犬の世界に『いじめ』はあるの?主な原因や見分ける方法、飼い主が取るべき行動まで

2025-04-21 17:00

多頭飼育の仲間同士や行きつけのドッグランなどで、いつも同じ犬だけがいじめられているように見えることはないでしょうか?愛犬がいじめられたりいじめたりするのを見るのは、飼い主さんにとってつらいことです。また、いじめなのかじゃれあっているのかが分かりづらいこともあるでしょう。今回は、犬の世界のいじめについて考えていきます。

犬の世界のいじめ

犬のケンカ

いじめとは、自分よりも弱い立場にある者に対して、一方的に肉体的や精神的に苦しめる行為のことを言います。ただし、この定義は人の行為に対する定義です。比較的最近になって、犬の社会には人の世界のようなヒエラルキー(ピラミッド型の上下関係)は存在しないということが分かってきました。

つまり、犬は相手の立場や自分との上下関係を理由にいじめることはありません。しかし実際には、一方的に攻撃し続ける、ストレスの捌け口のような形でちょっかいを出すといった、いじめのように見える関係性があるのも事実です。

そこで今回は、犬の世界のいじめのように見える行動(以後、いじめと表記します)について考えていきます。

犬のいじめの原因

犬3頭のケンカ

生存競争

動物の世界は、基本的に弱肉強食です。明確な上下関係が存在しなくても、力の差が自然と現れてしまうことはあるでしょう。この生存本能が影響してか、飼い犬同士でも力の強い犬が優位なように振る舞い、圧力を感じさせるような場面が見られることもあります。

ただし、犬は不要な戦いを好みません。力の差が分かっている場合、基本的には弱者が強者に挑みかかったり強者がいたずらに弱者を攻撃したりはしません。そのため、多頭飼育の初期にケンカが頻発しても、その関係が永遠に続くとは限りません。

お互いの力量が明確になれば、その後いじめが起こることは少ないでしょう。ただし気をつけたいのが、年齢差がある場合の世代交代です。年上の犬が高齢になり、気力や体力的に弱くなってきた場合、異なる関係性が現れるようになるかもしれません。

相性

たとえ犬種が同じでも、お互いの性格やこれまで育ってきた環境が異なることで、どうしてもお互いに受け入れられないような関係性になってしまう場合があります。いわゆる相性が悪いというものです。

犬は、社会化期と呼ばれる生後3〜12週齢頃までの間に、母犬や兄妹犬たちとの触れ合いを通して犬との付き合い方を身につけます。しかし社会化期に十分な経験を積めなかった犬は、相手が嫌がっていることに気付けずにしつこく追い回したり、必要以上に警戒して攻撃的になったりしてしまいます。

そのため、社会化不足の犬同士や社会化不足の犬と神経質な犬の組み合わせは、いじめになりやすい組み合わせだと言えるでしょう。ただし、おっとりして母性本能の強い犬のいるご家庭が、比較的若い社会化不足の犬を迎え入れた場合、先住犬が上手に若い犬を教育してくれるケースも見られます。

やきもち

犬もやきもちを妬くことが分かっています。やきもちが原因で起こりやすいいじめは、長く飼い主さんと1対1で暮らしてきたご家庭に、新しい犬を迎え入れた場合です。具体例としては、新参犬用のご飯を横取りしてしまう、新参犬が飼い主さんの元にやってくると先住犬が間に分け入ってくるなどの行動を挙げられます。

これまで飼い主さんの愛情を一身に受けていた先住犬が、飼い主さんの愛情が自分から新しい犬に移ってしまったと思ってしまうことが原因です。そのため、先住犬に対する飼い主さんの愛情が変わっていないことを理解してもらうための配慮が大切です。

犬のいじめに対する対処法

散歩中の犬のケンカ

飼い主さんが介入すべきタイミング

一見するといじめに見えても、しばらく様子を見ていると攻撃する側が入れ替わることがあります。このように、攻める側と受ける側が時々入れ替わるような場合は、じゃれあって遊んでいるケースが多いです。当然、致命的なケガを負わせることもありません。

一方、入れ替わることなく一方的に攻撃し続けている場合、特に相手が降参の意思を示しているのに攻撃を止めない場合は、危険な状態の可能性が高いです。飼い主さんが間に入り、お互いを引き離しましょう。

ただし、飼い主さんご自身がケガをする可能性がありますので、できれば大きな音や水をかけるといったようなことをして一旦攻撃側の犬の気持ちを逸らし、その隙にいじめられている側の子を引き離すようにしてください。

多頭飼育におけるいじめの予防策

基本的には、飼い主さんが介入する必要のないよう、事前にいじめの予防策を講じることが大切です。新しい犬を迎え入れる前には、下記の観点でよく検討しましょう。

  • 神経質、臆病、警戒心が強い先住犬は、多頭飼育には向かないことが多い
  • 年齢差、体格差が大きい組み合わせでの多頭飼育は避けた方が安全
  • 万が一の場合に備え、隔離できる飼育環境を用意する
  • 何をするにも先住犬を優先し、飼い主さんの愛情が変わらないことを示す

ドッグランにおけるいじめの予防策

見知らぬ犬や飼い主さんが不特定多数集まっており、かつ犬たちが自由に遊べる場所がドッグランです。そのため、いじめが発生しやすい場所だということを認識した上で、上手に活用しましょう。

ドッグランでは、犬とその飼い主さんの双方をよく観察することが大切です。飼い主さんが飼い犬をきちんと管理できているか、飼い主さんが飼い犬から目を離してスマホや他の飼い主さんとの会話に夢中になっていないかなどに注意した上で、リスクの高そうな犬には愛犬を近づけないようにしましょう。

まとめ

2匹の犬を抱く飼い主

人の世界のいじめとは少し性質が異なるかもしれませんが、犬の世界にもいじめはあります。犬の世界でいじめが発生する主な原因には、下記の3つが挙げられます。

  • 生存競争
  • 相性
  • やきもち

これらの原因を知っていれば、飼い主さんの配慮でいじめの多くは防げます。もしも新しい犬を迎え入れたいのであれば、これらの原因となりやすい要素をできるだけ排除しましょう。

その上で万が一に備え、それぞれの犬を隔離できる環境も準備をしておくことで、安全な多頭飼育環境を整えられるでしょう。

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