「国鉄分割・民営化」とは――国鉄の終焉からJR誕生まで(1981年~)【TBSアーカイブ秘録】

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2025-07-30 08:30
「国鉄分割・民営化」とは――国鉄の終焉からJR誕生まで(1981年~)【TBSアーカイブ秘録】

1949年(昭和24年)に設立された日本国有鉄道(国鉄)は、戦後日本の主要な交通機関としての役割を果たしてきましたが、1987年(昭和62年)にJR旅客鉄道会社6社とJR貨物、関連事業会社に分割民営化されました。長年の慣行や文化を持っていた巨大組織の、大きな変革を振り返ります。(アーカイブマネジメント部 森 菜採)

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国鉄分割・民営化の背景

鉄道事業は1872年(明治5年)10月14日の新橋・横浜間開通を皮切りに、官設官営方式がとられてきましたが、戦後の1949年(昭和24年)6月1日には公共企業体「日本国有鉄道(国鉄)」として発足。
しかし高度経済成長期以降、自動車や航空との競争激化、輸送構造の変化への対応の遅れ、不採算路線の建設により経営が悪化し、特に貨物部門の不振が全体の重荷となりました。

巨額の赤字を抱え実質的に経営破綻に陥った国鉄に対し、第二次臨時行政調査会は『国鉄再建監理委員会』を設置。1983年(昭和58年)6月に発足した同委員会は、国鉄の分割民営化を提言しました。

労働組合からの強い反対

しかし、この改革案は国鉄内部の複数の労働組合から強い反発を招きました。
労働組合側は、分割・民営化が実施された場合、多数の職員が解雇され、労働条件が大幅に悪化するのではないかと、強く反対したのです。

国鉄の分割民営化は、こうした激しい反対を押し切っての実現だったのです。
1986年(昭和61年)11月に参院本会議で『国鉄改革関連8法案』が可決・成立しました。

法案成立直後に報告のため総理官邸に入った、当時の杉浦喬也国鉄総裁は「感無量」と話し、成立後各党をまわる橋本龍太郎運輸大臣は関係者と笑顔で握手。インタビューに応じた中曽根康弘総理は「一番大事な事は、職を失う6万1000人の就職先。これは全責任を負って完遂していきたい」と語りました。

配属先希望調査

国鉄本社では新会社発足に向けた職員の配置作業が進められ、職員一人ひとりの『意思確認書』が山積みになりました。
当初の予測を大幅に下回り、新会社行きを志願した職員は21万9300人余りで、これは採用予定数を約4300人上回るものの、国鉄が当初見込んでいた人数を大きく下回る結果でした。この数字は、民営化後の人員配置計画に少なからぬ影響を与えたとみられています。

長年にわたり日本の公共交通を支えてきた国鉄はこの変革期において、職員の雇用と生活を守りつつ効率的で競争力のある新しい鉄道会社を設立するという目標達成のため、複雑な調整を迫られました。結局本州・四国の各社では定員割れとなり、北海道・九州においては7400人余りあふれる形となりました。

本州3会社の定員割れは、職員が国鉄新会社の先行きに不安を感じたり、組合の主導権争いに嫌気が差して5万人以上が希望退職したり、公務員に転出したなどの事情があったといいます。

こうした現象は国鉄当局にとって、新会社に連れて行く職員の選択ができなくなるという皮肉な結果を招きました。本州3会社については所属組合に関係なくほとんど採用が決まり、その結果立場の異なる3つの大きな組合が対立を続けることになったため、労務対策は新会社でも経営陣の課題となったようです。

いよいよJRグループが発足 

国鉄は1987年(昭和62年)4月1日午前0時をもって分割民営化され、115年の歴史を閉じました。そして6つの旅客会社と1つの貨物会社によるJRグループに生まれ変わりました。

その後JR各社は、鉄道輸送サービスにおいてダイヤ改正や車両整備などで信頼性と快適性を飛躍的に向上させました。中でも、新幹線はスピードアップと本数増加を著しく実現しました。

その後は… JR各社の経営状態 

JR東海は東海道新幹線、JR東日本は首都圏の通勤輸送やエキナカ事業、JR西日本は京阪圏の輸送や山陽新幹線といった、それぞれの主要事業で収益を確保。この本州3社は、2006年(平成18年)までに完全に民営化されました。
JR九州も観光列車や駅ビル事業などで経営基盤を確立し、2016年(平成28年)に完全民営化を果たしています。

ただ、残るJR北海道・JR四国とJR貨物の3社は、いまだに経営自立を目指して国からの資金支援を受け続けながらの経営で、上場が可能になる安定的な利益を計上できる段階には至っていません。
国土交通省から発表されている資料によると、JR北海道・令和6~8年度:1,092億円JR貨物・令和6~8年度:193億円、JR四国・令和3~7年度:1,025億円の支援を実施中となっています。

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