むかしから「猫にマタタビを与えると酔っ払う」といわれていますが、最近では同じような効果のあるキャットニップも売られているのを目にします。マタタビとキャットニップは、どちらも猫を魅了する植物として知られていますが、それぞれ特徴や効果に違いがあります。今回は、両者の特徴と与え方についてくわしく解説します。
マタタビ・キャットニップの基本情報
マタタビやキャットニップを猫に与えると、ニオイを嗅いで舐め取ろうとしたり、ゴロゴロと喉を鳴らしながら興奮したりするなど、特別な反応を見せます。
猫が夢中になってしまうこの不思議なふたつの植物には、異なる特徴があるのです。
マタタビ
マタタビは北海道から九州まで広く分布しているマタタビ科のツル性植物です。ジメジメした湿気の多い山地に生息しています。初夏には、白い梅のような可憐な花を咲かせ、同時に葉が部分的に粉をふいたように真っ白になるため、この時期の山でみつけやすくなります。
マタタビには「マタタビラクトン」や「アクチニジン」という猫が反応する成分が含まれています。これらは猫の嗅覚に作用し、ニオイを嗅いだ猫は興奮して転がり、顔をスリスリこすりつける行動が一般的です。
キャットニップよりも有効成分の活性が強力で、成猫の8割以上の猫が反応するといわれています。また、持続時間がキャットニップよりも長い傾向があります。
キャットニップ
キャットニップの和名はイヌハッカで、マタタビ科とは異なるシソ科の植物です。ミントの仲間であり、葉の形もミントによく似ています。イギリスでは、若くやわらかい葉をハーブティーにすることもあります。
キャットニップの主成分は、「ネペタラクトン」という化学物質です。マタタビのマタタビラクトンに似た構造をしている猫の嗅覚に作用します。ニオイを嗅ぐと、多くの猫がリラックスする一方で、高揚感を示し、活発に遊んだり転がってじゃれはじめたりする行動が見られます。
マタタビと比べると効果の持続時間は短い傾向にあります。何度も与えると、時間が経つにつれて反応は薄れることがあります。キャットニップに反応する猫は全体の50~70%程度で、若い子猫や高齢の猫は反応が弱い傾向があります。
与える際の注意点
マタタビやキャットニップを与える際には、いくつかの注意点があります。通常、商品のパッケージにも注意書きがあるので必ず確認しましょう。
- 最初は少量から様子を見る
- 週に1~2回程度に制限する
- 過剰摂取に注意する
- 子猫、妊娠中の猫、高齢猫への使用は控える
- 腎疾患、心疾患、神経疾患の猫は厳禁
- アレルギー反応に注意
- 多頭飼いの場合は、陶酔中のケンカに注意
はじめて使用する際には、おもちゃや爪とぎなどにほんの少量を振りかけて様子を見るところからはじめてください。身体に異常がないか、攻撃的にならないかなどを見るようにしましょう。直接与えると過剰摂取になりやすく、体質に合わない場合にアレルギー反応やパニックを起こす危険があります。
マタタビは、粉末、乾燥させた実や枝、練りこまれたおやつなど、さまざまな形態で販売されています。興奮状態のときは、誤嚥する危険がありますので、食事の前後は避け、必ず最後まで付き添うようにしてください。また、転落する危険があるような場所での使用は避けましょう。
キャットニップ特有の注意点として、プランターで育成させているものを放置すると、猫が噛んだり引っこ抜いたりして全滅させてしまうことがあります。過剰摂取すると嘔吐や下痢などの消化器系の問題を引き起こします。
まとめ
マタタビとキャットニップは、生態のまったく違う植物でありながら、似たような構造の化学物質を持ち、猫の行動や感覚に影響を与えます。食欲や元気のないときに、少量与えることで適度な刺激となって回復する効果も見られます。
一方で、これらは決して万能ではなく、猫の年齢や健康状態によって、その効果や適性は大きく異なります。与える際は、自身の猫の個性や反応を理解し、適切な量と頻度を守ることが重要です。
「猫にマタタビ」ということわざはありますが、猫にとってマタタビは必須のものではありません。もし、愛猫がマタタビにもキャットニップにも反応しなかった場合、無理に与える必要はありません。
また、与えたあとに一時的な行動変化以外の異常が見られた場合は、速やかに獣医師に相談してください。愛猫に合った方法を見つけて、楽しい時間を提供してあげましょう。
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