「確度の高い地震予知はできない」との前提で進めていくことを決めたのです。そこで新たに誕生したのが、南海トラフ地震臨時情報です。
ただ、内閣府が2024年度に実施した住民アンケートによると、臨時情報について、「聞いたことがない」と答えた人が35.8%と最も多く、「知っている」と答えた人は3割を切りました。
臨時情報の発表後は8割以上が知ることに 「空振りしても構わない」が4割
2024年8月に初めて「南海トラフ地震臨時情報」が発表された翌日から3日間、東京大学総合防災情報研究センターの関谷直也教授の研究室が実施し、全国から9400の回答が得られたインターネットのアンケート調査があります。
調査によると、臨時情報が発表されたことを知った人は、「調査中」が82.3%、「巨大地震注意」が83.0%と、どちらも8割以上にのぼりました。
そして、臨時情報への受け止めについては、最も多かったのが「空振りしても構わないので、南海トラフ地震に関連する情報は公表してほしい」の41%で、「命にかかわる情報なので、どんな情報も提供してほしい」の32%が続きました。
これに対し、「確率が低い情報は出さないでほしい」という意見も10.9%ありましたが、臨時情報について比較的、人々が好意的に受け止めている様子がうかがえます。
巨大地震の発生可能性が平時と比較して比較的高くなっていることを知らせる
一方で、この臨時情報が「地震予知」の情報だと誤って受け止めた人が4人のうち3人に上ったことも分かりました。
巨大地震注意の臨時情報を知って「地震が起こると思ったか」尋ねたところ、「大きくはないが、地震が起こると思った」が44.8%と最も多く、「大きな地震が起こると思った」が30%でした。実に4人に3人が「地震が起こる」と思い込んだことになります。
「巨大地震注意」の臨時情報によって、1週間以内に巨大地震が発生する頻度は「およそ数百回に1回」で、平常時の「およそ千回に1回」と比較して発生確率が高まっていると伝えられたことで、この情報を地震予知の情報のように受け止めた人もいるかもしれません。
臨時情報は本来、巨大地震の発生する可能性が平常時と比較して比較的高くなっていることを知らせるものですが、多くの人が地震が具体的に、いつ・どこで・どれくらいの規模で発生するかを高い確度で予測する「地震予知」の情報と誤解した形跡がうかがえます。
東京大学総合防災情報研究センター 関谷直也教授
「要は確率的に低いけれども、少し確率が統計的に見ると上がっていると、やっぱり、分かりにくいということなのだろうと思います。平時よりも少しだけ地震の起こる可能性が高くなっているということを、もうちょっと普段からきちんと説明しておくべきと思います」