日銀0.5%に追加利上げ 次の利上げは7月か 東短リサーチ加藤チーフエコノミスト解説【Bizスクエア】

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2025-01-29 06:37
日銀0.5%に追加利上げ 次の利上げは7月か 東短リサーチ加藤チーフエコノミスト解説【Bizスクエア】

日本銀行は1月24日、金融政策決定会合で、政策金利を0.5%に引き上げるという、追加利上げを決定した。

【画像で見る】利上げによる為替への影響は?

日銀 追加利上げ決定 17年ぶり0.5%に

日本銀行 植田和男総裁:
経済の体温、物価の情勢に合わせて、適宜利上げをしていくことは必要である。

日銀は、これまで0.25%としてきた短期金利の誘導目標を0.5%に引き上げた。
金利0.5%は2008年以来、17年ぶりの水準となる。

利上げの理由について植田総裁は…

日本銀行 植田和男総裁:
昨年(2024年)に続きしっかりとした賃上げの実施が見込まれると判断した。

1月22日、2025年の賃上げをめぐる春闘が事実上スタート。労使トップの会談では…

経団連 十倉雅和会長:
賃上げの力強いモメンタム(勢い)を定着させる年としたい。

連合 芳野友子会長:
ようやく動き始めた賃金(アップ)の流れを滞らせることは絶対に避けなければならない。

労使双方が、賃上げの流れを定着させていくことで一致していた。また、アメリカのトランプ大統領の就任に伴う市場の混乱もなかったことから利上げに踏み切った。

これを受けメガバンク3行は3月から普通預金の金利を0.1%から0.2%に引き上げると発表。

日銀 0.5%に追加利上げ 次はいつ?どこまで上昇?

住宅ローンなど、私たちの生活への影響が懸念される利上げ。今後について、日銀の植田総裁は…

日本銀行 植田和男総裁:
緩和度合い調整のペースやタイミングについては、今後の経済・物価・金融情勢次第であって、予断は持っていない。

そして、緩和的でもなく引き締め的でもない金利の水準「中立金利」については…

日本銀行 植田和男総裁:
「(今回の利上げの)0.25分、その範囲に近づいたことは確かだが、まだ距離があるというふうに考えている。ある(金利)水準を壁として意識しているということはない。

次の利上げはいつなのか?そして、金利はどこまで上がるのか。 

日銀 0.5%に追加利上げ 日本経済への影響は?

――やっと利上げという感じか?

東短リサーチ 社長 加藤出氏:
12月に利上げがなく、植田総裁が大分慎重なことを言っていたので、一体いつだろうという空気になっていた。利上げ自体は今の日本の経済情勢から考えると適切だと思う。

2024年3月にマイナス金利脱却。7月に利上げして3回目にして0.5になった。0.5という水準はさかのぼると17年ぶり。その前はバブル崩壊後の金融危機の1997、98年。ここからデフレになってからずっと低金利だった。福井総裁の時代にリーマン・ショック前に0.5まで上げたことはあるが、1年数か月でリーマン・ショックの前兆が起き始めて慌てて下げた。

――久方ぶりの数字が出た。

東短リサーチ 社長 加藤出氏:
インフレ率を差し引く実質金利と考えると、まだまだ深いマイナス。その2007年のときの0.5はインフレが0%近辺だったので、それに比べると状況はだいぶ違う。

中央銀行の実質政策金利のグラフ。日本は2024年1月と比べても、むしろ利上げしたといっても物価が上がってる分、実質金利は下がっている。

東短リサーチ 社長 加藤出氏:
海外は利下げしているが、インフレがもっと下がっているので、この1年で実質金利が上がっている国が多い。逆に海外と日本の実質金利の差は開いている。これはベースとして円安になりやすいということ。

植田総裁の会見をまとめてみると…「昨年(2024年)に続き、しっかりとした賃上げを実施するという声が多く聞かれている」「経済物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」などとしている。

――日銀が利上げを決めた理由は、賃上げがしっかりしてきたという確信か?

