「子どもにもっといいもの食べさせたい」共働きでも直面する困窮 続く“石破おろし”に物価高対策はどうなる【報道特集】

自民党内で続く“石破おろし”の動き。混乱が収まる気配はありません。
参院選で掲げられた物価高対策は見通しが立たないまま。置き去りにされ、生活に困窮する人たちを取材しました。
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地方組織からも“石破おろし”の声「どういう形で立て直しができるのか」
8月1日、臨時国会が召集され、参院選で当選した議員らが登院した。
衆参両院で与党が過半数割れという異例の国会。自民党内では“石破おろし”の声が高まっているが…。
石破総理(1日)
「私どもとして一致団結。日本国のために、世界のために、ともに働いてまいりたい」
総理は結束を呼びかけたが、自民党の地方組織からは悲痛な声が上がっている。
参院選後、有権者に頭を下げていたのは、大阪選挙区から出馬して落選した柳本顕氏(51)だ。自民党は、大阪で守ってきた参議院の議席を失った。
2024年の衆院選でも、候補者を擁立した府内15の小選挙区で全敗している。
大阪選挙区で落選(自民) 柳本顕 氏
「昨年の衆院選挙以降、もっと言うならば2年前の統一地方選挙から、自民党は歴史的な大敗を経験して、『解党的出直し』と、自民党大阪府連では何度となく言い続けてきた。
『何回、解党的出直しすんねん』と言われるような状況があって、本当にどういう形で立て直すことができるのか、今はイメージが湧かない」
自民党大阪府連は、石破総理ら執行部の責任について意見をまとめることができず「保留状態」だが、柳本氏は…。
大阪選挙区で落選(自民) 柳本顕 氏
「候補者としての私自身の責任もあるが、党執行部としての責任も当然ある。国民の皆様の声に対して、自民党として、党執行部としてどう答えていくのか、総裁ならびに総理としての対応も含めて、何かしらの形で責任を取る、責任を果たすべき」
保守王国・福井でも危機感が広がっている。
議席を守った“保守王国”福井でも総理退陣を要望
福井選挙区では今回、自民現職が議席を守ったが、先週、県議団が総理退陣を求める要望書を県連に提出した。
福井県議・自民党 清水智信 氏(44)
「正直言って今回選挙勝てたのも、70代以上の人たちが与党を応援してくれたが、正直僕ら40代から以下は、野党選択したということがあるので、このままずっと何も変わらず進んでしまったら、もちろん国民も離れていくし、今回自民党に入れてくれた人も、多分、離れていってしまう」
2024年の衆院選、福井では1000万円を超えるパーティー券収入の不記載があった、いわゆる“裏金議員”の高木毅氏が無所属で出馬するも落選した。
県連で副会長を務める松本孝雄氏は、今回の自民党大敗についても…
自民党福井県連副会長 松本孝雄 氏
「(参院選で)自民党が負けたのは裏金やわ」
――やっぱり裏金ですか
「問題出ている。どこ行っても、その裏金問題」
その裏金問題で処分を受けた旧安倍派の元幹部らが、石破総理の退陣を求める声を次々と上げていることに党内からは…
自民党幹部
「石破総理も辞め際がなっていない。ただ、石破おろしをしている連中は、もっとみっともない」
参院選の直前に物価高対策として、自民党が急遽公約に掲げたのが、1人2万円の現金給付。子どもや非課税世帯の大人には、2万円追加するとした。
石破総理(7月3日)
「生活が苦しい。 そういう方々に早く給付金を届けたい。決してバラマキでも何でもありません」
立憲民主党は1人2万円の給付と、食料品の消費税を一時的にゼロにするなど、野党の多くは減税を主張した。
少数与党になったことから、「給付」か「減税」か、とりまとめには時間を要するとみられている。
「やっぱり飛びつくのは給付、でも…」共働きでも直面する困窮
沖縄県内に住む30代の女性は、夫と4歳の娘との3人暮らしだ。
共働きだったが、夫が育児ノイローゼで入院。出産後2か月で職場復帰し、家計を支えることになった。しかし、夫の看病などで働く時間が削られていった。
共働き世帯の女性(30代)
「(給料が)19万だったのが16万、13万、12万って下がっていく。本当にきついなって、情けなかった」
母乳が出にくくなる一方で、ミルクを買うお金もなくなったという。
――ミルクを薄めたことはありますか?
