「もしものとき、誰が気づいてくれる?」高齢者が語る孤独死の現実と課題

2025-07-03 08:00
「もしものとき、誰が気づいてくれる?」高齢者が語る孤独死の現実と課題

エアコンのスイッチに手を伸ばすたび、ふと頭をよぎる。「このまま倒れても、誰にも気づかれないのではないか」。

猛暑が続くこの夏、一人暮らしの高齢者にとって、それは現実的な不安である。熱中症、持病の悪化、脱水症状――そんなリスクが日常と隣り合わせにある中で、家族や友人との距離、近隣との関係性の希薄さが、その不安を一層深くしていく。「孤独死」という言葉は、もはや特別な出来事ではない。日々の暮らしの中に、静かに、しかし確実に入り込んでいる。テレビのニュースで流れるたびに他人事ではいられないと感じつつも、自分は大丈夫だと目をそらしてしまう。けれど、ふとした瞬間に立ち止まり、考えてしまう。「いざというとき、自分の異変に最初に気づいてくれる人はいるのだろうか」と。孤独死とは、命の終わりと同時に「発見されないことへの恐れ」「誰にも見送られない悲しみ」とも向き合わなければならない問題である。では、そのリスクを当事者である高齢者たちはどれほど現実のものとして受け止めているのか。そこで今回、LINEでみまもる『らいみー』を提供する株式会社Tri-Arrow(https://t-arrow.co.jp/)は、一人暮らしの65歳以上の男女を対象に、「孤独死」に関する意識調査を実施した。

つながりの減少が生む“発見されない”という恐れ

今回の調査では、「最近、家族や親しい人との連絡が減っていると感じるか」という問いに対し、約6割が「よくある」「ややある」と回答した。遠方在住や多忙さなどを理由に、定期的な連絡が取りづらくなっている高齢者が少なくないようだ。特に深刻なのは、そのことによって「もし倒れても誰にも気づかれないかもしれない」という不安が高まっている点である。実際に「発見が遅れる」「死後数日誰にも気づかれない」「体調異変に気づかれない」といった回答が上位に並んだ。

このような不安は、単に“発見の遅れ”だけではなく、自分の存在が社会から切り離されているという孤立感にもつながっている。人との関係の希薄化は、日常の安全と心の安心、両方に影を落としている。

“孤独死”へのリアルな不安と、死後に残したくないものたち

「孤独死」という言葉を自分ごととして受け止めている高齢者は、実は少なくない。調査によれば、「非常に意識している(19.7%)」「ある程度意識している(49.8%)」を合わせると、約7割が孤独死をリスクとして捉えていることがわかった。これは、心身の衰えや社会との接点の減少を背景に、「もしもの時」に誰にも気づかれず命を落とす可能性を現実的に感じていることの表れだろう。

さらに、「孤独死してしまった際に心配すること」として最も多かったのは、「発見が遅れて遺体が損傷する(44.3%)」という回答だった。次いで「悪臭や害虫で周囲に迷惑がかかる(35.7%)」「保険や年金などの手続きが放置される(25.4%)」といった声が続いた。単に“死ぬこと”ではなく、“どう死ぬか”への関心の高さがうかがえる。
また、亡くなったあとに「見られたくないもの・残したくないもの」を尋ねたところ、「スマホ・PCなどの中のデータ(25.2%)」「散らかった部屋やゴミ(20.4%)」「個人的な記録(11.0%)」が上位に挙がった一方で、「特にない」とする人も55.5%に達している。情報管理や身辺整理に日頃から気を配っている人もいれば、「死後のことまでは考えたくない」という心境もあるのかもしれない。

これらの回答からは、「最期の姿をできるだけ穏やかに、他人に迷惑をかけずに迎えたい」という高齢者の切実な思いが垣間見える。孤独死への懸念は、命を守る話にとどまらず、尊厳と体面をどう保つかという人生観の表れでもある。