東短リサーチ 社長 加藤出氏:
それが一つと、アメリカのトランプ政権が与える経済の不確実性が後退したという説明だが、12月と今とそんなに違うのかと。ただ「不確実性の霧」がだいぶ晴れてきたという説明だろう。

植田総裁は、会見で物価の見通しがはっきりしてきたということにも触れた。「展望レポート」では消費者物価指数の上昇率の見通しを2024年度は2.7%に引き上げた。25年度も2.4%に、26年度は2.0%に引き上げている。

――物価見通しが強気になった分、利上げもしやすくなったという理屈か。

東短リサーチ 社長 加藤出氏:
そうですね。ただ例えば2025年度の「除く生鮮食品」が、10月の見通しより0.5%も上がっているが、円安による輸入インフレの高まりと米の値上がりによるものなので必ずしも決して良いインフレではない。生鮮食品とエネルギーを除いた指数で言うと、2025年度は若干の上昇だが、日銀はどちらかというと「除く生鮮食品・エネルギー」を見ているので、2026年度は2.1%で目標の2%は超えている。そういう意味では徐々に利上げしてインフレに見合った金利にしていくという方向性は示していると言える。日銀のオントラック(見通し通り)ということになる。

――久しぶりの0.5%という金利水準、今回は0.25%の利上げでダイレクトに効いてくる。日本経済に何か心配材料を与えることはないか。

東短リサーチ 社長 加藤出氏:
今まで長い30年近く、超低金利で来たということをいろんな人たちが前提にしてきた。例えば政府はそれを前提に国債を多く発行した。あるいは中小企業は非常に低い金利の銀行からの借り入れに慣れてしまっている。あるいは住宅ローン金利も変動金利で低い方に慣れているという点で、これから徐々に金利が上がると困る人もある程度出てしまう。しかし、それに配慮して金利を上げないと、今度は円安が止まらないという恐れがある。現に今それが起きている。なので経済全体のバランスを取るという点では、ある程度金利を上げていかざるを得ない選択だ。

――日銀が12月利上げではなくて、1月で決めたっていう最大の理由は何だったと思うか。

東短リサーチ 社長 加藤出氏:
これは推測だが、12月は政治に忖度しすぎたのではないか。よく理解を得られていなかったり、日銀の方が過剰に心配してしまったという面があるのではないか。2024年8月5日の日経平均株価の暴落以降、日銀は非常にナーバスになっているところもある。ただ12月に日銀が慎重なスタンスを見せたことで、結果として円安がより進み、1月10日発表のアメリカの雇用統計も強かったのでこのまま放っておいて、春に向けて円安がより進むとそれはそれで有権者から不満が出るかもしれないと、政府も気にした面はあったと思う。それで日銀は、年明け以降「これなら利上げしても大丈夫」という感触をなんとなく得たのではないか。

――みんなが納得した形で利上げしたいという気持ちが強かったのか。

東短リサーチ 社長 加藤出氏:
今の日銀は、みんなに批判されないように利上げを進めたいという雰囲気がすごく強い。一つには先ほどのグラフにもあった2000年のゼロ金利解除後、2006、7年の利上げを事後的に「早すぎた」と批判された面があったので、「慎重にいきたい」ということが現れている。

日銀 0.5%に追加利上げ 次はいつ?どこまで上昇?

――3月、4月、6月、7月と決定会合がある。今後、次の利上げはいつになるのか。

東短リサーチ 社長 加藤出氏:
今のところ、7月だと思っている。(半年に一回ぐらいか)そうですね。あと中立金利の話があったが、利上げしたことで「日本経済に強いダメージはない」「中立金利にはまだもう少し距離がある」というのを見ながら、時間をかけてチェックして…ということになると半年ぐらいかける可能性があるだろうし、かつ7月には参議院選挙もあるので、参院選前の利上げは政治的に難しいのではないかと思う。

――選挙後の政治の混乱があれば、少し危ういということか。

東短リサーチ 社長 加藤出氏:
あとは結局、今回の利上げも、2024年7月の利上げも、円安が進むと動きやすくなるという現実がある。その点では、今後も為替次第。ここから先円安が進むようなら、7月より手前に利上げが来る可能性もなくはない。あるいはトランプ大統領の発言で、円高方向にぐっと行ったりすると半年の間隔がもっと伸びるということもある。

政策金利の「終着駅」は!?

――「中立金利」という議論があり、理論上は1%から2.5%ぐらいだと言われているが、0.75~1%ぐらいまで視野に入っているという感じか。

東短リサーチ 社長 加藤出氏:
「中立金利」というのは実務的には非常に難しい。リアルタイムではつかめないもの。あくまでも手探りでいくしかない。一方、上限とみられている2.5%まで上げると国債の問題などもいろいろ吹き出してしまう。現実的には、国内要因だけで考えれば1%あたり。
為替次第でもし1%までいっても円安が止まらないと、2026年に米FRBが利上げする可能性もあるので、場合によってはもっと上がることもある。ただ国内要因と考えれば、1%あたりを目処に行くと思っている。

(BS-TBS『Bizスクエア』 1月25日放送より)

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