「子供に影響があると思ってたので、極力したくなかった。どうにか頑張ってました、薄めずに。でも1、2回ぐらい(薄めた)。本当に苦しくて相談したら、今でも覚えてる。夜7時ぐらいにバイクに乗って(ミルクを)届けてくれて」
女性にミルクを届けたのが、支援団体「共育ステーション つむぎ」の髙良久美子代表。
行政などにミルクが買えないと相談しても、つれない対応をされるケースも多いという。
共育ステーションつむぎ 髙良久美子 代表
「お母さんたちが相談に行って、すぐに言われるのが、『なんでその状態で赤ちゃん産んだの?』とお母さんを責めることが最初なんです。『なんで産んだの?』って言われたら、それだけでヘルプが出せなくなります。私が当事者なら、耐えられないと思います」
困窮のため、粉ミルクを薄めて飲ませざるを得ず、栄養失調になる乳児も見てきたという。
共育ステーションつむぎ 髙良久美子 代表
「『実は母乳が出ないんです』とか、メンタルを病んで、薬のために(医者に)授乳を止められた方もいる。失業とか病気とか、旦那さんが出て行ってしまったとか。自立ができる、まだ心が折れる前の方たちを支えたい」
髙良さんの支援で、ミルクを飲むことができた女性の娘。今は洗い物を手伝うなど、すくすくと成長している。
その後、夫も再就職し収入も安定しかけていた。しかし、2025年に入って夫の交通事故や、自身も急病で手術するなど不運が重なった。
そこに、物価高が重くのしかかる。
共働き世帯の女性(30代)
「野菜も高くなっているので、半額になっているものを買って冷凍したり。ゴーヤも最近上がってる」
工夫しながら、日々を過ごすが…
共働き世帯の女性(30代)
「自分にかけるものは、我慢するようになりました。下着も1年に1回買い足すかなぐらいで。これを買うぐらいだったら、子供にもっといいもの食べさせたい、旦那にいいもの食べてもらって英気養ってほしいって、頭にどうしても思い浮かんじゃう」
参院選で争点となった物価高対策については。
共働き世帯の女性(30代)
「やっぱり飛びつくのは、目につきやすい給付だと思うけど、その時はちょっと助かる。新しい洋服が買える、子供の衣類買ってあげられる、ちょっとお肉をぜいたくできるって考えるけど、それって限りあるものだし…」
国民もうんざり?選挙のたびに行われる“バラマキ政策”
選挙のたびに行われてきた、いわゆるバラマキ政策。元経済企画庁の官僚で、財政学に詳しい島澤諭教授によると、広く給付するようになったのは、2008年のリーマンショックがきっかけだという。
麻生太郎総理(当時)
「まず第一は生活者対策です。定額減税については給付金方式で、全所帯について実施します。規模は約2兆円」
――生活対策より選挙対策という声も出ています。
麻生太郎総理(当時)
「給付方式はバラマキというご批判なんだと思いますが、私は減税方式に比べて、少なくとも今年度内に行き渡るということが第一」
麻生総理は定額給付金として、1人あたり1万2000円、18歳以下と65歳以上には2万円を給付した。
関東学院大学(財政学)島澤諭 教授
「(日本でも)たくさんの失業者が出て、現役世代にも給付を行わないと、救わないといけないのが、一つのきっかけ。それが新型コロナをきっかけに加速してしまった、というのが現状」
2019年の参院選では…
安倍晋三総理(当時)
「低年金の方に対しては、この10月から消費税を使って、年最大6万円の給付を行っていく」
安倍総理が、低収入の年金生活者に最大6万円支給することを公約にした。
2021年の衆院選。岸田総理はコロナ対策として…
岸田文雄総理(当時)
「困っておられる方々に対する給付、これもしっかり用意をして、これが、まずはこのコロナ対応」
金額の言及は避けていたが、選挙後、18歳以下の子どもに10万円相当を給付した。
2024年の衆院選では、石破総理が物価高対策として、低所得世帯への給付金による支援を公約に。そして、今回の参院選で石破総理は、住民税非課税世帯の大人には倍の4万円を給付するとしたが…。
関東学院大学(財政学)島澤諭 教授
「住民税非課税世帯のうち、4世帯のうちの3世帯、要は75%が高齢世帯(65歳以上)。フローの収入だけではなく、資産も含めて、本当に困ってるかどうかを判定すべき。日本が少子化も進み、経済も低迷する中で、困ってない人にまで給付をする余裕はもうない。
財源を考えると、子や孫への先送りもどうしても否めない、バラマキは即刻やめるべき」
さらに、島澤教授は…
関東学院大学(財政学)島澤諭 教授
「数次にわたりバラマキが行われましたけれども、経済が急回復したか、持続的な経済成長の軌道に乗ったかといえば、そうではないと思う。選挙になったら、『給付だ』『減税だ』と言うのは、やっぱり国民としてもうんざりだと思います。『まやかしなのではないか』と思われても仕方がない面もある」