「相互関税」日本は24%、「戦後」は終わり、トランプ不況がやってくる【播摩卓士の経済コラム】

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2025-04-05 14:00
「相互関税」日本は24%、「戦後」は終わり、トランプ不況がやってくる【播摩卓士の経済コラム】

アメリカのトランプ大統領は、2日、世界各国からの輸入品に一律10%の関税をかけた上で、不公正と認定した国には『相互関税』と言う名の上乗せ関税を課すと発表しました。日本には24%の追加関税が課せられることになり、大きな景気下押し圧力となります。

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EUより高い24%にショック走る

2日にトランプ大統領が発表した各国別の『相互関税』は、中国が34%、韓国が25%、日本24%、EU20%などとなっています。日本の24%という数字は、韓国の25%よりはわずかに低かったものの、トランプ大統領が常々強く非難していたEUの20%よりも高く、想定された中では最も厳しい内容でした。政府部内では、EUよりも税率が高かったことが驚きをもって受け取られています。

トランプ大統領は発表会見で、安倍元総理との思い出話にわざわざ言及し、対立感を和らげようとしたものの、「日本はコメに700%もの関税をかけている」、「トヨタは100万台以上もアメリカに売っているのに…」などと日本批判を展開しました。

日本の非農産品の関税率はアメリカより低い2%台なのですが、自動車の安全基準などの規制や為替、付加価値税などをすべて非関税障壁として関税換算したという勝手な理屈です。実際には、短期間で全世界を相手に細かな調査などできるわけもなく、各国別に、貿易赤字額を輸入額で割った率で、ざっくりと数字をはじき出すという、あきれるほど杜撰な差算出です。

2月に石破総理が訪米して、日本の防衛努力や対米投資計画を説明したものの、効果は全くなかった形です。

自動車など品目別関税は別枠に

日本にとって唯一の救いだったのは、先に発表した自動車・自動車部品への25%など品目別の関税は別枠となり、『相互関税』の対象にはならなかったことです。すなわち、自動車・自動車部品や、鉄鋼・アルミへの追加関税は品目別として課せられる25%に留まり、相互関税24%の更なる上乗せは避けられました。

もう1つ、自動車との関連での注目点は、メキシコとカナダが『相互関税』の対象から当面、外されたことです。両国には不法移民と麻薬への対策ですでに25%関税が発動されていますが上乗せはなかった上、北米内の貿易協定であるUSMCAの基準を満たせば、その関税も軽減される措置が継続されました。ビッグ3を始めとするアメリカ産業界への影響がこれ以上大きくならないよう配慮した形です。日本の自動車メーカーにとっても、メキシコやカナダでの生産の優位性は一定残ったと言えるでしょう。

アジア諸国は軒並み高い関税率に

発表された『相互関税』を上から見ると、カンボジア49%、ベトナム46%、スリランカ44%、バングラデシュ37%、タイ36%など、アジア諸国の税率が軒並み高くなっています。アメリカがターゲットにする中国の34%以上の関税率で、先に述べた単純な計算式の結果なのでしょうが、当該国の対米感情には大きく影響しそうです。

トランプ政権からすれば、中国からの「迂回輸出」阻止といった見方もできるのでしょうが、アジア諸国からの「安くて良いモノ」がアメリカを豊かにし、ひいては世界経済の成長をけん引して来た事実を全く顧みない姿勢です。台湾、インドネシアは共に32%と中国並みの『相互関税』で、地政学的な配慮も全く感じられません。

その一方、BRICsでもブラジルだけが10%、ヨーロッパでもイギリスは10%に留まり、欧州やアメリカ大陸には甘い印象です。

「覇権国」「勝ち組」なのに被害者意識

トランプ大統領の発表会見から感じられるのは、アメリカが割を食ってきたという強烈な「被害者意識」です。「アメリカは敵味方に関わらず、あらゆる国から略奪されてきた」、「やられたらやり返す」といった言葉に象徴されています。戦後一貫して超大国として君臨し、自分に有利な国際秩序を築いて来たのは、他ならぬアメリカであるにも関わらず、です。

確かに、基軸通貨国であるアメリカには、為替調整機能がなかなか働きません。普通の国であれば、巨額の貿易赤字は通貨安を招き、結果として国際収支が均衡に向かうというメカニズムが働きます。基軸通貨であるドルにはそうしたメカニズムが働きにくいので、貿易赤字が続く傾向があることは確かです。

しかし、その反面、基軸通貨国だからこそ、経常収支が悪化しても資本が流出することなく、世界中のマネーを集めることができました。それがアメリカの過剰消費を可能にしてきたのです。他の国が決して享受できない「覇権国」としてのメリットや、資本主義の勝利者であることには全く目を向けていません。

戦後国際経済秩序の終焉

トランプ関税政策は、戦後アメリカが築いてきた自由貿易といった国際経済秩序に、名実ともにピリオドを打つものとなりました。高関税とブロック経済が第2次世界大戦を招いたという反省からスタートした秩序を、そのアメリカ自身が壊しているからです。

野村総研の木内登英氏によれば、今回のアメリカの『相互関税』率は、世界平均で23.4%になり、戦前の保護主義のきっかけになった「スムート・ホーリー関税法」実施直後の19.8%(1933年)を、すでに上回るといいます。

高関税政策が貿易と世界経済の縮小を招くことは明らかです。トランプ氏がこれをすぐに改める気配はなく、世界同時不況が目の前に迫ってきているとみることができます。

播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)

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