マンホールが飛んだのは「エアハンマー現象」か 専門家「日本全国、どこで起こってもおかしくない」“都市型水害”にどう備える?【Nスタ解説】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2025-07-11 21:50

10日、記録的な大雨に見舞われた関東地方。帰宅時間帯を直撃し、道路が冠水するなどの被害が出ました。集中豪雨などで頻発している「都市型水害」。どんな対策が必要なのでしょうか?

【写真で見る】道路の冠水、雨漏り、マンホールが吹き飛ぶ以外にも、さまざまな被害が…

「記録的短時間大雨情報」が関東で31回 100ミリの雨とは?

日比麻音子キャスター:
夏の常識はアップデートしなければならないかもしれません。

7月10日は大変な雨が降りました。「記録的短時間大雨情報」が、埼玉で12回、群馬で6回、東京で3回など、関東地方で合わせて31回出されました。

「記録的短時間大雨情報」とは本来、数年に一度程度しか発生しないような短時間の大雨が観測されたときに発表されるものです。年に100回前後が記録されるものですが、そのうちの約3分の1が、たった1日で記録されたことになるわけです。

群馬・大泉町付近、埼玉・本庄市付近、東京・杉並区付近など、雨量が120ミリ以上のところがありました。
100ミリ以上の雨は、どういった雨になってくるのでしょうか。

元消防士・防災アドバイザー 野村功次郎さん:
雨量が100ミリというのは、なかなか体験できないのが一昔前の常識でした。

「記録的短時間大雨情報」がこれだけ頻繁に出るとなると、100ミリというのは想像を絶するぐらいの雨です。

通常20ミリを超える雨で、何かしらの影響があります。50、60ミリを超える雨であれば、会話ができない、視界が不良になる。100ミリを超えると、全てを阻害する、マイナス的なものが合致した、非常に危ない雨の量だと認識しています。

日比キャスター:
10日の雨は、断続的に降り続くのではなく、突然一気にどさっと降りました。これまでの雨対策を少しアップデートしないといけませんね。

元消防士・防災アドバイザー 野村功次郎さん:
これまでの雨対策は通用しないという認識を、常に持っていただきたいなと思います。

元消防士「街の中心部は起こりやすい」地面ごとマンホールが吹き飛ぶ 

日比キャスター:
10日の午後7時半すぎ、横浜・港北区でマンホールの蓋が吹き飛び、水しぶきが建物を超える高さまで吹き出しました。けが人も出ています。11日の朝に復旧工事が進み、通行ができるようになっているということです。

では、一体なぜ、マンホールの蓋が吹き飛んだのでしょうか。

元消防士・防災アドバイザー 野村功次郎さん:
下水道は、生活用水や雨水などが1か所で流れている方式(合流式)で、水位が低く、順調に流れているのが通常です。

大雨が降ると、マンホール内の水位が上がり、空気の行き場所がなくなります。そうすると、空気が圧縮され逃げ場がなくなり、蓋またはマンホールの枠ごとを吹き飛ばして、道路も損傷するというメカニズムだと思います。

日比キャスター:
アスファルトごと持ち上げられた形になった今回の現場のマンホールは、「圧力開放型マンホール」というもので、本来、圧力が開放できるような仕組みになっていたものでした。

「圧力開放型マンホール」
・蓋が格子状(直径90㎝、約100㎏)
・受枠がアスファルトの中に埋め込まれている

元消防士・防災アドバイザー 野村功次郎さん:
蓋は頑丈だったのですが、その蓋の枠、周囲の土やアスファルトが吹き飛ばされたということです。

日比キャスター:
横浜市水道局の担当者の方によると、受枠がアスファルトの中に埋め込まれている形なので、「想定外の水量で一気に圧力がかかり、周りのアスファルトごと蓋が吹き飛んだとみられる」ということです。

直径は90cm、重さは約100kg以上あり、吹き飛ぶと本当に危険です。

どのように防いだらいいのでしょうか。

元消防士・防災アドバイザー 野村功次郎さん:
雑踏の中で見抜くことは非常に難しいと思います。

街の中心部などの配管が太い場所のマンホールは、比較的、圧力が抜けやすく、蓋などが吹き飛ぶといった事故が起こりやすいです。なので、普段からマンホールの位置を把握しておく。街の中心部は特に認識していただきたいと思います。

南波雅俊キャスター:
これまで、こういう事故はあったのですか。

元消防士・防災アドバイザー 野村功次郎さん:
これまでもありました。ただこれは流動的で、時間、曜日、また生活排水の時間帯(水道を使う時間帯)と、雨が重なった。それによって流量が一定よりも多い時間帯に、雨が重なることで、こういう事故が起こってしまいました。

日本全国、どこで起こってもおかしくない事案です。

“都市型水害”歩く際に気を付けるべきこと

日比キャスター:
10日の午後8時前、群馬・舘林市では、アンダーパスでトラックが水没し、立往生してしまうこともありました。

「都市型水害」は、1時間の雨量が50ミリを超えると、排水機能が追い付かずに発生リスクが高まるというものです。

トラックが運転できなくなるのは、どういったメカニズムなのでしょうか。

元消防士・防災アドバイザー 野村功次郎さん:
実際に、アンダーパスに入ってしまった方に聞いたのですが、普段通らない道で近道をしたところがたまたまアンダーパスでした。ライトを照らしたところ、水面が道路に見えてしまった。行けると思って進んだら、急に浸水してしまったということです。

なので、雨が降っているときに、高架下を通るのは要注意。通らないことが原則です。

日比キャスター:
道路に水が溢れてしまった状況をARで見ることができる「浸水被害ARシミュレーションアプリ『浸水カメラ』」があります。

大雨が降り、水深30センチになった場合、2つ重ねたダンボールの1段目はほとんど見えない状況になります。下水などが噴き出すと、本当に見えない状況になると思います。

もしこうなった場合、歩くとき、どういったことに気をつけたらいいでしょうか。

元消防士・防災アドバイザー 野村功次郎さん:
歩く際は、▼両手をふさがない。▼傘や杖で、陥没していたり障害物があるかないか、地面を確認する。▼長靴ではなく、歩きやすいスニーカーを履く。▼1人では歩かない。▼黄色やオレンジなど、何かあっても救助・発見されやすいものを1つ身につけておく。これを大事にしてください。

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〈プロフィール〉
野村功次郎さん
元広島県呉市消防局(22年勤務)
防災アドバイザー 都市水害に詳しい

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