「旅行に誘われた」突然失踪した中国人男性… 「詐欺グループに捕らわれている」と訴える母親がとった行動とは… 日本人も狙われる人身取引【news23】
東南アジアを舞台に、日本人も巻き込まれる特殊詐欺の被害が広がっています。「旅行に誘われた」、その言葉を最後に消息を絶った中国人の男性。母親は「詐欺グループに捕らわれている」と訴え、国境を越え行方を捜し続けています。
“旅行”のはずが…消えた息子を捜し続ける母
SNSで息子についての情報提供を呼びかける中国人の女性。1年前、息子がカンボジアに連れ去られたと訴えています。
女性に会うため中国南部の広東省広州市へ向かいました。
柏秀桃さん(49)。18年前に夫を病気で亡くし、家政婦として働きながら生計を立てています。
柏秀桃さん
「いまは手がかりもなく、連絡も取れません。どれだけ泣いたか分かりません。本当にどうしたらいいのか…」
「これは旅行の時の写真です」
旅行が趣味だったという19歳の息子。行方がわからなくなったのは2025年5月のことでした。
「SNSで知り合った人物から旅行に誘われた」との電話を最後に消息が途絶えたのです。
4日後、連絡がとれましたが…
柏秀桃さん
「2025年5月7日に、その人に騙されてカンボジアに連れて行かれました。現地のボスに『家族に無事だと伝えろ』と言われて連絡してきたそうです」
身分証やスーツケースは経由地のベトナムで捨てられ、カンボジアではスマートフォンでチャットをする仕事をしていると話したといいます。
中国メディアによると、年間7万人の中国人が連れ去られ、詐欺に加担させられているということです。
柏秀桃さん
「息子よ、お母さんは本当に苦しい。あなたを探すのがどれだけ大変か」
「もう帰れないよ」日本人も人身取引か、タイが中継地点に
カンボジアなど東南アジアを舞台にした特殊詐欺。その人身取引の中継地点になっているとみられるのが、タイです。
タイ警察のタッチャイ副長官は、その巧妙な手口を指摘します。
タイ警察・タッチャイ副長官
「『カンボジアで仕事がある』と言われても渡航する人は少ないが、『タイでの仕事や旅行』と勧誘されてやってくる人は多いです」
実際、4月には、タイでの仕事を紹介されたという日本人女性が、インドネシアの特殊詐欺拠点へ連れて行かれ現地当局に保護されています。
保護された日本人女性
「KTV(カラオケクラブ)で働こうと思ってたんですけど、観光したくて。車に乗せられて強制的にここに来て、パスポートを取られ、『もう帰れないよ』って言われた」
脱出男性に残る生々しい傷痕 母が見た“詐欺拠点”の実態
中国・広州で息子の帰りを待ち続ける柏秀桃さん。
「ここから逃げ出したい」
過酷な環境を訴えていた息子からはこんなメッセージも残されていました。
息子「飛び降りたらいいかもしれない。3階なら大丈夫な気がする」
家族「やめて。逃げられないよ」
息子「誰かが迎えに来てくれたらいい」
柏秀桃さん
「捕まれば命に関わり、殴り殺される可能性があると思いました。だから逃げるなと説得しました。逃げるのはあまりにも危険です」
この翌月以降、息子からの連絡は途絶えました。柏秀桃さんが一縷の望みをかけ、旅行に誘ったという人物に連絡をとってみると…
旅行に誘った人物
「息子を連れ戻してやる。数万元の交通費を払えば解放する」
柏秀桃さんは借金をして、日本円で約90万円を送金。ところが支払いと同時にその人物とは連絡がとれなくなりました。
警察も捜索に乗り出してはいますが「海外での捜査は難しい」と、いまだ進展はありません。
柏秀桃さん(SNSより)
「夜明けとともに出発し、カンボジアの街を歩き回っています」
2026年3月、柏秀桃さんの姿はカンボジアにありました。中国大使館に助けを求めるほか、息子につながる情報を探すためです。
そこで出会ったのが、詐欺拠点の「実態」を知る人物でした。
柏秀桃さん
「なんてことなの」
背中いっぱいに広がる傷痕。男性らは詐欺拠点から逃げ、帰国手続きのため中国大使館に来ていました。男性らは息子について、同じ拠点で「見たことがある」と話した上で…
柏秀桃さん
「息子は足をケガしている可能性があり、歩き方がおかしかったそうです」
──息子さんは元々、足に問題があった?
柏秀桃さん
「いいえ、ありませんでした。体は細いですが、足に問題はなかったので、殴られてケガをしたのではないかと思います」
日本人も標的に…越境する人身取引
国境をまたぐ、複雑化する人身取引。その中継地点になっているとみられるタイでは、タイ警察が国際的な情報共有を目的とした人身取引に関するデータベースを新たに整備しました。
タイ警察・タッチャイ副長官
「詐欺組織と人身取引に関するすべての情報を統合する『シールド・システム』です。(各国との)情報共有を通じて、(人身取引の)被害者がどこに連れて行かれたのか、そして犯罪組織の拠点がどこにあるのかが分かる」
カンボジアでは、タイ人だけで少なくとも数千人、さらに日本人を含む外国人を合わせると、数万人規模が詐欺を強要されている可能性があるといいます。
タイ警察はすでに、日本やインドの警察当局との連携を始めています。
息子の行方がわからなくなって1年。この間に、息子は20歳になりました。
柏秀桃さん
「息子がいれば、鶏肉や手羽先をとても喜んで食べたでしょう。奇跡が起きて、電話が鳴って、あなたの声が聞こえる日がくることを願っています」
国境を越えた犯罪の実態は依然として見えにくく、問題は深刻さを増しています。