家族に見守られたい、でも現実は“気づかれないかもしれない”

「もしもの時、誰が最初に自分の異変に気づいてくれるのか」。この問いに対し、最も多かった回答は「家族(31.6%)」だった。「最初に発見されたい人」についても「家族(41.7%)」が最多であり、高齢者の多くが“最期は家族に見守られたい”と考えていることがうかがえる。しかし注目すべきは、「わからない」と答えた人が3〜4割にのぼった点だ。実際に「親しい友人・知人」や「近隣住民」「見守りサービスの担当者」などを挙げた人もいるが、少数にとどまる。つまり、多くの高齢者が「誰かに気づかれる確信が持てない」状態にあるということだ。この結果は、社会的なつながりの希薄さを示すと同時に、“自分の死を見届けてくれる存在がいないかもしれない”という心理的孤立の深さを物語っている。

やるべきことは見えている。なのに一歩を踏み出せない理由

孤独死を「自分にも起こり得る」と考える人が多い一方で、具体的な対策を講じている人は少ない。調査では、「現在、特に何もしていない」と答えた人が58.4%にのぼった。最も多かった取り組みは「家族や友人との定期的な連絡(34.7%)」で、それ以外の見守りサービスや地域活動などは1ケタ台にとどまっている。

一方、「今後取り組みたい」と考えている人は少なくなく、「見守りサービスを利用したい(18.5%)」「安否確認機能付きの家電を使いたい(10.9%)」といった回答が見られた。つまり、“やるべきとは思っている”が“実行には至っていない”という意識と行動のギャップが存在している。個人だけでは限界のある対策だからこそ、周囲の支援や社会の仕組みが求められている。

高齢者が本当に求めているのは、“高機能”より“わかりやすさ”

孤独死対策として注目される見守りサービスだが、導入の際に重視されるのは「月額料金の手頃さ(61.4%)」が圧倒的に多く、費用負担の軽さが重要なポイントとなっている。次いで「操作が簡単(37.9%)」「緊急時の対応が迅速(35.8%)」と続き、複雑な機能よりも直感的な使いやすさが求められていることがわかる。実際にサービスを利用したことがある人の約9割が「使いづらさや不安は感じなかった」と答えており、一定の条件を満たせば、高齢者にも十分に受け入れられることがうかがえる。技術的な先進性よりも、生活に自然に溶け込み、日常の延長として使える“やさしさ”こそが、これからの見守りサービスに求められているのではないだろうか。

調査概要:「孤独死」に対する意識調査
【調査期間】2025年6月10日(火)~2025年6月11日(水)
【調査方法】PRIZMA(https://www.prizma-link.com/press)によるインターネット調査
【調査人数】1,007人
【調査対象】調査回答時に一人暮らしの65歳以上の男女であると回答したモニター
【調査元】株式会社Tri-Arrow(https://t-arrow.co.jp/)
【モニター提供元】PRIZMAリサーチ

今回の調査から見えてきたのは、孤独死が決して特別な出来事ではなく、多くの高齢者にとって日常の延長線上にある「現実的な不安」であるということだ。家族との連絡の減少、死後に誰にも気づかれない可能性、そして自分の存在が社会から見過ごされるかもしれないという恐れ。こうした声の裏には、人として尊厳をもって最期を迎えたいという切実な思いがある。

その一方で、「対策はしたほうがいい」と感じながらも行動に移せていない人が多数を占めていた。費用や操作の難しさといったハードルがある中で、見守りサービスに求められるのは、価格の手頃さと直感的な使いやすさ、そして“誰かが気にかけてくれている”という安心感だ。孤独死を防ぐためには、個人の努力に頼るだけでなく、社会としてどう支えるかという視点が不可欠である。安心して年を重ねられる社会とは、すべての人が「ひとりじゃない」と実感できる環境の中にある。そうした環境づくりこそが、今まさに求められているのではないだろうか。

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