自動音声で「1を押してください」番号押すと特殊詐欺グループに 巧妙化する手口で“3億円”の被害も【Nスタ解説】
携帯電話の“利用停止”や、“未納の料金がある”などとする詐欺電話が相次いでいます。突然、流れる“自動音声”。「1を押してください」、これに注意です。
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人々が自動音声ガイダンスに慣れているからこその手口か
日比麻音子キャスター:
「警視庁遺失物総合案内センター」や「警視庁お忘れ物総合案内所」などをかたった、自動音声電話がかかってきているようです。調べてみたところ、実際にある正しい名称は「警視庁遺失物センター」でした。
茨城県では「警視庁遺失物相談窓口です」「重要なお知らせです」「このまま話を聞きたい方は『0』を押してください」といった自動音声が流れてきたといいます。
愛媛県では、ガイダンスに従うと警察官をかたった人物が電話に出て「あなたの住所、氏名、生年月日、家族構成を教えてください」「拾得されたあなたの荷物に違法なものが入っていました」などと言われたということです。
なぜ、こうした自動音声が詐欺の入り口になってしまうのでしょうか?
元神奈川県警 捜査一課長の鳴海達之さんによると、「実際の官公庁でも、代表番号にかけると自動音声のガイダンスが流れる。自動音声のガイダンスは指示通りに操作をするだけで、考える時間を与えない」ということです。
元神奈川県警 捜査一課長 鳴海達之さん:
今までの詐欺では、▼直接“かけ子”が被害者に電話を入れて会話をしたり、▼SNSやメールが使われるパターンがありました。
会話やSNS・メールのやり取りのなかで「おや?」と疑問に思うものですが、自動音声のガイダンスだと自分が考える必要がありません。
「押してください」「こうしてください」と、言われる通りにポンポンとやるだけなので、そこは実際の会話やSNSなどとは違うところです。
だからこそ、ガイダンスに従って「0」や「1」など数字のボタンを押してみたりということになってしまうのだろうと思います。
日比キャスター:
このようなガイダンスに慣れているところも、ある種、逆手に取られてしまっているということですよね。
元神奈川県警 捜査一課長 鳴海達之さん:
携帯電話では「0120」や「0800」などの番号からガイダンスが流れてきて、アンケートに答えることがありますし、それで慣れてしまっている部分もあるのだろうと思います。
南波雅俊キャスター:
実在する警視庁遺失物センターから自動音声の電話が来る可能性はあるのでしょうか?
元神奈川県警 捜査一課長 鳴海達之さん:
ありません。
自動音声の電話が来た段階で怪しむのが大事だということですね。
自動音声の電話には「でない」「かけ直さない」
山内あゆキャスター:
私は自宅にもかかってきたことがありますし、「ひるおび」のスタンバイ中には、携帯電話に知らない番号から留守電が入っていました。
自動音声で「怪しい」と思いましたが、自動音声は微妙に聞きづらいので、だからこそ(ガイダンスに従って)番号を押してしまいたくなる気持ちはわかりますね。
日比キャスター:
留守電に残っていて、かけ直してしまうのは危険ですよね。
元神奈川県警 捜査一課長 鳴海達之さん:
かけ直してはいけませんし、もちろん、自分の知らない番号だったら絶対に出てはいけません。
基本的には、自分が登録してある番号“以外”の番号が表示されたら、それはもう出ないのが一番いいと思います。
日比キャスター:
なぜ今、自動音声による詐欺とみられる電話が増えているのでしょうか?
元神奈川県警 捜査一課長 鳴海達之さん:
ニュースや新聞などの報道によって「こういった手口がある」ということがわかっているので、詐欺をする側も「自動音声のガイダンスなら指示通りにみんな押してくれるだろう」と、新たなことを考えているのだと思います。
「遺失物センターから自動音声で案内することはない」警視庁は注意呼びかけ
日比キャスター:
警視庁は「警視庁の遺失物センターから電話する際は、自動音声で案内することはありません」と注意を呼びかけています。
そして、もし不審な電話を受けたら警察の相談専用電話「#9110」へ連絡をお願いします。
「紙幣を調べる必要がある」 3億円の詐欺被害も
日比キャスター:
石川県の60代女性は「あなたの携帯電話から迷惑メールが大量発信されている。対処しなければ携帯電話が使えなくなる」という自動音声の電話を受けました。
そうすると、警察官などを名乗る男から「犯罪を行っていないことを証明するために、あなたの資産を警察が指定する口座に送金し、紙幣を調べる必要がある」と言われたそうです。結果として、32回にわたり現金約3億円を振り込んでしまったといいます。
冷静に考えれば、紙幣を調べるなんて変だと思いますが、自動音声で聞こえてくるとパニックになってしまいますよね。
元神奈川県警 捜査一課長 鳴海達之さん:
警察や検察などの捜査機関から電話があると、頭の中が勝手にパニックを起こして「自分は何をやったんだろう」と考えてしまい、詐欺を疑わなくなってしまいます。
そういったことがないように、一回冷静になって電話を切り、落ち着いて考えてもらえればいいと思います。
日比キャスター:
警察の相談窓口もありますが、「ちょっと変だな」と思ったら、周りの人に相談してみるのも必要ではないでしょうか。
また、私は知らない番号から電話がかかってきたら、一度検索するようにしています。ホームページなどにセンターの番号が載っていることもあるので、一呼吸を置いて、こういった詐欺を防げたらと思います。
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<プロフィール>
鳴海達之さん
元神奈川県警 捜査一課長
組織犯罪対策本部長や川崎警察署長を歴任